悪戯

 

 

 

「お菓子をくれなきゃいたずらしちゃうぞ〜」

「10代目、まだその日には早いです…」

ドアを開けた途端にのぞくのは、オレンジ色の顔の付いたカボチャのお面を被った大好きな人。

この2週間、ダイナマイトの仕込みや他に調達したい物があってイタリアに飛んでいて、日本に戻ってきたのは夕べ遅く。だから今日は学校もサボって1日かけて時差の調整を…と思っていた。

「獄寺くんお帰り。夕べはただいまメールありがとうね」

「10代目にご報告は当然の義務ですので」

そう言いながらドアを閉めて室内に迎え入れる。

実は今も眠くてあまり頭が働かない。目覚ましにコーヒーでも淹れようとキッチンに向かいかけると、後ろから腕を掴んだ10代目がにこっと笑って、

「でもまだ忘れてることがあるんだけど?」

「は?」

「オレにお誕生日おめでとう、は?」

 

…やべ〜!!

霞んでいた思考が一瞬でクリアになった…どころではない!

 

「じゅ、じゅうだいめ!おめでとうございました!申し訳ありません!」

「ありがとう。それじゃ、オレ、これで帰るから」

「ええっ!?」

「獄寺くんにそう言ってもらえただけで嬉しいから。イタリアに行くと君って結構音信不通になっちゃうけど、でもせめて帰って来たらその足ですぐにオレのとこに来てくれるかな〜?なんて甘い考えを持ってたんだよ、実は」

ものすごい針のムシロなんですが、10代目…。

「大体、この時期にそんなに長く行っちゃうなんてありえなくない?誰だよこのスケジュール考えたのは?」

「…すいません、この俺です…」

「まあ過ぎちゃったことは仕方ないけどさ、どれだけオレが寂しかったか…わかんないよね、そうだよね」

まさに頭の中が真っ白状態。プンプンと怒ってそれを言われるのであればまだましなのだが、いつも笑顔のこの人がその表情を崩さず淡々とそう述べるのは精神的にかなりキツイ。

何度も頭を下げて謝罪するも、

「忙しい獄寺くんだからオレは二の次三の次なんだよね」

とこちらを見ずに玄関に行こうとする。

「…10代目…」

怒らせてしまったんだと、もう元には戻せないんだという思いで、

「さようなら…」

別れの言葉を口にする。背を向けた10代目の輪郭がぼんやりしているのが不思議だ、と思った途端。

「え?ちょ…マジ泣きしないでよ…!うそだってば!」

慌てて10代目が俺に抱きついてきた。

「もう、これくらいからかわれただけでどうしたの!いつもの俺様な獄寺くんじゃないみたいだよ」

いつも、俺のことをどう見ているのだろうと考えながら、

「うそ、ですか?許してくれるんですか?」

と問う。

「許すも何も、こうして君と会って話をしているだけで嬉しいってば!」

「でも、誕生日に…」

「仕方ないじゃん、もうずっと会えなくなるわけじゃないんだから何日かぐらい待つってば」

「本当ですか?」

「これは本当!…そうだ、ここって今お菓子はないよね?」

「ええ、すみません。10代目のお好きな物は今日これから買いに行きます」

暫く家を空けていたんだからそうだよねと、喜んだように、見えて…?

「じゃ、やっぱり悪戯はしなきゃ、ね?」

10代目は俺を抱く腕に力を込めた。

「でもさ、来年からは10月の予定表、オレにも見せてね」

 

 

その後、どんな悪戯をされたかは言うまでもない…。

 

 

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     ライトなお誕生日をめざしたつもりだったはず…。とりあえず、大好きな10代目、お誕生日おめでとうございました!(20091021)←わ〜ん(泣)

 



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