これからの 「これが思い出の品?」 グンマが見せてくれたのは、黄色いヒヨコの絵が描かれた少し大きめのマグカップ。 「うん、キンちゃんに初めて貰ったこれは、いつも仕事中にお茶するとき使ってるよ。」 『キンタロー』となって迎えた初めてのグンマの誕生日。しかしプレゼントは何をあげたらいいか分からず、こっそりとシンタローに相談した。 「大体必要な物は持ってるしなあ、アイツ。ぬいぐるみとかの好みは俺にはわかんねえし、本人にズバッと聞けば?」 と、頼りになるのかならないのかよく判らないアドバイスをされたのを思い出す。 だからストレートに 「今要る物はないか?」 と通りすがりの白衣に茶色い染みを作っていたグンマに聞いたのだ。 「カップが壊れちゃってさ〜、今から新しいの買いにいこうかと思ってたんだ。暇なら急いで買って来てよ。」 …そんな訳で、綺麗にラッピングされることもなく手渡されたそれは、今グンマの宝物になっている。 「それまでしょっちゅうカップを壊してたんだけど、これ貰ってからは一回も落としたりこぼしたりしてないんだよ。」 中身が無くなるまで手放さず、飲み終わるまで座っている。本人は気付かないが、周りの者は皆その様子に後片付けの手間がなくなったと一安心していた。 「値段とか、ブランドとか、そんなの関係ないよ。僕にとっては。で、キンちゃんにはあるの?何か思い出に残るプレゼントって。」 「いや、ないな。」 グンマはふーんと上目遣いにキンタローを見ると、 「じゃ、これからが楽しみだね。いい思い出をいっぱい作って、それに関わるものをどんどん記念にしていけばいいよ。で、全部に僕が関係してるといいな。」 この上なくわがままな、そして嬉しい申し出。 「ああ、そうだな。」 これまでは物を溜め込まないように心掛けていたが、少し収納場所を用意しよう。これからの自分のために。 そう考えてグンマを抱きしめた。 <終> * 甘めで誕生日ネタだったもの。今頃発掘…(汗) |