愛のチカラ 「獄寺くんは目が悪かったっけ?」 あんまり意識してなかったけど、本を読む時や勉強中は眼鏡をかけている事が多いよねと思って口にした疑問。実際今もかけてるし。 「いえ、少し遠視があって…」 「それならそれ外して、こうやって近づいたらよく見えないの?」 週末のいつもより多目の宿題をオレの部屋で一緒にしている、というより出来上がったのを見せてもらう結果になりそうな勉強会。そのテーブルの向こうに座っている獄寺くんに、ぐっと身を乗り出すようにして顔を寄せる。 「とんでもない!そこは愛の力で見えるんです!」 「獄寺くんのそーゆーなんか力の抜けるような発言は大好きだよ」 「ありがとうございます10代目!」 なんでこれで喜んでるのか判らない。ゆっくり元のところに座りなおして、シャーペンを手に取って一度くるりと回す。 「ほめてないから。…うん、でも眼鏡の君もたまにはいいかも」 何がですか?と聞かれてにこっと笑みを返し、 「今度、眼鏡のまま、したいな」 と言ってみる。 さすがにダメと言われるかと思ったのに、赤くなって 「10代目がお望みなら…」 なんて意外な返事。ふたつの碧眼はまっすぐオレを見つめてて、一瞬時が止まったような感じがした。 じっと見られるのって、すごく好きな人からでも結構重い。 だからって訳じゃないけど軽く前言撤回。 「ん〜、でも壊したらいけないし、やめとこう」 珍しく、言いだしっぺのオレの方が折れたと思ったようだから付け足しておくね。 「最中はそんなに優しくできないし」 片肘をテーブルについて軽く顎を乗せ、少し首をかしげるようにして笑って見せると、いつものように君は盛大に真っ赤になる。 「じゅ、10代目はいつも優しいです!」 「そうでもないよ。この前は泣かせちゃったし、ごめんね」 「あの、それはあんまりキモチよくて…」 自分で言っておいて思い出して、更に赤くなって。 そんな姿を見ていると、今日は君を家に呼んだという理由が仇になってしまったかのようで。 …一人暮らしの獄寺くんの家だと、したくなっちゃった時、止められないという。 「これ終わったら、ちょっとだけ獄寺くん家に行かせてよ」 「あ、はいっ!」 意味を理解して、超早いスピードで問題を解いていく君の手元を見ながら、これも愛のチカラなのかなと少し思った。 色んな形の君の愛のチカラを、オレは全部受けとめるからね。 結局その日は早く帰ろうと思ってたんだけどお泊りになってしまった。 眼鏡は…試せないほどだった。 <終> ※ できてる2人シリーズ。別に続いてる訳ではありません…(20090302) |