ひかりのそら 「気のせいかと思っていたんですが…」 事が終わって、ベッドに座ったまま煙草に火を点けた獄寺くんがぽつりと呟く。 「最近、俺に…その…飽きたとか…別に好きな人ができたとか…?」 「はあ?」 思ってもみなかった事を言われてオレの方が飛び上がった。 着かけていたシャツに腕だけ通してボタンも嵌めず聞き返す。 「何言ってんの?ていうか、なに?オレそんなに上の空?」 「いいえ、そうではなくて…あの…久し振りでも以前のように時間をかけて…して下さらないので…」 「あ、そのことか」 わかっててじゅうだいめは…と口をパクパクさせている君は、ベッドに灰を落とさないようにという目配せに、まだ長い煙草を灰皿に押し付けて一度火を消した。 「あのね、獄寺くん。俺たち今何歳?」 「は?24歳に…ああ!」 察しのいい人だ。 「そう、そろそろアレが来るんじゃないかと思ってね」 10年バズーカでの入れ替わり。 「最中にいきなり替わられたら大変だろ?時差があるから夜なら大丈夫ともいえないし」 「たかが8時間…ええと、今が夜11時だから日本は朝7時か」 「こっち…イタリアが遅れてるんだよね、日本より8時間」 「そうです。ああ、学校に行かなきゃと起き出したくらいですかね」 あっという間の10年。過ぎてみれば呆気ないほど短い時間。 でも、その年月はずっと一緒に過ごしてきたよね。 「今更飽きたもないよ。これまでも、これからもオレたちは同じ世界で生きていくんだ」 「10代目…」 「愛しているよ。オレの…隼人…って、照れるな」 「名前で呼ぶのは2人きりの時間限定ですからね。でも、それに関しては大丈夫と思いますよ」 成長しても身長差は縮まるどころか同じペースで伸びていき、結局未だにオレの方が低いまま。 だからキスは立ったまましないと決めた。 今みたいに。 誘うように君は自分が下になり手を伸ばす。オレはその手を取って導かれるように重なって。 まるで今から始まるように深いキス。 「あれでも…そんな様子は見受けられませんでしたから…入れ替わった時…。だから、まだ大丈夫です…」 軽く催促してるんだね。 もっとしたいと。 「オレだって欲しいさ。それに途中で替わったって、今の隼人も10年前の隼人も、それこそ違う世界の隼人もみんな愛してる」 「…どんなハーレム作る気ですか」 「隼人ハーレム」 「もう!いい加減にして下さい!」 首に回された手に力が入った。 「俺は…この10代目…貴方が…貴方しかいりません」 あれ?泣きそう? 一途な気持ちをからかってごめんね。 「隼人、とりあえず今日は大丈夫そうだね」 「え?あ、はい!」 「それこそこれから8時間、いいよね?」 「って、ええーっ!?」 「誘ったのは君だよ?駄目だよもう止められないからね」 明朝、窓にひかりが満ちるまで、 空がひかりに覆われるまで、 離さないからね。 <終> ※ 大人で甘々inイタリア(20100724) |