笑顔が咲く

 

 

 

新しい君はどうやら記憶が途切れ途切れに残っているらしい。

今、身体に残る傷の痕に指を這わして聞いてみる。

「誰にされたの?こんな酷い事。一体どこで?」

「地下室で…じゅうだいめ…に」

「そこから、誰に助けてもらったの?」

「…じゅ…だいめ…」

オレを見上げる瞳に涙が溜まる。混乱している。

「じゃ、オレは誰?」

「…じゅうだいめ、です」

ベッドに横たわったまま震えている君。その手を取って優しく握る。

「そう、君にとっての、なに?」

「だいすきな…ひと…」

「うん、正解」

一度軽く口付けをする。

「じゃ、これからずっと君を護ってあげるのは、誰?」

堪えきれずに零れる涙。

「じゅうだいめ…」

「泣かないの。笑ってよ、オレを誘う時の君の笑顔が見たいな」

握っていない方の手でゴシゴシと強く涙を拭き、

どこかが壊れたような笑顔で求める君。

「来て下さい、…俺の中を、じゅうだいめでいっぱいにしてください…」

そのきれいな瞳から、涙は止まらない。

 

 

 

思い出せる君の記憶のどこまでが本当の事なんだろうね。

よく、

『過去は変えられないが未来は変えられる』

なんて言う人がいるけれど、そんなことはないと思うな。

「…じゅうだいめ…っ…」

思考を中断する喘ぎ声。

「…もう…」

ベッドの上で四つん這いになって、発情した猫のように腰を上げオレのモノを咥え込んで鳴く。

オレは軽く腰を掴み緩やかに出入りを繰り返すだけで、中を締めて感じているのはハヤト自身。

「…いく…いきたい…じゅうだいめ…っ!」

「まだ、我慢して」

そう言いながら、限界を迎える直前の張り詰めた君自身を、手で包む寸前で止める。

「じゅうだいめ…手…俺の…おねがいします…!」

扱いてほしいよね?いきたくて苦しいよね?

トロトロとした体液を垂れ流す君のモノにオレの手の熱が感じられるまで近付けておきながら

まだそこには触れてあげない。

内側も外も焦らされ続けて、だから君は自ら腰を振る。

「そんなにあせらないで。落ち着いてオレを気持ちよくさせてくれたらすぐに…」

嫌というほど快楽の海に沈めてあげるから。

でもそうなってしまったら、溺れても助けを求めても引き上げないよ。いいの?

「はやく…じゅうだいめ…!」

いいんだね?

 

ごく一部で繋がっていた身体。まだ細くて幼い肢体を覆うように乗り上げ、包むように抱き、

「ハヤト」

後ろから声を掛けるとその吐息さえもが君を震えさせ、

ぺろ、と耳を舐めればそれだけでビクンビクンと一際強く締め付けてくる君の体内。

「…あ…」

開いた口にオレは右手の指を2本咥えさせる。

「ぐ…う…」

閉じられない口の端からは指を伝って唾液がつつ…と伝い落ちる。

柔らかく湿った小さな舌に乗ったオレの指がそこをよしよしするように撫で、

そのまま口腔内を解すように動かすと、喋れなくなった君はうっ、と呻き声を上げる。

「この指…これを、オレのモノだと思って吸って、舐めてみて」

ちゅ…と、唇が窄められる。頑張ってね、そうしたら…。

「…ん…っ…!」

左手の指先で、待ちわびていた君の性器を軽く突く。

それだけで腰は跳ねて、口の中の指に噛み付きそうな勢い。

「こういう事は協力し合って気持ちよくなりたいよね?」

2人分の体重を支えきれない君の手足が辛そうだから、

繋がったままよいしょと身体を起こしてオレの胡座をかいた脚の間に座らせる。

それでより一層君の奥に入り込む太い熱。

声も上げられない口の中では、舌が2本の指を強く吸いながら上顎に押し付けるようにして

前後に扱くように舐め続けている。

それに気を良くして左手で君の手を待ち、ハヤト自身のモノに導きそれを握らせ、

その上からオレの手を重ねて一緒にそこを擦る。

「…っ!」

身をくねらせ背を反らすようにして君は襲い来る快感の波から逃れようとするが、

奥深くまで繋がったお互いの身体はそれ位では離れる事などなく。

逆に咥え込んでいたオレ自身に強い締め付けを与えてくれて、

気持ち良さの証明につい腰を揺らしてしまう。

口腔内を蹂躙され、自身を自らの手で刺激され、その上内部まで…。

ゴリッとオレの先端で急所を突き上げたと思った瞬間、

耐え切れなくなったハヤトはとうとうオレの指に歯を立てた。

「痛いよ、それはやめて」

口調はあくまで優しく、しかしぐぐっと力を込めて顎を掴んで口を開けさせる。

「噛むんじゃない、吸う、わかった?」

言葉をかけながらも左手と腰は動き続ける。

ああ、泣いてるの?

ごめんなさいと言いながら。

いいよ、許してあげるから、もう一度してね。

至る所から上がる湿った音と、ベッドのギシギシという軋み。苦しそうな息遣い。

それらは決して激しい動きではないが、それでも確実に君を高みに追い詰める。

中でもオレの左手が直接触れているのは汗ばんだ君の手で、

その下で脈打ち粘液を吐き出しているハヤト自身を掴むのは君の手で。

強く握って上下に動かしながら、さりげなく蜜の出口を締めている。

そんな風に自分の意思で引き剥がせない手でそこを扱くのはどんな気分だろうね?

聞いてみたいけど今は無理そうだね。

口という口全てをオレに封じられている今は。

いきたくて苦しくて泣いているハヤト。

あんまり苛めても可哀想だから、もうそろそろあげてもいいかな。

待たせた分、たっぷりと。

「…!」

君のお腹の中で体積が増えたのがわかった?

それで腸壁を擦って蠕動を感じながらオレも頂点を目指す。

一番きつい入り口も、君から溢れた先走りが後ろにまで垂れてきているから、

出入りの度にそれが絡み付いてかえって滑りがよくなっていい感じだよ。

オレのモノが中の良いところに気まぐれに当たると君も腰を浮かそうとするけれど、

でもそれを阻止するようにハヤトのモノは前から押さえられるように扱かれていて、

君はオレの生み出す熱を体内に溜め続けなければならない。

幾度も大きく突き上げ、小刻みに揺する。

それを数回繰り返すと、君の手を通しても握っていたモノが声なく限界を訴えるのが判った。

だから。

…いい?いくよ。

ハヤトの身体に埋め込んだ、膨張した熱の先から弾ける精液。

射精に反応した腸内に、更に搾り取られるように締められて超気持ちいい。

欲しいのならあげるよと、それをまだ奥へと送り込むように、数回軽く腰を進める。

最後の一滴まで君に。溢さないように。

軽く力を抜いた後、ハヤトの自由を封じていたものを全て解放。

泣きながら震えて、自身から飛び出す白濁を、君は暫く呆けた目で眺めていた。

 

 

 

 

 

一緒にシャワーを浴びてオレはさっさと服を着込み、ぼんやりと立ったままのハヤトには

大きな肌触りの良いタオルを頭から被せてゴシゴシと拭いてあげる。

「じゅうだいめ…聞きたい事が…」

「…ん?」

なになにと、屈んで目線を君に合わす。

このオレが膝を折るなんて、他の誰にもしないんだからね。知ってる?

「こんな事…は、こいびと同士がする事、ですよね?

じゅうだいめと、俺は、こいびと…なんですか?」

痛いところを突かれたな。そう思っても顔には出さず、逆に聞いてみる。

「ハヤトは?その方がいいの?」

「…違うんですか…?」

「ん〜、秘密!」

答えをはぐらかして、もう一度タオルで君の髪の毛から落ちる水滴を拭く。

それからハヤトはなすがまま、服を着せられ抱き上げられてベッドに移動。

石鹸の香りのする頬にキスをして優しく下ろし、お休みと今度は額にキス。

「そういえば、誕生プレゼントに何が欲しいか決まった?」

目が覚めた時、気まぐれで聞いてみたんだった。

「俺、じゅうだいめがくれるものは何でも嬉しいです…」

「そんな事言ってると、オレがあげたい物贈るよ」

「…それなら…」

 

じっとオレを見つめて

 

「おもちゃを」

 

そう言って、

笑った。

 

自分は好かれている。そんな確信を持った、自信に満ちた笑顔。

 

何度か迎えた仮の誕生日の中で、今回が一番驚いた。

今度からは今日を君の誕生日に固定しよう。

おめでとう、だから願いを聞いてあげるね。

 

「いいよ、楽しみに待ってて」

 

また手を伸ばして抱きしめたくなるような笑顔のハヤトが生まれた日。

いつ切り捨てたのか全く判らなかった。残っていた記憶の残骸を。

 

そんな9月9日も、腕時計を見ると既に新しい日付に変わっている。

明日…ではなく今日また来る時には、

君が喜んで使ってくれるような物を沢山用意してあげるね。

それで、また一緒に遊ぼうね。

一緒に、ね。

 

 

<>

 

 

※ これでも獄誕…まあ裏仕様ということでひとつ…(20090913

 


戻る