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望 手足の自由を奪う細い鎖や まるで犬のような首輪が外される唯一の時間 深夜の地下室に訪れる身体の解放と、心の束縛 呻き声は嬌声に 強張っていた四肢は痙攣するように震え 精神は高みに登りつめ、堕ちてゆく 苦しい(キモチイイ) 痛い(モット) やめて(ヤメナイデ) 最中はいっそこのまま死にたいと でも終わった途端 何としてでも生き延びてやると思う 矛盾と、混乱 そして 暗闇の中、痺れて動かない肉体を再び鎖に繋がれる たすけてと毎日のように叫ぶ 聞いてもらえたことなんてないけど ここからだしてと重い扉に縋って呟く いつまで じぶんは人間でいられるだろう? 「躾は最初が肝心なんだ、おいで、ハヤト」 意思を持つことを放棄してようやくおひさまの元に出してもらえた 「やっぱり君の髪の毛は外で見るほうが綺麗だよ」 あたたかい風を全身に受けながら 笑うボンゴレ10代目 その彼の 命令を聞いて 言いつけに従う それだけで与えられる、温かい食事と寝床 これを着て それを脱いで 言われるがまま動く 人形のように 口はことばを紡ぐものではなく 咥えて舐めて精を受けとめ飲み込むもの 今度罵りの発言をすれば舌を切り落とすと言われ 優しくキスをされる 替わりはいくらでもいると 嫌なら壊して捨てちゃうよと どうして笑いながらこのひとは あんなことが言えるのだろう 思考は漂う いいや、だめだ 逃げることなんて考えちゃいけない ここでは 何も望んではいけない 望みを持つことを捨てたいという望みは 叶いそうで 叶わない <終> ※
『平行世界』と対になるようなお話。命令に従っても従わなくても、向かう先は暗い闇。(20081127) |
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