boomerさんのボディビル小説

ライバル達の唄ファイナル…死闘編

第一章

○○厚生年金会館…




明日行われる『第5×回日本ボディビル選手権』の会場である…



時計の針は 既に午後11時をまわり 先程まで会場作りの為に 奔走していた大会スタッフの面々も、 もう何処にも見当たらない…

ひっそりと静まり返った館内…

十数時間後には ここ全体が、興奮と熱狂の渦に巻き込まれるとは いささか信じがたい…




嵐が近づいて来ている…


゛大型で並の強さの台風19号は 東北東に進路をとり、その勢力を保ちながら 明日の午前11時には潮 岬付近に上陸する見込み゛らしい…

これが選手や観客の足に影響を及ぼさなければいいのだが…



いよいよ明日、延べ5×人目の日本チャンピオンが誕生する。

今年は例年にない大混戦が予想されている…

昨年死闘を演じた3強が、それぞれにレベルを上げ再び相まみえる…

果たして…小内英雄は、自らの連勝記録を更に更新する事が出来るのか?

果たして…大河実は引退試合を勝利で飾り、最後に悲願の日本タイトルを奪取出来るのか?

果たして…本城剛は宣言通りMr.日本を獲り 実力で、周りの非難を封印出来るのか?

はたまた、3強を脅かす更なる新興勢力の台頭はあるのか?


総参加人数42人…


誰もが皆、必死だ…

誰もが皆、命懸けだ…

誰もが皆、死に物狂いだ…


嵐の前の静けさ…

日本ボディビル史上空前の闘いは、もうすぐそこまでに迫って来ている…







その部屋に足を踏み入れた瞬間 あまりの空気の重さに 一瞬 息が詰まりそうになった…



体育館のアリーナを二回り程小さくしたスペースに、40人ちかい男達が、まるで被災民の様に 思い思 いの場所に陣取っている…
その部屋の窓、壁、床、と ありとあらゆる箇所には、汚れ防止用のブルーシートが貼り巡らされている…
どす黒いカラーオイルを塗った 彼等の顔は一様に頬がげっそりと削げ落ち、それがギラギラとした目付 きと相まって かなり不気味な雰囲気を醸し出している…



張り詰めた緊迫感の中、男達は思い思いに気持ちを高めている…

久しぶりに会った知り合いと情報交換をする者…
延々とストレッチを繰り返す者…
早々と、汗まみれになり筋肉に血流を送り込む者…
黙々と栄養補給に努める者…




その男は 部屋に足を踏み入れると同時に 辺りを見渡した…
肩には抱えきれない程の大きなバックを下げている…
どうやら自分の陣取る空間を探している様だ…

無愛想な顔をしている…

決して愛想笑いなどしそうにない様な顔付きをしている…

短く刈込まれた髪に、まっ黒な肌、削げた頬、鋭い目付き…

街角で見掛けると異様に映る、この男の風貌もここでは、ごく自然に見えて来る…


なかなか 適当な場所が見つからないのか、男は一瞬困った様な顔を見せた…
明らかに初めて経験するこの独特の雰囲気に戸惑っている様だ…



『オーイ!修司!ここ空いているぞ!』

奥の方から聞き覚えのある男の声がした…
余程この空気に慣れているのか、その男には微塵の気負いも緊張も感じられない…

『あ…大河さん…どうも…』
修司と呼ばれた その人物は 軽く会釈をすると 遠慮がちに 大河という男の隣りに腰を降ろした…

『どうだ、調子の方は…?』

修司の方には、一切の視線を送らずに 大河が話しかけて来た…

『まぁまぁです…』

『そうか…』

二人の会話は そこで途切れた…




正確な場所割りが決まっていない筈の この部屋で 唯一前もって゛主゛が決まっているスペースがある…
入口から 突き当たる一番奥の正面…
大相撲の支度部屋でいえば さしずめ 横綱の領域とでも言えようか…

そこに 腰掛ける 一人の男…
座禅を組み ずっと瞑想を続けている…

恐ろしく 首の太い男である…

その首を埋める様に 巨大な僧帽筋が、下の方から盛り上がっている…

彼は 15年間、ずっと この場所に座り続けている…

彼が そこにいるだけで 部屋全体の空気がピンと張り詰めた物になる…




゛おはようございます!゛


この場に 似つかわしくない 爽やかな挨拶とともに 新たなる訪問者が現れた…
その青年が一歩足を踏み入れただけで 重苦しい部屋の空気が、一瞬華やいだ様な錯覚を受ける…

誰もが振り返る程の美男子だ…

真夏の向日葵の様に爽やかな青年だ…

周りの男達の誰もが トレーナーあるいは ナイロン製のウィンドブレーカー姿なのに対して、
青年はサングラス、ターコイズのネックレス、真っ赤な革のジャケットに黒革のパンツ…
まるで 今からダンスにでも行く様なスタイルだ…

しかし…

青年の端正な横顔に いくつもの 軽蔑の眼差しが突き刺さる…
青年は それらを意に介さず 適当なスペースを見つけると 鞄を置き、それを枕に 仰向けに寝転がった…
サングラスの上から青年の表情は、まるっきり窺い知れない…
しかし 5分もすると 青年から 安らかな寝息が漏れて来た…



ジリジリとした時間が過ぎる…



周りの誰もが皆 自分よりも落ち着いて見える…

周りの誰もが皆 自分よりも大きく見える…

周りの誰もが皆 自分よりも仕上がって見える…


゛落ち着け…落ち着くんだ!!゛


瞳を閉じ、強く意識を集中させる…


都筑茂雄との地獄の日々が蘇って来る…


太田新一の献身的な友情が蘇って来る…


そして…


10年以上も 追いかけ続けた、生涯のライバルであり、真友…


今は亡き゛伝説の男゛宮本護への熱い思いが蘇って来る…




『あと30分で プレジャッジを始めまーす!選手の方は 準備を始めて下さーい!』


゛どくん!!゛


遥か彼方から聞こえる 係員の呼び掛けに、男の野獣が鋭く反応した…






傘も役に立たない程の暴風雨の中、僕はなんとか会場まで辿り着く事が出来た…



久しぶりの関西出張だ…

夕べは、2年ぶりに神戸の実家に泊まった…

台風情報を聞き 今朝は早目に実家を出たのだが、やはり かなり時間をくってしまった…
受付で知り合いの役員に 取材許可証を提示し館内に滑り込んだ…
ロビーは 雨風を避ける為に 早目に入場を許された人達で 溢れかえっていた…
彼等を やり過ごし記者席へ向かう…
『月刊マッスルマガジン』の席では既に後輩記者の今井がスタンバイを済ませていた…

『あ、八木さん。おはようございます。』
『やぁ、おはよう。遅くなって 申し訳ない…』
『凄い雨風ですもんね。あっ、これ今日のパンフレットです。とりあえず選手42名、無事全員到着だそうです。』
『あ、サンキュー!そうか…それは何よりだ。』

僕は 今井から大会パンフレットを受け取るとすぐに 男子一般の部の選手紹介のページを捲った…


参加総人数42名…

1ヶ月前に、前もって連盟から送られて来た エントリー表と ほぼ同じ顔触れだ…

僕の目は 自然と一人の選手の名前を探していた…



゛エントリーNo.38番 小内英雄(東京都)42歳 175cm、85Kg゛



あった!!

これで間違いない…
やはり チャンプはやって来た…
はっきり言って 1ヶ月前にエントリー表を見た時点では、まだ半信半疑だった…
ホッとした反面、かすかな不安が頭をよぎる…
本当に大丈夫のか!?
あれから まだ僅か2ヶ月しか経っていないというのに…
無残に変形した チャンプの上腕二頭筋を思い出す…
だが、出て来る以上は 完治したと考えてもいいのだろうか?…
中途半端な状態で出場する事は、王者としてのプライドが許さない筈だ…


王者 小内英雄が復活した!!


それでも 僕の今年の本命は 違う選手なのだ…



゛エントリーNo.34番 本城剛(C県)30歳 172cm、78Kg゛



1年前の この大会…
館内は 数えきれない程の女性客と、沢山の一般メディアで溢れかえっていた…

゛日本ボディビル界始まって以来のスーパースター゛

誰もが 彼の事をそう称賛した…

しかし、1年後 彼を取り巻く環境は 大きく変わっていた…
あの頃のフィーバーぶりが嘘の様に、今の彼は完全な敵役となってしまっている…

これは本城が 自ら望んだ事だ…
彼はそうする事により、何とか現状を打破しようとした…
彼に 頼まれ僕も、この1年間、ずっとそれを雑誌で煽り続けた…

心が痛かった…

日本ボディビル史上最悪の男゛本城剛゛は、いわば彼自身と僕の作り上げた偶像なのだ…
彼の思惑は的中した…
しかし、それにより 彼は あまりにも多くの物を失ってしまった…

信頼、仕事、人脈、名誉、地位…

だが 彼はそれを乗り越え、ボディビルダーとして、人間として 一回りも二回りも大きくなっていた…
例え 誰であろうとも、今の彼を倒す事は容易ではないだろう…
彼が、今日ここで日本タイトルを獲り、僕が全ての真相を書く…
そうして 本当の゛本城時代゛が到来するのだ…

しかし…

もしも、あの人が 去年アジアを制した 奇跡とも言える あの仕上がりで登場して来たとしたら…



゛エントリーNo.29番 大河実(K県)42歳 170cm、75Kg゛



22年間、日本のボディビル界をリードし続けた大河さんも 今日でいよいよ引退だ…

゛どんな事があろうとも最後に必ず日本タイトルを獲る!゛

アジア大会優勝後の取材で、彼は僕に力強く そう宣言した…

゛大河実は この1年間 ずっとアジアを獲った時の、奇跡の仕上がりを維持し続けている…゛

偶然、そういう噂を耳にした…
実に 馬鹿げた噂だ…
そんな事が 実際に可能な訳がない…
もし それが出来る人物がいるとしたら、そいつはもはや人間ではない…

しかし…

あの大河実の 現役生活最後の1年という重みが その事を可能にしたとしたならば…
最後の最後に、究極の゛大河マジック゛が炸裂するとしたら…
あるいは、大河が本城を打ち負かす可能性も充分過ぎる程考えられる…



その他にも注目すべき選手は沢山いる…

例えば 一昨年3位、昨年4位の゛猪狩一宏゛…
彼は、去年追い抜かれる形となった本城剛に並々ならぬ闘志を燃やしている…
弱冠25歳…国内屈指のバルク派、将来のMr.日本の呼び声も高い逸材だ…

今年のジャパンオープンを制した゛西村崇史゛…

学生大会を二連覇した゛佐藤毅゛…

更に日本選手権入賞常連組の゛田中忠゛゛新屋誠゛゛江頭政雄゛らのベテラン勢…
こうして ざっと顔触れを見ただけでも、まさに史上最高レベルの日本選手権だ…

そして…

もう一人 どうしても気になる男がいる…



゛エントリーNo.15番 吉岡修司(社会人)32歳 167cm、75Kg゛



僕にとって、彼は特別な選手だ…

現役生活から遠ざかっていた彼を復帰させる為に 僕も随分と関わって来た…
彼を網羅すると 最後には必ず あの伝説のボディビルダー゛宮本護゛に辿り着く…
僕を本気で この世界に のめり込ませるきっかけとなった、3年前のあの死闘が蘇る…

しかし、1ヶ月前の社会人大会で優勝した時の 彼の身体を 僕はどう評価するべきだろうか…
確かに、驚く程デカくなっていた…
まさに周りが ド肝を抜かす程のインパクトだった…

だが、初出場の選手がそれだけで生き残れる程 日本選手権は甘くはない…

とにかく まだまだ仕上がりが甘過ぎた…
この1ヶ月で どこまで仕上がりを詰めて来たか分からないが、今の日本選手権の 気が遠くなる程のレベ ルの高さを考えると、
あるいは入賞、予選落ちのボーダーラインギリギリかもしれない…
否、最悪 審査員に見落とされる可能性も充分に考えられる…

審査員だって 神様ではない…

大勢の選手を、短時間で゛ふるい゛にかける作業の中、レベルの高い無名選手が見落とされたケースは 今迄に何度も見て来た…
それに何と言っても隣りが超バルク派の猪狩というのも痛い…
今の彼に過大の期待を掛けるのは酷かもしれない…
今年は 審査員に顔を覚えてもらい、本当の勝負は来年以降に…

それで良いじゃないか…

今日は この全日本の舞台で あの゛吉岡修司゛を見れるだけでも 僕は満足するべきなのかもしれない…


僕にとって5回目の日本選手権…


これからの 数時間 仕事をも忘れた興奮が 押し寄せて来る事だろう…

気がつくと館内は 立錐の余地もない程の人々で溢れていた…







ピックアップ審査 30分前…



係員の呼び掛けに バックステージの空気は 更に重みを増して来た…
各選手が それぞれの方法で身体を動かし始める…


どの選手も、長い減量期間で 枯渇した筋肉に、この数日間かけて 少しずつエネルギーを蓄えて来ている…
これから30分の間に 適度な刺激を与え、血流を集める事により筋肉を最大限に張らせる…
これが いわゆる゛パンプアップ゛だ…
パンプアップする事により筋肉は一回りも二回りも大きく見える…
この限られた時間内で いかに筋肉を張らせる事が出来るかで、この一年間の苦労が報われるか 否かが 決まってしまうと言っても過言ではない…
とは言え  あまり早い時間から 目一杯に張らせる訳にもいかない…
本番まで 持たずに萎んでしまっては元も子も無い…
この辺のタイミングはベテラン選手でも苦労する所だ…


パンプアップの方法は 人によって さまざまだ…
チューブやダンベル等の器具を使う者…
パートナーに負荷を掛けてもらう者…
あるいは、加圧マシンを持ち込む者までいる…

誰もが皆、この限られた時間内に、なりふり構わず、精一杯の力を注ぎ込む…
室内の熱気は、今まさに最高潮に達しようとしていた…



゛吉岡修司゛は 抱えきれない程の荷物の中から、2個の大きな瓶を取り出した…

そのうちの 1つの蓋を開ける…
中には茶色いペースト状の物が びっしりと詰まっている…
それをカレーライスを食べるスプーンに並々とすくいとり、ひと口、ふた口と、口に運ぶ…
昨日の午後から水分をカットしている上に 口中の唾液を根こそぎ吸収してしまいそうな この食感は、か なり辛い物がある…
苦労して それを飲み込むと 今度はもう一方の瓶を開ける…

こちらの方には、赤い半透明のドロドロとした物が詰まっていた…
同じ様に スプーンですくいとる…
口いっぱいに 満開の甘みが広がって来る…
減量中 ずっと身体が欲していた味覚だ…
身体中が とろけてしまいそうな程の快楽が押し寄せて来る…

ピーナッツバターと苺ジャム…

筋肉を充分に張らせる為には 相応の燃料が必要となって来る…
ほとんどの選手が それを速効性の高い炭水化物で補う…

しかし、゛都筑茂雄゛がメモで修司に託した方法は なんと脂肪と糖分で、それをまかなうという作戦だった…
鞄の中には、他にアップルパイ、塩分の効いた おにぎり、オレンジジュース、そして 最後の切り札に用 いる ポテトチップス等が詰められている…
これらを身体の様子を見極めながら 慎重に補給していく…
足りなくてもいけないし、摂り過ぎて浮腫んでしまうのも、もっと良くない…

試しに まず腕たて伏せを始める…

胸に全意識を集中させ ゆっくりと下ろし、ゆっくりと上げる…

調整中、何度も何度も 都筑に言われ続けた言葉を思い出す…


゛ゆっくりと丁寧に、筋肉の形を感じながら動かすんだ!゛


゛決して骨や腱を使うな!肉で感じて肉で上げるんだ…゛


10回程を済ませると、インターバルを挾み、その間に胸の筋肉を収縮させてみる…

゛うん!悪くはない!゛

オレンジジュースを一口含み、すかさず次のセットへ…
僅か2セット終えただけで、胸は痺れるほどに日照って来た…

゛いいぞ!!この調子だ!゛

胸を何セットかやった後、背中、更に腕、肩という順番で上半身を、時間をかけ丁寧に動かして行く…

゛ようし!良い感じだ!゛

上体の筋肉が心地よい気怠さに覆われていく…



そんな修司を横目に、゛大河実゛は まだ何の準備も始め様としない…
先ほどから エネルギーゼリーを2本飲んだきりだ…

彼だけではない…

゛小内英雄゛は まだ瞑想を続けたままだし、゛本城剛゛に至っては 気持ち良さそうに寝息をたて続けている…

このギャップこそ 吉岡修司と彼等の立場の違いを如実に物語っている…
これから始まるのは あくまでピックアップ審査…
つまり参加42名の中から、決勝進出者12名をふるいにかける審査である…
この時点で 審査員は まだ選手に対して順位を付ける様な事はしない…
あくまで、良く見えた12名の選手に印をうつだけなのだ…
よって、小内英雄、大河実、本城剛あるいは゛猪狩一宏゛等の実績のある選手達は、ここで本気を出さない…

彼等の勝負所は まだまだ先にある…
1位から12位までの順位を決めるプレジャッジ…
そこでようやく 彼等は、一つでも上の順位を勝ち取る為に、死に物狂いになる…
しかし、初出場の修司は まずピックアップ審査をクリアし、何としても、この12名の中に残らなけれ ばならない…
ここで見落とされる様な事にでもなれば、そこでジ・エンドだ…
とにかく、最初から全力でぶつかって行くしかないのだ…


゛あと10分です!゛


係員の声で ようやく大河達も動き始める…
しかし あくまで、気持ち筋肉を張らせる程度の軽めのパンプアップだ…


゛5分前です!選手の皆さん集合して下さい!゛


ここで全選手が 舞台裏に集結する…
しかし この時点で、服を脱ぐ者は、まだ誰もいない…
誰もが、そう簡単に、手の内は見せない…
己の武器は最後まで隠し持っているものだ…
既に ピリピリとする程の心理戦は始まっている…


゛あと1分です!゛


その合図で皆一斉に服を脱ぎ捨て その内に隠し持った最終兵器を表にさらけ出す…




"原塚祐介"が 現役を退いて、まる5年になる…
それ以来 毎年 日本選手権には 裏方としてボランティアで参加している…
今年の彼の割り当ては 選手の誘導係だ…
バックステージで選手をゼッケン順に並ばせ ステージまで誘導する…
なかなか神経を使う仕事だ…
しかし彼は 特にこの仕事が気に入っている…
何といっても、観客,、マスコミ、 そして審査員… 誰よりも早く選手の仕上がりを間近でチェック出来る…
1ボディビルファンとして、こんなに美味しい役目はない…
彼は興奮を抑えつつ全選手を見渡した…



まず 何と言っても王者小内だ…

゛いたいた!ほぅ〜、さすがに素晴らしいの仕上がりだ…゛
゛肌艶も良いし これは、ここ数年になかった程の出来に見える…゛
゛これを見る限り16連覇は濃厚なのか?…゛

゛去年2位、3位の大河は?…本城は?…゛
゛おお!これも凄い!両選手とも過去最高と言っても良いのではないか…゛
゛どちらも去年よりも数段に良い…゛

゛一体 今年はどうなっているんだ!゛

゛3強が それぞれに素晴らしいコンディションを作って来た…゛

゛この身体同士が、今からステージで存分にぶつかり合うというのか!!゛

゛想像しただけで、背筋がゾクゾクとする…゛

゛猪狩は…?゛

゛去年の4位の猪狩一宏は?…゛
゛いた!!ゼッケン14番!゛
゛ん!?゛

゛意外な事に あまり目立って映らない…゛
゛いくら 他の3強の出来が素晴らしいとはいえ、国内屈指のバルク派と言われる あの猪狩が…゛
゛否、こうやって 改めて見ると キッチリと仕上がっているし、相変わらずデカい…゛
゛なのに何故?…゛


原因はすぐに分かった…
隣りの選手…ゼッケン15番の選手が猪狩を圧倒している…


゛物凄いバルクだ…゛

゛物凄い密度だ…゛

゛物凄い仕上がりだ…゛

゛そして…゛

゛物凄いインパクトだ…゛


゛誰だあいつは!?゛


初めて見る顔である…

無愛想な顔である…

決して愛想笑いなどしそうにない顔である…

すぐに手元のパンフレットを確認する…



゛吉岡修司…?゛

゛一度も聞いた事のない名前だ…゛

゛な、何なんだ…今年の この大会は…゛

゛今日ここで、きっと、とんでもない事が起こる…゛



最初に死闘を予感したのは、この原塚だったのかもしれない…


゛時間です!それでは選手の皆さんは、一列に並んでステージに上がって下さい!゛


゛ドクン゛


゛ドクン゛


゛ドクン゛






主な登場人物



吉岡修司…この物語の主人公、3年前 日本クラス別選手権において宮本護に敗れ、その後 護の死にショックを受け
       ボディービル界から姿を消すが今年復活。

宮本護…修司の宿命のライバル。アジア選手権優勝後、妻と供に交通事故死。伝説のボディービルダーとなる。

太田新一…修司の幼馴染みであり、修司の働く運送会社の社長。

大河実…修司、護の大学の先輩。『大河マジック』の異名を持つ 現アジアライト級チャンピオン。今年の日本選手権を
      最後に引退を表明。

小内英雄…去年遂に日本ボディービル選手権15連覇を達成したキング、オブ、ボディービルダー

本城剛…日の出の勢いで躍進するイケメンビルダー。吉岡修司と宮本護の熱い闘いを見て覚醒。
      護を彷彿させる身体を有している。

八木道夫…『月刊マッスルマガジン』の編集者。

竹内功介…『月刊パンプアップ』のベテラン記者。

丈夫義文…『神の手』の異名を持つ、日本スポーツ医学の権威。

都筑茂雄…小内の前の日本王者。かつて、日本ボディビル史上最高の男と呼ばれた名チャンピオン