心地良い悩みと 「なして夏の終わりは寂しいんじゃろうか?」 コージの放った言葉に、その部屋に居た全員が凍りついた。 当の本人は静まり返った周りを気にも留めず、先日行われた遠征の報告書を作成すべく慣れない手付きでキーボードを叩き続ける。 「春が終わるのは気にならんのじゃが、夏はこう、嫌じゃのぅ。」 ぺたり。 コージの額にトットリが手の平をあてる。 「熱はなさそうっちゃよ。」 「…なんの真似じゃ?」 「コージの口からも寂しいちゅう言葉が出るんかぁ?」 「わしは暑い方が好きじゃけん、寒うなるのは嫌なんじゃ。」 「それだけやないでっしゃろ?」 アラシヤマは書類に視線を落としたまま問いかける。 まだ何か理由があるのか?と皆がコージに注目した。 「終わったんじゃ。」 「何だべ?何が終わったんだべ?」 「わしの大好きなビアガーデンは、なして夏しかやらんのじゃ〜!」 叫ぶコージに背を向け、各々各自の仕事に戻る。そんな理由かい!と小声でツッコミながら。 「コージはん。」 ようやくアラシヤマが顔を上げた。 「ビールなら、毎年毎シーズンごとに色んなメーカーから季節限定ものが出てはりますやろ。それを試すのも一興やと思いますえ。」 「そうじゃ、その手があったか!」 「今度秋限定ものをずらりと揃えて飲み会でもやりまひょか?」 「その企画、乗るべ!」 「僕も行くっちゃよ!」 「…ヌシら、素早いのぅ。まあ、そんならシンタローにも声をかけようやぁ。」 「賛成!」 それから、年4回は皆で集まってあーだこーだと愚痴や文句をこぼしながらの飲み会が繰り広げられた。 まだ新人の頃の、今となっては楽しい思い出…。 <終> ※ ちょっとほのぼのを目指してみました。ちなみに私はビール飲めません。未成年だし…というのは嘘ですが、炭酸が苦手で。あとは苦いから…ってお子様かい! |