無口な瞳 (1)
「慰めてよ」
じゅうだいめに抱きしめられて囁かれる。
「オレ、今日はお疲れなの。もうなんにもしたくない。でもハヤトとやりたいんだ」
そう言われてもどうすればいいのか判らない。
「ハヤトが自分で準備して挿れて、動いてイってくれる?出来るかな?」
全部をじぶんで…じゅうだいめのために、悦んでもらうために。
もちろん。
「…やります、させてください」
すこし身体を離して見上げると、
「大好きだよ、ハヤト」
と、心の中まであたたかくなるような満面の笑み。
「俺も…じゅうだいめを…すきです…」
「嬉しいこと言ってくれるね、じゃ、よろしくね」
いきなりギュッとつよく抱かれ、いちど軽くキスをくれた。
仰向けになっているじゅうだいめに跨って、そろそろと腰を下ろしてゆく。
息を止めていて苦しくなって、息継ぎをするように口から空気を吐き出すと、
せっかく緩みかけていた蕾が締まってしまい、おおきく天を仰ぐモノの受け入れを拒んでしまう。
「ハヤト、まだだめ?」
「ご、ごめんなさい…!」
「もう一回舐めてよ、中途半端な刺激ばかりで物足りない」
「…すみません…」
身体をずらし、じゅうだいめの中心で己の存在を誇示するものを口に含み、
手と、舌と、唇を使って、じぶんの中に入ってくるものの為に愛撫を施す。
口に唾液を溜めて、舐めながらそれをゆっくり出し入れした。
そうするといやらしい音がしていい感じだとじゅうだいめが言っていたのを思いながら。
「もう少し強く吸って」
返事ができないのでこくりと頷き、先端が喉の奥に当たるほど咥え込んでつよく吸う。
それでも。
「こっちの口ではオレのが全部飲み込めないんだよね。やっぱりもう挿れて」
頑張ってくれたんだけどね、と言いながら頭を撫でてくれる。
そうっと口から出したものはさっきよりも太く硬くなって、それ自体が別の生き物のよう。
じぶんの唾液と溢れ出す先走りの液をまとい、ぬらぬらと赤黒く光る。
「見とれていないで、ハヤトに挿れてやってよ」
はっとして顔が赤くなる。
「下の口で、オレを根元まで咥えて」
「…はい」
じゅうだいめは疲れているのにこんなに優しい。
無理矢理に痛いことをしない。
だから、頑張る…。
いたい…おおきいの…でも、じぶんで挿れて…って…
涙が浮かぶ。それを手の甲で拭って更に腰を落としてゆく。
くるしい…息が…
だけど、じゅうだいめは待ってる。
じぶんでぜんぶ挿れるまで、手を出さずに。
奥の奥にじゅうだいめの先が当たってる…でも、まだ入ってない…ぜんぶ…
いちばん太いところが孔を広げて、ようやくふかいところで繋がり合う。
ハアハアと息を乱せば
「大丈夫?」
と心配そうな声。
平気…だってじゅうだいめとひとつになっているのだから。
「…はい…だいすき…じゅうだいめ」
泣きながら笑って見せると、このひとも笑顔をくれる。
「えらいなあ、よくできたね。ここからはオレが…」
…いきなり脳天に響く衝撃。
「オレが気持ち良くなるようにさせてもらうね」
手首を掴まれ、背を反らす。
突き上げられて落とされて、声も出ないほどの…。
最初はゆっくりと大きく数回、それが次第に激しく小刻みな動きへと変化してゆく。
「いいよ、ハヤト。もっと締めて、中も、外も」
「…あ…!」
満足に返事も返せない。
強弱をつけて奥を突かれるかと思えば、粘膜の感触を愉しむように唐突に動きを止める。
「ハヤトの感じるところ、教えてよ。自分で動いてさ」
ここですと示してほしいのだろうか?酸素が足りなくて考えるちからが出ない。
「動いて、ね?」
大人なのに、小首をかしげてお願いするような、かわいい仕草。
この顔…だいすき。
だから、じゅうだいめがもっとこんな風に笑ってくれるように、
じぶんを見てくれるようにするんだ。
「こう…ですか?」
…俺の中の…きもちいいところ…じゅうだいめに…。
じぶんから腰を前後に揺らしてみる。
ちがう…ここじゃ、ない…。
「それよりこうする方がいいと思うけど?」
じゅうだいめが手首から手を離して腰を掴んだ。
「相変わらず細いね」
そうして身体を軽く持ち上げ、落とすようにして何度か奥を攻めた。
…あ、ここ…だ!
ベッドの軋む音とじぶんの喘ぎ声と、僅かに遅れてぴしゃんというちいさな水音。
痺れが沸き起こるのと、
それが全身に広がってきもちのいい証として自身から白濁が飛び出すのと、
ほぼ同時だった。
「いいよ、オレの上においで」
力の抜けた身体をじゅうだいめに重ねて、息を整える。
目を閉じると優しく頭を撫でながらこのひとは、
「でも、まだ寝ないでね」
と。
「ハヤトが頑張ってくれたおかげで元気になれたよ。
今度は、オレが愉しませてあげる番だ」
じぶんに埋め込まれたままのものが、おおきさを増したような気がした。
※ (20090625)