野の花の 繋がった身体、自由に動かせない手足。 手首を掴まれて激しく打ち付けられる腰に、手加減は微塵も感じられない。 ギシギシとスプリングが軋む音に、短い嗚咽が重なる。 …たすけて、やめて…。 泣きながら見つめる先には、少し離れて薄い微笑を湛えたじゅうだいめの姿。 …いたい、こわい…。 叫んでも攻める手はゆるむどころか更に速さを増して出入りを繰り返す。 無表情なこのひとの冷たいグリーンの瞳には、泣き叫ぶじぶんの姿が見てとれる。 「いいよ、中で出しても」 あのひとの一声で体内で弾けて広がる熱。 迸る勢いが急所を刺激し、甘い痺れがそこを中心に急速に全身に広がってゆく。 「あ、だけどハヤトはまだいかないで。オレとするまで待ってて」 …え? 「それから、彼にはまだ仕事が残っているんだ。服を汚したらだめだよ」 …いくらじゅうだいめの言葉でも、この体内の疼きを止められない。 「ふ…ぁ…!」 跳ねる腰、放たれる白濁。 だめだ、と目を閉じた。 「…?」 違和感を感じゆっくりと瞼を開くと、じぶんを責めているはずのこのひとが、 いくつものごつめの指輪をはめた細い指で先端を包み込んでいた。 吐き出されたものは、全てその手の中に収まっている。 スローモーションのようにゆっくりと、片方だけ自由になったじぶんの手の甲で、 涙をふいた。 「甘やかしちゃだめだよ、我慢も大事なんだから」 じゅうだいめが少し怒ったように言うと、 「すみません、自分が大事でした」 と、このひとは軽く頭を下げる。 「ハヤト、汚しちゃった手はきれいにしてね」 その言葉で、翳されたこのひとの手のひらにこびり付いた白い粘液に舌を這わせた。 ぺろ、と舐めたとき香る煙草の匂い。 そういえばじゅうだいめは煙草を吸わなかった。 部下であるこのひとは吸うのに。 でも大人のひとだから、いいんだ。 …じぶんは、大人になれるのかな…? 「そんなに美味しい?自分の精液」 夢中で舐めていたのを咎めるように傍に来ていたじゅうだいめに気が付かなかった。 「沢山飲みたいならオレのもあげるよ。満腹になるくらい」 「ちが…ごめんなさい…」 「なんで謝るの?いいから口開けて」 仰向けのまま顔だけ横を向かされて、じゅうだいめのモノを咥えさせられる。 「下の口、もっと中に飲ませてあげて。まったくオレひとりじゃ足りなくなるなんて思わなかったよ」 …違う、やめて! 「大丈夫、少し乱暴に扱われるくらいが好きなんだから、この子は」 …いやだ! 大人ふたりを同時に相手なんてできない。 今までじゅうだいめだけでも辛くて苦しかったこの行為なのに。 「いいよ、動いて」 それを合図に突き上げが始まる。 それは、おもちゃを入れられて奉仕したときとは比べ物にならない程の衝撃。 小刻みな揺さぶりで身体の中を行き来する波のような感覚に意識を奪われ、 口の中のじゅうだいめに集中できない。 「そんなにイイんだ。早くこうしてあげればよかったね」 優しい口調なのに髪の毛を強く掴んでぐっと喉の奥に入り込む肉棒が、 はちきれんばかりに大きくなって脈打った。 …いき、が、できな…。 このひとが暴れ方がおかしいとじゅうだいめに指摘してくれなかったら、窒息していた。 そして、はじめて、最中に吐いた。 「泣けばいいってもんじゃないんだけどね」 シャワーの後、あれだけ酷いことをされたはずのじゅうだいめに抱きついて泣きじゃくる。 「撃とうとした獲物が懐に飛び込んできたら撃てなくなる、って聞いたことあるけど。 まさに今そんな雰囲気かな?」 返事もできずに震えながら泣き続ける。 じゅうだいめはふう、と溜息をひとつ。 「ハヤトが悪いんだよ?判ってる?」 「…はい…、ごめ…ごめんな…さい…」 喋るとまた泣きたくなった。 「いい?もうオレ以外の人に興味を持ったらだめだよ? ここにいる人達は誰も君の味方なんかじゃない。これでよく判っただろ?」 「わかり…ました…」 自分の存在を主張せず、他人に興味を持たず、 野に咲く花のようにひっそりと過ごすのがいい。 じゅうだいめはそう言って抱きしめてくれた。 「君には確かに華がある。害虫からは守ってあげるよ」 だからオレだけのために咲いてね? 泣き疲れて眠りに落ちる寸前、耳元で囁かれた。 「じゅうだいめの…ためだけに…」 じぶんは、この高い塀に囲まれた広い庭の中で誰にも見られることなく、 じゅうだいめにだけ姿を見せて、散る。 これからは…。 じゅうだいめには、大事な部下がいる。 だけど時々姿を見ることがあっても、絶対に口をきいてはいけないと言われていた。 そして、向こうも同じように声はかけてこなかった。 黒い髪の人と、自分と同じような銀色の髪の人。 名前も知らないあの人たちは、じゅうだいめを命を懸けて護っている。 そう聞かされた。 だからお話してみたかった。 じゅうだいめのことを、聞きたかった。 それだけだった。 どうしてじゅうだいめがあんなに怒ったのか、今でもわからない…。 <終> ※ ここはパラレルの世界です。綱の右腕と懐刀の名前?それはね…(20090308) |