また君と歩きたい

 

 

 

好きな人には好きなところが沢山ある。…って、逆かな。

好きなところがいっぱいあるから好きになるのかな。

 

どう思う?獄寺くん?

下から見上げるように問いかけると、

「俺は10代目の全てが全部大好きですよ」

なんて訳の判らない返事をされた。

 

「冗談はコッチに置いといて〜、買い物に付き合って欲しいんだけど」

いや俺本気で言って…という呟きは聞こえないふりをして獄寺くんを街に連れ出す。

「寒くなってきたから防寒用品がほしいんだ。オレ寒がりだから」

マフラーはともかく、手袋は何故かすぐに穴が開く。

「メーカーとか色とか予算とか、なんか考えてます?」

「ううん、なーんにも」

実際、こんなのがほしいとイメージを持って行っても好みのが見当たらなくて、それならまた今度でいいやと何も買わずに帰ってしまう。何回かそれを繰り返すうち、急に寒くなって慌てていい加減にそこらにあるものを買ってしまう。

「去年がそうだったから、今年は早めに買っておきたいんだよね」

とりあえず店に入って並んでいるものを見回す。

10代目のイメージからすると、こんなのはどうですか?」

獄寺くんの指すオレンジが基調の手袋って、どうなんだろ、それは。

「どっちかっていうと、黒とか紺色とかがいいな…」

「じゃあこれ!俺とお揃いで!」

嬉しそうに目の前に差し出されたものの値段を見て、思わずぶんぶんと首を振る。

「予算オーバー!そんなにお金持ってないし!」

「買いましょうか?俺が」

「いいよ、っていうか、これはほんとに獄寺くんのイメージだ」

「は?」

「オレの好みとも違うし」

えええ…と項垂れる姿にちいさな声で耳打ちする。

 

 

「好みは違ってていいんだよ。それを身に着けてる君がオレの好みなんだから」

 

 

瞬間、沸騰したように赤くなる顔がまた何とも…。

そんなに照れたら嬉しくなるじゃないか。

 

「今日はいいや、出直そう。そうしたらまた一緒に買い物に行けるよ」

「は、はいっ!」

 

 

外に出ると流石に北風が冷たくなってて、暗くなったのをいいことに獄寺くんの手を握る。

「意外とあったかいんだ」

見た目冷たそうだったので驚いた。

獄寺くんは、握ったオレの手を黙ってそのまま自分の上着のポケットに入れる。

マフラーで顔半分隠しててよく見えないけど、すごく緊張して頑張ってる感じ。

だから誘い水。

「手袋の良いのが見つかるまで、ここ、使わせてもらうね」

「ど、どうぞいくらでもいつまでも!」

返事の代わりに、オレはポケットの中で、いわゆる恋人つなぎってやつに握りかえた。

 

 

 

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     つなごく、これでもつなごく…。多分、綱の方が体温は高いと思うけど。

20081201

 

 




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