毎日会いに行く。そして薬を盛り、抱く。繰り返される意味のない行為。 ただ己の欲望を満たすだけの道具のようなグンマに、しかし愛情は薄れない。むしろ気持ちは煮え詰まる一方。いつまでこんな事を自分は続けられるのだろう。 いつまで耐えられるだろう。 いつものようにグンマの部屋に入ると、珍しく物が散乱していた。何かを探しているようだ。 「どうした?こんなに散らかして。」 声を掛けるとファイルをめくっていた手を止め、グンマが顔を上げた。 「大事なものを無くしちゃったみたいで…。おとーさまに預けたような気もするんだけど、姿が見えなくって聞けないんだ。」 「今、なんと言った?グンマ、オマエの父親とは?」 耳を疑った。 「なに言ってんのさ、マジックおとーさまに決まってるじゃん。キンちゃんはおとーさまが何処に行ったか知らない?」 当たり前のような顔をして、自分を見上げる。その口調、表情、…それは忘れもしない今までのグンマ。 いきなり抱きしめても驚かない。 「なあに、キンちゃんいつもと違うよ?」 「キス…してもいいか?」 「うん、いいよ。」 強くその身体を抱きしめながら、口付ける。それに応じてグンマもキンタローを受け入れた。 挨拶のようにキスをしていた。 その頃のように。 「すまない、グンマ…したい…。」 雄の本能を押さえられない。 「なっ!なに、いきなり、びっくりするなあ。」 驚いてはいるが、嫌がってはいない。それを確認して返事を待たずにグンマを抱き上げベッドルームに連れ込んだ。 スプリングのよくきいたグンマのベッド。 「探し物、気になるんだけど…。」 ぷうと頬を膨らませるグンマの洋服を手早く脱がしてゆく。 「後で手伝ってやるさ。」 「いいよ、ひとりで…っん。」 待ちきれないようにグンマを求め、口付けた。 何度目かのキスの後。一度強く抱きしめ身体を起こす。 「…あ…。」 グンマの脚を開きその間に顔を埋め、控えめに勃ち上がったモノを口に含んだ。すると慌ててグンマが言った。 「待って、ぼくも…キンちゃんのを…するよ。」 以前口でするのはあまり好きじゃないと言っていたような気がするのだが。しかしそれはそれで嬉しい。 お互いがお互いのモノを口に収める。手も使いながらぎこちない愛撫を始めたそれを感じながら、キンタローはいきなり根元までグンマを銜え込んだ。 「ん…んっ!」 与えられる刺激はグンマの方が激しいはずなのに、口いっぱいに頬張っても歯を立てないように気を付けている。 グンマを早く高みに昇らせたくて、焦らせる事なく弱い所だけを集中的に刺激する。揺れる腰が限界が近いことを知らせていた。 「…っ!」 キンタローは口の中で弾けた精を飲み干すと、まだ足りないといってせがむように舌の先でグンマの先端をチロチロ舐め始めた。 「ん…ふ…っ!」 立て続けに精射を求められ、休む暇も与えてくれない。キンタローのモノはまだ大きく熱く、硬さを保っている。 何をそんなに急いでいるのだろう? グンマはそんな想いを抱きながら、与えられ続ける絶頂への誘いに耐え切れず、二度目をキンタローの口腔内に放った。 キンタローは力なく閉じようとするグンマの脚を開かせ、口から出したモノを今度は手で扱きながらその周りに舌を這わせた。生き物のように動き回るキンタローの唇と舌の感触と、握り込まれ上下に激しく扱かれる両方の刺激にグンマも反応している。 しかし、そこで急にキンタローは体勢を変えグンマの口から己を抜いた。 「今度はここに入りたい…いいな?」 指がグンマの秘所に触れた。 「ん、いいよ…来て…。」 もうこんな会話は出来ないと思っていた。それともこれが夢なのだろうか?グンマの体内に埋め込んだ自分自身が、ひくひくと脈打つような柔らかさに包まれているのを感じながら思う。 「あ…あ…。」 擦れた声。奥深くを攻め、内側で一番の急所を攻め、ひとつになってからも何度か達したグンマ。 気を失うように眠りについたその顔を、キンタローは長い時間見つめていた。忘れないように。瞳の奥に焼き付けるように。 それから数ヵ月後、グンマはこの世からいなくなった。 「グンマの、子供だ。」 マジックの腕の中に抱かれた赤ん坊を、キンタローは信じられないといった目で見た。 あれから数週間が過ぎ、マジックがどこかへ出かけて数日帰らないと思っていたら、こんな驚きを連れて来たとは。 「お前たちの遠征中にある女性に会わせた。一族の血を絶やす訳にはいかないと前々から言っていたので察しはついていたようだったが。今まで黙っていたのは、その女性やこの子に危害が及んではいけないと危惧していたからだ。」 「グンマの…子供?」 薄い金色の髪、青い目はどこかグンマの面影を残して…。この子に、果たして秘石眼は? 「なあ、この子、“力”は持っているのか?」 シンタローが気になることを聞いてくれた。マジックがこちらを向く。 「多分、両目に。」 この血をどこかで断ち切りたい、しかしそれは出来ないだろうと以前グンマは言っていた。その通りに、子供を残した事で血は繋がれた。道は続いたのだ。 「キンタロー、この子を教育してくれるかい?」 突然のマジックの申し出に一瞬返事を忘れた。 「俺が、グンマの子を?」 「それがグンマの願いだった。子供を残すために出したただひとつの条件…。」 そうっと赤ん坊を受け取る。柔らかくてあたたかい。 「あと、手紙を預かっていた。その子と共に渡してくれと。」 子供を抱いたまま、手紙を開いた。 『キンタロー様 この手紙を読んでいる時、その場にぼくは居ないと思います。もし居れば、これは破棄してもらってる筈だから。 ぼくは多分何かの病気にかかっています。永くは生きられないかもしれません。そう思った時に真っ先に思い浮かんだのがキンちゃんでした。 そこで、お願いがあります。 お父様からお話を聞きましたか?ぼくに子供が出来ました。その子が立派な大人になるように、キンちゃんが教育をして欲しいのです。 でもあまり堅苦しく考えないで。キンちゃんの持ってる知識をそのまま教えてくれるだけでいいんだから。 ただ、その子が秘石眼を持っていたら、その力を上手にコントロール出来るようにしてあげて欲しい。人を傷つけないように、願わくば“力”を一生使わなくて済むように生きてくれたら…そう思います。 ぼく達が一緒に過ごした期間は短かったけど、本当に楽しかった。キンちゃん、ありがとう。皆にもぼくは幸せだったと伝えて下さい。 そうはいっても、やりたい事としなくてはいけない事が違ってて苦しい時もありました。でも最終的には、これもいい経験になったって思えるようになりました。 「嫌な事をしなきゃいけないのと、 好きな事が出来ないのでは、 どちらがつらいだろうか?」 そんな事で悩まないで済むように、その子を育ててやって下さい。 そして最後に、もうひとつだけお願い。 キンちゃんは長生きをして。何があっても生きる道を選んで下さい。 生きてさえいれば何とかなります。何でも出来ます。 自ら死を望まないで、これからを生きて下さい。 生きていれば道は無数にあります。その中から一番ベストなものを選べばいい。選んで選んで、そうしていけば何とかなります。 がんばって。 ぼくの分まで。 そしてぼくの子供にもよろしく。 グンマより』 あれから3年。グンマの子供は成長し、そしてキンタローにも子供ができた。今日は初めてその子がここに来る。 「ね、赤ちゃん来た?」 「まだだ。しかしお前のイトコになる子だ、可愛がってやってくれよ。」 グンマそっくりの笑顔でにっこり笑う子の頭を優しく撫でる。 「うん、ぼく子ども好きだもん。」 「自分も子どものくせに何を言っている。」 あははと笑って逃げていく後姿を見送りながら考える。あの手紙はいつかグンマの子どもが成人したら渡そうと。 それまでは自分が大事に保管しなくては。 そして時々思い出そう。 これからの人生に迷いが生じたとき、行く道を照らしてくれるであろう、グンマの言葉を。 END ※
暗い話になりました…。 グンマの病気の元ネタは、「私の頭の中の消しゴム」っぽいですが、実は綾辻行人氏の「最後の記憶」に出てくる主人公のお母さんのものです。あのお話は怖かった。 あれ?最後、だったか最期、だったか忘れて…調べておきます。 |