みず色のように淡いもの

 

 

 

空気が乾いている。

季節は梅雨のはずなのに。

 

「あったかく…っていうより、昼間は暑くなったよね」

「そろそろ日なたで弁当を食べるのもどうかと思いますね」

さすがに真夏は暑すぎて屋上で昼休みを過ごさないが、いつまでこれが出来るかな〜とは考えていたところだ。今度はどこで弁当を食べよう…?素直に教室で、っていうのは面白くないし。

そう思っていたら、山本は夏の試合に向けて昼も練習をしたいといつもより少なめの弁当を広げ、満腹になると身体が重くなるのな!とそれを平らげてからバットを握ってグラウンドに下りていった。これからは暫くこんな日々が続くそうだ。

本当に野球が好きなんだなあ。

プロの世界ではエースで4番なんていないけど、山本ならそれが出来そうだ。

恐る恐るフェンスに手を掛けて、他の部員と一緒に楽しそう(いや、他の人は苦しそうにも見えるけど)に素振りをしている姿を確認する。

「10代目…」

後ろから獄寺くんがオレの手に自分の手を重ねてきた。そしてそのままゆっくり体重を掛けてくる。

フェンスと獄寺くんに挟まれて、身動き取れなくなっちゃってちょっとコワイ、かも。

「山本はいいから、俺も見てください…」

俯き加減で喋られると、背の高い君の口が耳の上に僅かに当たって一瞬身体が震えた。

「うん、見たいから、見せて」

あくまでも平常を装い笑顔を作る、が…。

「…すみません…あの…」

「ええと、なんで?したくなっちゃった?」

後ろに感じるこの、これ…。

「すみません、俺、今10代目と2人きりだって思って嬉しくなって、そうしたら…」

だからって、いまここで、すぐに?

「いいけど、せめて下から見えないとこに移動してからね」

妥協というか、何というか。

獄寺くんからこうやって誘ってくるのは最近よくあることだけど、学校で、外でっていうのは珍しい。

でも、まあいいか。

改めて向き合って明るく軽く、

「キス、しようよ」

と言った。

途端、ぱっ、と開く獄寺くんの笑顔。

かっこいい人は笑ってもかっこいいんだ…なんてどうでもいいような事を思ったり。ていうか、元々華がある人だから、笑うと本当に見惚れてしまう程に綺麗なんだ。

獄寺くんの周りだけ空気さえ違うように感じる。

最初は単純に冷たいだけと思えたそれは、今では冬の朝の澄んだ空気にも似た清々しさのようで。

だから抱き合っていると気持ちがいい。

繋がるともっと気持ちがいい。

 

屋上へのドアが開いてもすぐには姿が見えないようにその裏手に回り、最初は軽くキスをする。少し身体を離して服の下に滑り込ませた手を、そっと胸に置く。

すごくドキドキしてるな…。

「先に、してあげるね」

「え…10代目…!」

ベルトを外し、ズボンと下着を下げると既に大きく育っているものを口に含んだ。

壁に背をつけて、立ったままの獄寺くん。オレは膝立ちになって、それを咥えて吸って、舐めて。

「いいよ、出しても。飲んじゃうから」

「でも…それは…」

「オレが、獄寺くんのを欲しいな?」

見上げて笑うと、自分の手で口を塞いだ君はこくりと頷いて、いちど息を吐いた。

 

腰が揺れてる。

声を我慢してるけどイキたくて仕方ないんだよね。

舌の先でつつくように下側を行き来し、奥まで咥え込んで喉の奥でキュッと締める。

「…っ!」

苦しそう…気持ちイイ声を聞きたいのにな。

ちゅぱちゅぱと音を立てて口から出し入れし、見上げながら瞳を潤ませて獄寺くんの視線にぶつけてみた。

それが限界だったらしい。

多分無意識にオレの髪の毛を掴み、自身に押し付けるようにして数回動くと、口の中には獄寺くんの味が広がった。

最初だから量も多いし濃い。それを溢さないように飲み下すと、ゆっくり口から引き出して、最後に先端を舌の先でちょん、と突いた。

 

「あ…10代目!すみません!」

「なにが?」

「あの…俺だけ先に…」

「いいよ〜美味しかったよ、君のミルク」

赤くなるその顔をずっと見ていたいけど時間は限られている。

「後ろ向いて」

「…はい」

壁に手をついた君の腰を掴む。

「挿れるね」

「はい、じゅう…あっ!」

背後から、立ったままの挿入。上半身は服を着たままで、腰と脚の途中までしか見えない肌はとても白く見える。

「ん…10代目…」

「辛くない?痛かったら…」

「き…気持ちいい…です…」

ああもう、どんな顔してこんなこと言ってるんだろう。やっぱり正面向かせてすればよかった!顔を見ながら挿れたらよかった!

そんな後悔をしつつ、進める自身はようやく君の中に収まって、お互いほっと一息ついた。

「10代目…なか…俺の中、気持ちいいですか?」

いいに決まってるじゃないか!声に出さずに心の内で返事する。

「俺…10代目の、早く飲みたいです…」

「うん、あげるね」

そう言いつつ手を前に持っていき、既に達した獄寺くんのモノを優しく包むように掴む。

「ここも」

もう片方は胸の突起を人さし指の腹でくりくりと押し潰すように弄び、

「ここも、獄寺くんのいいところ全部同時に」

構ってあげるよ。

「…〜っ!」

中と外を同時に擦り、弱いところを自身と指で突くと、反動で締め付けて絡み付く直腸の粘膜。ここはこんなに熱いのに、やっぱり君を包む空気はひんやりしてて。だからこのまま放っておくと飛びそうになる理性が保たれる。

自分でする時みたいに獄寺くんのモノを扱きながら、腰を振って内壁に自身の熱を擦り付けて移していく。

熱くて気持ちいい。柔らかく締め付けられて気持ちいい。

夢中になると本能のまま身体が動く。

ごめんね、激しいかな?でも、そうされるのが好きなんだよね?

勝手な解釈でひとり納得し、ふと我に返る。

そうだ、飲ませてあげるんだった。でもどうせなら一緒に…

「いくよ」

「…は、い…!」

君の短い喘ぎ声が最後に繋がって言葉になって。

 

「10代目…!」

 

中と外に放たれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「午後の授業始まったね」

「そうですね」

あれでもと一応服は着た。

でも、疲れた。

「昼寝してて寝過ごしたって今から行こうかな。獄寺くんはどうする?」

「…一緒に帰りませんか?ウチで、また…これの続き…」

「だめだよ!どれだけ…」

オレのこと好きなんだよ。

ふー、と肩を落としたとき、申し訳なさそうに獄寺くんが口を開く。

「あの、怒らないで聞いてください。10代目は無意識に山本を目で追っています」

「そう?」

「憧れの人を見るように輝いた目で、俺に向けるのとは明らかに違う目で…」

「違うよ、確かに」

「は?」

「山本は、ほんとに憧れの存在だったもん。だから見ちゃうんだ、かっこいいなあって。でも獄寺くんは、好きな人なんだ。大好きで、その、何て言ったらいいか…照れるし…。あと、見てるだけじゃ物足りないって言うか、触れたいとかキスしたいとかいれたいとか…」

どんどん想いは暴走してしまう。

「だから、違う」

これは絶対。

「わかった?」

「…はい」

有無を言わせぬとはこのことだろう。

「でも、獄寺くんにそんな思いをさせていてごめんね」

「いいえ!俺の勝手な思い込みで10代目が謝ることなんてありません!」

申し訳ありませんと土下座しそうな勢いの君をなだめて立ち上がる。

どっちにしても、教室でも保健室でもいいからここじゃないとこに行こう。…いや保健室もパスかな。

 

 

「あ」

「え?」

 

鍵が。

 

「やまもと〜!」

 

何故か今日に限って屋上の鍵を閉めて行ってしまった彼のせいで、獄寺くんがダイナマイトでドアを壊し、その修理が終わるまで屋上には上がれなくなってしまった。

ついでに言うと、その後には本格的梅雨が始まった。

 

 

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     なんかこれ、気のせいか5927風なお話に見える…(20090615

 



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