第270回 マイコプラズマ肺炎

 

 

 学童以上の子どもによく見られる、マイコプラズマ感染症にともなう肺炎です。これまでオリンピック開催年に一致して周期的に多発すると言われていましたが、ここ5年間をみますと年毎に増えてきています。今年も多いようです。一方、幼若な乳幼児においても、上気道炎をおもわせるマイコプラズマ感染症は決して少なくないとの報告があり気をつけましょう。マイコプラズマ肺炎は、発熱と頑固で激しい咳が特徴です。異型肺炎とも呼ばれるように細菌性肺炎に特有な雑音が聴かれないので、レントゲン写真を撮るまで診断がつかないことがあります。マイコプラズマは細胞壁をもたない病原体のために、普段よく使われる細胞壁合成阻害剤であるペニシリン系やセフェム系の抗生剤は効きません。いつももらう抗生剤で熱が下がらず、はげしい咳が続くときには注意を要します。各種の検査によって診断がつけば、タンパク質合成阻害剤であるマクロライド系ほかの有効な抗生剤があるので、大抵は外来で治療することができます。ただ、胸膜炎、髄膜炎、中耳炎や一過性の発疹、嘔吐、下痢など合併症、症状が多彩ですし入院を要する場合もあります。主治医の指示に従ってください。いずれにしろ予後は良好な病気です。