あまい誘惑

 

 

 

日曜日の朝っぱらから、我が家は千客万来だ。

「10代目、受け取ってください!」

「あ、ありがと獄寺くん…」

「イタリアから取り寄せたチョコです、俺の想いを届けたくて!」

「でもこれ、普通に輸入食品店で売ってるよ、見たことある…」

しまったと思ったがもう遅い。力一杯へこんだ獄寺くんの横から、今度は何故か山本が板チョコを取り出した。

「ツナ、これやるよ、友達チョコって言うんだっけ?」

「あああ、ありがと。…ってか、なんで持ってんの?」

「いや、仲のいい奴とか先輩には配るべきだって野球部で…。だから色んなのを買ってみたのな!」

「それ何か違うよ!先輩達に気をつけなよ山本、狙われてんじゃない?」

まああの雲雀さんがついていれば、山本にちょっかい出そうなんて命知らずな奴はいないだろうけど…。でも逆に、雲雀さんがいなければ、あんなことを言ってくる野球部に山本を置いておけない気がする。

そう思いながら包み紙を見ると。

「…ねえ、何このガーリってのは?」

「あ?面白そうじゃん、甘酸っぱい味らしいぜ」

「面白いって…他にどんなのがあるの?」

「ん、盛りなよっていう何かが盛ってある取り扱い注意ってやつと、大正っていうメーカーのと、奥地の恋人マッテとかいうメーカー…」

「バッタもんシリーズかよ!やるじゃん山本」

負けてない、負けてない。少し安心した。

「ツナさん!今年ハルは頑張りました!ビアンキさんに教わった秘伝のチョコですぅ〜!ヤ〇リの黒焼きなんて初めて使いました〜!」

「…受け取るけど、もしかすると食べれないかも…」

何を教えてるんだビアンキ…。

「これ、チョコケーキなんだけど…」

京子ちゃん、少し不安そう…どうしたんだろ?

「出来上がって箱に詰めて、持って出ようとしたらお兄ちゃんが盛大に振ってくれたの。『何だこれは、音がしないが入っているのか?』って…。作り直す時間なくって…」

だからってそれ持って来る?

「お兄ちゃんはブッ飛ばしてきた…ううん、だめよそんなことしちゃ、って優しく言ってきたんだけど…ごめんね…」

ここは、大人しく貰っておいた方がよさそうだ。

「あの、ボス…私はお料理とか出来ないので作る時は骸様が出てきて…何かのマッシュルームを材料に使ってあるそうです。食べて下さい…」

また怪しい手作りモノかよ…!でも受け取るだけならいいよね。

「食べたら許さないよ」

ずい!と目の前に押し付けられたのはチョコで包まれたヒヨっ子饅頭。

「先日あの子に付き合って某野球チームの本拠地に行って来た。そこの土産をよりによって応接室に忘れていくんだから…だからこれは僕からじゃないんだよ、判った?」

そんな回りくどい言い方しなくても。

それにしても。

「みんな、ありがとう。その気持ち、すごく嬉しいよ。だけどゴメン、オレ何も用意してなかったんだ」

申し訳ない気持ちでそう告げ…ん?立体的なハートのチョコのコスプレをしたリボーンが皆を呼びに来たよ…?

「おい、何を言っているんだツナ。ママンのクッキーが焼けたぞ。さあみんな上がれ」

わーい、おじゃましまーす!と、たちまち家はパーティ会場に。

そんな中、

「僕はいい。群れたくないし。あ、もう応接室に忘れ物がないか、君も一緒に見に行こう」

「んー、ヒバリがああ言ってるからな。俺行くわ、ごめんなツナ」

「いいよ、山本も気をつけてね」

「何に気を付けるって?」

「いいえ、何でもありませんよ。でも雲雀さんの鷹の目で山本を守って下さいね」

「言われなくても」

味方に居ると心強いあの人なら、親友にあーんなことやこーんなことをしてもいいや。許す。

第一その当人がそれを望んでいるのだし。

 

「10代目?」

玄関で2人を見送ったままつっ立っていたオレを呼びに来た獄寺くん。

ねえ、このままオレ達も…。

 

「抜け出さない?」

君の家へ。

 

「はい!喜んで!」

 

上着なしだと少し寒いけど、走って行けばあったまる…はず。着いてもまだ寒ければ、ふたりで温まって気持ちよくなるコトをしよう。

笑いながら、幸せな気分でドアを開けて駆け出す。

ごめん、このまま多分夜まで戻らない。

せっかく来てくれたみんなには悪いけど。

だからこそ、こんな時こそ自分に正直に。

 

「いちばん好きな人と過ごしたい日だからね!」

 

だけどね。

大好き大好き、みんな大好き。

みんなが幸せに過ごせますように。

そう願ってやまない

今日この日。

 

2月14日。

 

 

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     チョコがけひ〇こは捏造です、っていうか、あったらいいなという願望…(20100215

 

 


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