第255回 脳外科シリーズ

頭部外傷(2)

 

頭蓋内に出血がないのに受傷直後から意識障害が続く病態を「びまん性軸索損傷」といい、交通事故の際に多く見られます。神経線維が断裂するために起こり、重症頭部外傷の約半数を占め、有効な治療法はないのが現状です。その他、頭部外傷に伴う合併症としては脳神経麻痺や髄液漏などがあります。頭部外傷後に物が二重に見えたり、鼻や耳から水の様な液が出る場合はすぐに脳外科を受診してください。軽い頭部外傷の後、徐々に血液が脳と骨の間にたまる病気があり、これを慢性硬膜下血腫といって頭痛が徐々に増強し、麻痺が出現してきます。高齢者の場合は痴呆症状が出現して見逃されていることもあります。この病気は局所麻酔での手術で多くの人が治りますので、少しでも疑わしければ頭部CTを撮影することをお勧めします。小さい子どもの頭部外傷の場合は機嫌・顔色がよく手足の動きに左右の差が無い場合は1、2回嘔吐しても頭のCTは撮らずに、経過を厳重に観察してもらう方が良いと思います。その理由はCT撮影時に薬を使用して眠った状態にするので、その後の容態の変化がわかりにくくなることと、不必要な放射線被曝は避けるためです。ぐったりして繰り返し嘔吐する場合は必ず医療機関を受診してください。経過観察の時間は、24時間が目安です。