フラテッロ 「君が、オレを好きでいてくれる世界ってあるのかな?」 ボンゴレファミリー十代目は右腕を務めている彼に向かって優しく訊ね、口付けをする。 翡翠を思わせる緑色の瞳を閉じぬまま、それを受ける男は身体を離した後で冷たく応えた。 「貴方が優しい世界も、何処かにあるのでしょうか?」 少し癖のある柔らかい銀髪を指に絡ませて笑う十代目。 「お互いに無い物ねだりだね」 あるはずのない、どこにもない感情を求めるのはやめよう。 「何も無くてもこの世界は成り立っている。逆に全てが揃っていても崩れていく世界があるかもしれない。好きなひとを置いて逝くのも、残されるのも辛いものだよ。…ここでは、そんな心配はいらない」 そして、おいでと手を差し出して誘う。 オレ達はただのファミリー、フラテッロだよと。 「判っています、ボス」 その求めに、静かに応じる夜。 <終> ※ 『フラテッロ』…兄弟(20081208) |