願いはひとつだけ クリスマスだからって、特別何かをしなければいけないという訳ではない。なのに、したくなる。そんな不思議な日。 「いつもやさしく抱き合ってるのが、ぎゅうって強く抱き合う位の違い?でもそれって寒いからっていうのも理由のひとつじゃないかと、オレは思うんだけど」 「いえ、俺は暑くても寒くても梅雨でも盆でも正月でも10代目と抱き合っていたいです」 「なんか、ロマンチックさとそこまで無縁とは思えないんだけど。その見た目から…」 日本人離れした外見からは、バジルまでとはいかないが結構日本食が好きだとか、お祭りが好きだとか、でもこんな風にクリスマスには無関心だとか思えない。 まあ大体がイタリア人の、特に男の人は情熱的で、いい例がシャマルみたいに女の人を口説いてなんぼみたいなイメージをオレが持っていたからなんだけど。 「どちらかと言えば、俺にとって重要なのはキリストより10代目のお生まれになった日で…だから自分的に盛り上がるのは10月の方でして…」 …ああ、そういうこと。 「でもさ、オレの誕生日にはプレゼントってオレしか貰えないけどね、クリスマスにはお互いがあげたり貰ったり出来て楽しいと思うんだ。好きな人に喜んでもらえる物を探す、そんな事前準備さえ楽しくなっちゃう…のはオレだけ?」 言葉の最後は疑問詞で。 「い、いいえ…!俺も楽しいです!」 「だよね?ねえ、今年は何が欲しい?」 さりげにリサーチも兼ねてみる。 「それはもう、10代目の全てです!」 「却下」 コンマ0.1秒の速さで切ってのけられて少々へこんだみたいな獄寺くんは、それでもめげずに 「そそそそれではややややってる時のすげえかっこいい10代目の顔の写真が欲しいです…」 「何に使う気…?それよりそんな時にオレ自分撮り出来ないからさ、最中にいい顔を獄寺くん撮れるものなら撮ってみてよ」 そんな返事が返ってくるなんて予想していなかったらしく、慌てふためいてよくわからない踊りを踊っているような格好の君は、 「ああっ、今日デジカメ持ってねえ…!」 と半ば本気のように焦っていた。 「オレのは貸さないよ」 …て、ちょっと待て。 「それなら仕方ねえ、携帯のカメラで…」 今日ここで、オレの部屋でやる気満々ですが、まじですか? 「さあ、10代目、準備万端整いました!」 そんなにきらきらした目でオレを見ても…。 オレの方が襲われそうな勢いの、まさにその時、 「ちゃおっス!」 ノックもなしにばあん!と勢い良くドアが開いた。 「リボーン!」 「リボーンさん!」 「何だ獄寺その携帯は。何をする気だ?」 そこで改めて正気に戻ったらしく、 「いや、これは、その…」 と急いでポケットに入れてしまった。今日ばかりはリボーンに感謝。 「さあ、オメーらの勉強を見に来たぞ。覚悟しやがれ」 チャ…と銃を構えられ、たった今助かったという思いは別の方向で命の危険に晒されているのだと悟り、 「勉強します!獄寺くんも!」 と、閉じていた教科書を開いた。 テスト期間中は、さすがにあれはお休みにしよう。 その代わり、終わったら…。 「今年のクリスマスプレゼント、何が欲しい?」 って、もう一度聞いてみようかな。 <終> ※ ワクワク感の漂うクリスマス前…(20091207) |