なかよく一緒にいつまでも

 

 

 

「ツナさ〜ん!」

今日も朝から元気なハルの声がする…って、ええっ?ここ学校なのに?

「インフルエンザで学級閉鎖になったので遊びに来ちゃいました〜!」

焦るオレに向かって大げさすぎるほどの会えて嬉しいポーズを見せる。

京子ちゃんまで一緒になって笑ってるから嫌な顔できないよなあ。

しかもまた並盛の制服着てるし、隣の獄寺くんは聞こえよがしにうぜーとか言ってるし。

「丁度いいから皆さんにリクエストも聞こうと思います〜」

「リクエスト?何の?」

いつの間にか山本まで混ざっている。

「あのですね、女の子の年に一度の大イベント、ヴァレンタインディのチョコについてですぅ〜」

キャー、恥ずかしいーと照れながら、その手にはしっかりとペンとメモ帳が握られている。女の子ってわかんないなあ…。

「まずはツナさん!特大のハートでいいですね?」

「それ限定?」

「はい、そうです!ついでに獄寺さんはビター味ですか?」

「ついでって何だよ…、っていうか、いらねーよ」

「じゃ、おまかせということで」

人の話を聞け!と拳を震わせてる獄寺くんがおかしくて笑いを堪えるのが苦しいや。

「あ、俺はバットとボールとホームベースの形をしたやつがいいなぁ」

「う〜ん、どれかひとつならなんとか出来ます〜」

…できるんだ。

「じゃ、ボールで!」

…、ただの丸いチョコじゃんか。山本って、面白いなあ。

「でも私も、お兄ちゃんにボクシングのグローブの原寸大のチョコを作ってあげたことあるよ」

「え、本当?!」

「ううん、冗談。ツナ君びっくりした?」

チョコの形よりも、そんなことをいう京子ちゃんに驚いた。

「あとは〜京子ちゃんのお兄さんにはお守り型のチョコで〜」

「食べれないじゃん、それじゃ」

軽いツッコミも流しつつ、周りを見回してあと誰か…と考えているハルの背後に人影が立った。

「君たち、応接室の前で群れるのは止めなよ」

「雲雀さん!」

いちばん人が寄り付かないからハルが目立たないかと思って…と自然に足が向いた先がここだったんだよな。

「あ、チョコのリクエストはありますか〜?」

雲雀さんの鋭い目つきも何のその、ハルはある意味無敵だ。

「…小鳥の形のは食べるのがかわいそうだからやめてほしい」

「それなら、お土産で有名なひ〇こは頭からガブリといけないくちですね」

…あやうくそんな言葉を口にしそうになってあたふたする。

「はい、普通にカワイイのにしますね〜」

ハルがメモ帳をポケットにしまうのと同時に始業のチャイムが鳴った。

「じゃ、帰りにハルちゃんの家に寄るね」

「はい〜、京子ちゃんも一緒につくりましょうね〜」

そこで一度解散となってみんなで教室に急いだ。

 

 

 

放課後の帰り道。

「俺も10代目にチョコをさし上げますからね!」

妙に張り切って宣言する獄寺くん。

「いらない」

「え、って、それ…」

びっくりされて逆にこっちが驚いた。

「あれは女の子から貰って嬉しいんであって、別に獄寺くんからはいらないよ」

「でも、あれは好きな人にあげるものだって…」

誰に聞いたんだろ?なんだかすごくがっかりしているようなんだけど。オレが貰わないって言ったのがかなりショックな様子だ。

「日本ではバレンタインデーは国民的行事だって聞きました。だから…」

「ねえ、その話はどこから?だいたい国民的にそこまで大袈裟にしてないって。オレだって獄寺くんにあげるつもりはないよ?」

「ええっ…!」

「クリスマスとかと勘違いしてない?」

「いいえ、でもリボーンさんは…」

「リボーン!?」

まったく獄寺くんに何吹き込んでんだよ。

「落ち着いて聞いて。オレは獄寺くんのことが大好きだよ。でもチョコはね、それを使って告白するための道具のようなものなんだ。だからもうお互いが相手を好きって分かり合えてるオレ達にそれは必要ない。わかった?」

あれだけ頭の回転が速い人なのに、この言葉は脳に届くのが遅いのか。

しばし呆然とし、腕を組んで考え、空を見上げ、俯き、ひとり脳内会議を行っている。

そして結論が出たようにぽんと手を叩き、オレを見た。

「よくわかりました!つまり10代目も俺のこと好きで…」

そう言った瞬間、獄寺くんが真っ赤になった。

それはまるでお湯が沸騰したかのように。

「ええ…え、わ、…」

「何うろたえてんの?」

「おおお俺、10代目が好きです!」

「だよね。オレも獄寺くんが大好きだよ」

きっと君よりもっともっとその想いは広く深く。

見上げて微笑めば更に全身真っ赤になってしまったかと心配するくらい、湯気が立ち上りそうなほど照れている。

「甘い物は今度食べられるからさ、今日は違うものを獄寺くんの家で食べたいな。外は冷たそうで、でも中身はとってもあたたかい物」

「アイス、ですか?」

「違う」

ぴっと人さし指を君の心臓に向け、

「ココロの中は熱い位かもね」

それで察したみたい。

 

 

さすがに手を繋いで歩くのは恥ずかしいだろうから、並んで歩いて君の部屋まで行って。

それからは、まさに君を離さない状態。

チョコの前にもおいしいものをいただきましたって感じ。

 

 

だけど明日の2月14日は、朝早くから届くであろうチョコを家で待ち構えないといけないから。

ごめんね、もう帰るね。

でも明日もまた会おうね。

お休み、獄寺くん。

 

そうっとドアを閉めて、貰った合鍵で外から鍵を掛けた。

 

 

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     あー、ここの2人は『プレゼント』とか『イベント』の世界の彼らってことで…(20090207

 

 


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