すきなところ 「獄寺くんってアクセサリー好きだよね。」 そう言って、彼の細い指にいくつもはめられた指輪を触る。 「あ、ゴテゴテ飾るの好きなんっスよ。」 胸元で揺れているのはクロスのネックレス。さりげなくコウモリの羽が付いてるみたいな?まあでもよく似合っているよなあ、…制服なのに。 学校帰りの道、今日は宿題を獄寺くんの家でする約束。 「髑髏系とかが好きだよね、デザインは。」 「…はあ、なんか昔っから何となく好きで。…そういや10代目の好きなものって何スか?」 「ん〜、獄寺くんみたいなの。」 「…はぁ?」 ビックリしたのか箱から取り出したばかりの煙草が一本、指の間からこぼれ落ちた。 「好きだよ〜、どことなく。」 「どことなくって何っスか?」 「じゃあ全部!」 じゃあって…と呟きながら落ちた煙草を拾う獄寺の手を、ぎゅっと掴んで引き寄せ、顔を近付ける。 「ソレ吸う前に、キスしよ。」 真っ赤になった顔もかわいいよ。 …自分は少し背伸びしての口付け。裏道の為か人通りはないが、ちゅ、と外国での家族同士がするような軽いキス。 「オレの背が伸びても、それ以上に獄寺くんも伸びたら身長差縮まらないな。もっと頑張らないと。」 「いやむしろ、俺的には10代目を見下ろしてこの腕の中にスッポリ納まるこのくらいが好きかも…。」 ぷちっ。 ツナの中で何かが切れた音はお互いに聞こえた。 「今日は帰る。勉強会は中止。」 「ししし失言でした、すんません!」 必死で謝る獄寺を背にしてツナはすたすたと歩を進める。 「山本にオレの家で宿題しよーって誘ってみよ。」 「あ゛〜!」 泣きそうな表情をしているであろう獄寺の姿は、背を向けていても目に見えるようだ。 でも、そろそろかな。 「肉まんと、からあげくんとアイスと、あと何か新製品のおかし。」 足を止めて振り返る。苛め過ぎても可哀想だし。 「獄寺くんは何食べるの?早く買っていこうよ。」 「…って、え、来てくれるんっすか?」 「嫌?」 「とんでもない!」 さあレッツゴーと今度は獄寺の方から腕を組み、ツナを引っ張ってゆく。 …ああ、楽しいな。 喧嘩して、仲直りして、笑って、一緒に遊んで。 いつまでもこうやって過ごせたらいいのに。 今のこの時を、君と過ごせてよかったよ。 思わずこぼれた笑顔に獄寺が反応する。 「10代目はよく笑いますね。」 「獄寺くんがいるからだよ。」 「こ、光栄です!」 大袈裟に喜ぶその姿を見て思う。 イタリアで悪童とかスモーキン・ボムなんて誰が呼んでたんだよと。 「ついでに夕ご飯も食べて帰ろうかな。」 「泊まってもいいっすよ!」 「それは、やだ。」 極めて日常的なひとときのおハナシ。 <終> ※
『うそつき』の後日談的日常編。ちなみに私は獄を好きなツナ(攻)が好き。(081126) |