幼い強がり
いつもと感じが違う。
じゅうだいめは左手でじぶんのを擦ってくれるけど
このひとは右手で、竿の部分だけでなく袋の部分まで刺激してくれる。
ふつう、利き手と反対の手で自慰をするひとが多いって、じゅうだいめが言っていた。
だからこのひとは左利きなのかな?
…あ、先の、敏感なところまで同時に…指の腹で…。
気持ちよくて、声ががまんできない。
脚の間に座らされて、もう繋がりあって、時々中も擦られるけど、
今は主に、外の、自分が出すほうに専念されている。
「いく…!」
身体が前に倒れないように左腕が自分を抱き、右手はスピードを上げて自身を上下に扱く。
腰が自然に揺れる。
そうすると中も気持ちいい。
外も気持ちいい。
半開きの口から涎が垂れる。
「…あ…あ…!」
耳を舐められて、その刺激で達してしまった。
つよく締めた拍子に、中で弾けるあついもの。
それが何度目か、もうわからない。
「そんなにイイ?いやらしい顔してるよ」
前に立ったじゅうだいめが前髪をかき上げてくれた。
「…いい…です」
だいすきなこのひとに焦点が合わない。今は動いていないはずなのに。
「じゅうだいめ…きもち…あ…」
言葉を遮るように再開される律動と剥き出しの急所への攻め。
「きもち…いい…」
涙が視界を歪ませる。
本当はこのひとじゃなくて、じゅうだいめとひとつになりたい。
でもじゅうだいめが、このひととするところが見たいと言ったから。
クスリも玩具も使って、じぶんがいくところが見たいと言ったから。
感じやすくなるおクスリは、このひとが口移しで飲ませてくれた。
何回も、もう飲めないと思うまで、お腹いっぱいになるまで。
そうすると身体に力が入らないのにあそこだけは硬くなって、
軽く触れられるだけでも痛いほど気持ちいいのに、
いつも以上に強く扱かれてそこだけで数回は白濁を飛び散らせる。
これで玩具を挿れられたらくるってしまう。
戻って来れなくなってしまう。
だから、
絶対に後でじぶんで挿れるからと約束して、
今は
このひとと。
細くて長い指で巧みに
まるで楽器を演奏するように自身を弄ばれる。
このひとはつめたい指。
じゅうだいめとは、反対に。
与えられる刺激に、
流されるまま、なすがまま。
「もう完全にいっちゃってるよね」
じゅうだいめに返事もできない。わななく唇はおなじことばを繰り返す。
「きもち、い…い…」
「満足?」
「…い…いえ、…まだ…じゅうだいめに…挿れてもらって…ない…」
「ふうん…?」
「待って…います…から…早く…」
「早く、なに?」
「じゅうだいめの…おおきいのを…あついのを…飲ませてほしいです…」
このひとは、いや。
じゅうだいめがいい。
「だけどこんなになってて、このあと玩具で遊んで、それでもオレのを挿れたいの?」
「はい、早く…じゅうだいめ…」
手を伸ばしたいのに、身体が思うように動かない。
ならせめて、ことばを…。
「じゅうだいめ、…好き…です」
見上げて、求めて、
わらう。
わらってみせる。
「…っ…!う…っく!」
急に激しさを増す突き上げと、自身へのきつい締め付け。
「あ…痛い…中も…いた…い…」
痛いのにきもちいい。
気持ちいいけど痛い。
双方の感覚がぶつかりあって、もうわけがわからない。
身体の中から溶けていきそう。
体内を満たしていたどろどろとした液体が動きに合わせて溢れ出る。
このひと、おこってる。
おこって、じぶんをこわそうとしてる。
じぶんなんか、いなければいいと思っているから、このひとは。
…このひとも、じゅうだいめを好きなんだ…。
だったら。
「じゅうだいめ…俺…何回でも…じゅうだいめがいいって言ってくれるまで…いきます…。
見て、下さい…」
負けない、このひとには。
「大好き…じゅうだいめ…」
自身を包む薄い手のひらの中に噴き溢す粘液の量は減り、
どれ程の回数達したのかわからなくても、
それを見ていてくれるじゅうだいめは、変わらず優しくわらってくれて。
視線があたたかい。
その熱に包まれたい。
「…じゅうだいめ、早く来て下さい…気持ちよく、してください…」
「十分気持ち良さそうだけど」
「ちがう…じゅうだいめが、いい…これじゃないのがいい…」
わざと怒らせるような言い方をして挑発すると、
このひとは一層激しくじぶんを攻める。
そうしてお腹の中に収まっている熱棒が弱いところばかりを擦り、突き、
じゅうだいめの望む、いくところを簡単に見せてあげられる。
冷静そうで、でも熱くなりやすいひと。
このひとも勝ち気で負けず嫌いで、まるでじぶんみたいだ。
ふっ、と一瞬、目の前が暗くなった。
「気絶するほど苛めないで。まだお楽しみが残っているんだから」
繋がったままゆっくりと横向きに寝かされて、それに絡み付く内臓も引っ張るように
乱暴にこのひとのモノが出て行った。
苦しかった。
ようやく大きく息を吸って、楽に呼吸が出来る喜びを味わう。
でもそれも束の間。
「自分で、って言ってもこれじゃ出来ないみたいだからオレが挿れてあげるよ」
じゅうだいめの手に握られた玩具は初めて見るもので。
色や形自体は男性器そのものだけど、その先端にのぞく丸い真珠のようなものは、もしかして…?
「ココ、改良版で振動が凄いの」
これを当てられて、その時じぶんは正気を保っていられるだろうか…?
「ハヤトのために、特別に開発したんだ。悦んでくれるといいな」
笑いながらじゅうだいめはそれ自体にローションを垂らし、
さっきまで中にいたひとは無表情のまま、じぶんの片足を持ち上げ秘所に何かの薬を塗る。
「せめて挿入時くらいは痛くないようにね」
入ったらもう知らないけど。
そんな声が聞こえたような気がした。
先端が閉じている孔に添えられ、くりくりと回すように動く。
「…んっ…!」
指で皺を伸ばすようにそこを広げられて、強い力で異物が押し込まれる。
固く冷たい器具が孔を広げながら進む。
どこまでも入ってくる。
汗が流れる。
そして。
震える。
仰け反る。
腰を振って絶叫する。
想像していたよりも激しい振動が直接脳みそを揺らす。
「感じてくれた?」
「じゅ…!いく…、また、いく…!」
腸壁が痙攣しているようにそれを締め続けながら達して、止まらない。
「でもさっきみたいに抜いちゃうと気持ちよくなれないでしょ?」
そう、強すぎる快感にそれを引き抜いてしまった手はひとつに縛られ、ベッドの柵に留められた。
「ごめ…な…さい…!」
手が痛い。
暴れて泣いて、醜態を見せて、それでもほどいて止めてほしい程に苦しい。
じゅうだいめの後ろから冷たく見下ろす、あのひとの緑色の瞳に感情は見えない。
でもそんなことより、今は
「じゅうだいめ!あ、当たってるとこ…はげし…!」
叫びながら、出るものもなくなった自身がぱくぱくと小さな口を開きイッたことを知らせる。
「ねえ、このまま一晩放っておいたらどうなるかな?」
血の気が引いて眩暈がした。
「こんなに気持ち良さそうなのに、やめちゃうのもったいないよ」
「や…!じゅうだいめは…じゅうだいめの…俺に…」
早く。
欲しい。
そのために、今まで我慢してあのひとと…。
「ハヤトはいい子だね。オレの言うことはちゃんと聞いてくれる。
こんなにされてもオレのこと好き?」
「好きです!だいすき…!」
心もからだも、いつもじぶんはじゅうだいめを求めている。
それを不思議とも思わずに。
気が付いた時から。
じゅうだいめから与えられるもの全てが嬉しい。
もっと欲しい。
じぶんの世界はじゅうだいめがいないと成り立たないと思えるくらいに。
「なら、今度イッても起きていられたら、挿れてあげようかな」
「じゅうだいめ…!」
「耐えられるかな?頑張ってね」
そう言って、
微笑を浮かべたじゅうだいめは
大きく開いた脚の間で勃ち続けているじぶんの性器を左手でつよく握りしめた。
世界が白一色に染まり
音もなく崩れて。
堕ちる浮遊感と昇る高揚感の狭間で
ただじゅうだいめを
呼ぶ。
情事のあとのハヤトは何をされても起きない。
汚れた身体と顔を拭いて清潔な服に着替えさせ、抱きかかえている間にベッドメイクも終わる。
そこにそっと寝かせて額にキス。
「可愛いなあ、眠っている時は天使みたいだ」
先程まで涙に濡れていた頬には紅潮が僅かに残って、
色白の肌にその様はまるで桃の実のようでとても美味しそう。
だけど、いつまでもこうやって君を見ているわけにはいかない。
「この様子なら暫くは楽しめそうだな」
指先で赤く色付いた弾力性のある果実のような唇に軽く触れ、
視線を戸口に立っている右腕と称される人物へと移す。
「何か、言いたそうだね」
「…今回、俺は恋敵役ですか」
「うん、よく出来てたよ」
「…こいつ…結構頑固で、強い子ですね」
「いい子だろ?君みたいで」
「俺、こんなですか…?」
腕組みをして上目遣いに睨まれる。背は君の方が高いから、自然俯き加減で。
「昔はもっと…まあいいや。ところで」
「え?」
「今夜は、このあと君と過ごしたいな、久しぶりに」
あれ程欲しがっていたハヤトに与えず、目の敵にしている彼とその後やっちゃったって、
明日知ったら怒るかな?悲しむかな?
どんな反応を見せてくれるかな?
「貴方という人は…優しそうに見えて…」
「優しいよ!こんなに大事に扱ってあげてるじゃないか」
「大事?」
「この子が悦ぶ事や、気持ちイイ事たくさんしてあげてるし!」
「…本人は本当に望んで?」
「そうなるように仕向けているんだ。大丈夫だよ」
オレが手を差し出すと、
それにすがるように、小さな手が伸ばされる。
おいで。
さあ、早く。
かわいがってあげるから。
その無垢な瞳に映るのはオレだけ。
君を守ってあげられるのはオレしかいない。
真綿で首を絞めるようにじわじわと追い詰められ、
それでも笑うんだよ、君は。オレのために。
嗚咽を嬌声に変えて、
抵抗をする代わりに、自ら脚を開く。
それがいちばんの悦びだと信じてね。
どんなにされても大好きと言いなさい、
何を聞かれてもじゅうだいめがいいと言いなさい。
そうすればやさしくしてあげる。
君のために。
これからも。
ねえ、ハヤト?
<終>
※ 新シリーズ(汗)…?『祈りの〜』のあとのお話です…(20090809)