第217回 「こころ」の疾患シリーズ

強迫性障害

 

『電車に乗ったときつり革を握ったから、特別な病気に感染していないだろうか?』と不安になって、何度も手を洗わなくては気が済まない、という話を聞くことがあります。このように、自分でもばかばかしいと思うのに、ある考えが心の中に暴力的に浮かんで、心理的な苦痛を味わい、それを打ち消すために決まった行為を繰り返す状態を、強迫性障害といいます(かつて.強迫神経症と呼ばれた症例です)。脅迫的な考えは、汚染(ばい菌感染)・疑惑(ガスの元栓を閉め忘れたのではないか?)・衝動(幼児を殺してしまうのではないか?)・秩序(順序や配列にこだわる)などに関連したものが多く見られます。強迫的な行為は、手洗い・確認行為・数を数える・祈るなどを反復するのが特徴です。そのため、一日に何時間もこうした行為に時間を費やすことも珍しくはありません。こういつた心の疾患は、小児期から思春期にかけて発症し、六〇から七〇%はうつ病を合併するといわれています。まじめ・きちょうめん・融通が効かない・細かいことにこだわるといった強迫的な性格の人がなりやすいと考えられます。以前は治りにくいとされていましたが、最近は、行動療法や、近年日本でも発売された新タイプの抗うつ剤などの薬物療法により、かなり改善される人が増えています。