遠い昨日の誓い(2)

 

 

 

非常にまずい。

絶体絶命とはこのことだ。

このまま獄寺くんにいつもオレがしてるようなことをされる気はさらさらないし、かといってこの体勢を入れ替えられるほどの力もない。

だからって簡単にこれこれこういうわけでした…なんて言いたくない。

ぎゅ、と掴まれた手首に力が入る。

「痛いよ、獄寺くん」

こう言えば、いつもなら謝りながらオレの上から飛び降りるんだけど…

「…」

無言のままゆっくり唇が重ねられた。もしかして、本気なんだろうか。

本気でオレに…。

この口付けは軽く、すぐに離れてくれたが行動は次の段階に進んでゆく。

獄寺くんは片手でオレの両手を頭の上でひとつにまとめて押さえつけ、空いた手でTシャツの裾をそっと、胸の上までめくり上げた。そして。

「ちょっと…もうそれ以上は…!」

思わず声を上げる。

するするとベルトを外され、下着ごとズボンをずり下げられ…。流石にここまでされたら抵抗もしないと。

「やめろってば!オレも怒るよ!」

だけど獄寺くんの手は止まらない。下半身が全て露になった今のままではもう絶対に外には逃げられない。

オレをこんなにしておいてから、改めて獄寺くんは自分のベルトに手を掛けた。カチャカチャとそれに付属している細いチェーンや飾りがぶつかり合う音が聞こえる。

「な!」

前を少しだけずらして取り出したソレは、驚いたことに既に大きくなっていて…。

「獄寺くん!何だよ!言うまで帰さないとか、そんなのと関係ないだろ!?」

焦って騒いでも、相変わらず口を固く閉ざしたまま行為は続けられる。

手だけでオレのと獄寺くんのモノを擦り合わせ、同時に扱く。無意識に腰が揺れる。声が出そうになるのは必死で我慢した。

お互いの先端から溢れ出る粘りのある液体を塗り込むように、それをローション代わりに使うように動き続ける手に、気持ちは勝手に高まってゆく。

当たり前だけど自分でするよりよっぽど気持ちがいい。でもだからといってこのまま弄られているのも癪に障る。

「も…やめろ…ってば!」

「…あ、これだけでは足りませんでしたか?一度イキたいですか?」

「なんで…そ…あっ!」

唐突に手が離れ、押さえつけられていた手も解放されたと思った時、体勢が変えられた。

「…っ…ん!」

唇を窄めてきつく吸い込むようにオレのモノを口に収める。そしていきなり強く全体を吸う。

絶頂はあっという間に訪れた。

そこに辿り着くと落ちるのは早い。

身体から力が抜ける。

でも、ソコはまだ解放されなくて。

今度は竿の部分を手で掴み、先端の部分をこれまた舌の先端だけでチロチロ舐められる。そんな些細なことで萎えたはずの自身が再び大きさを増すのが感じられ…。強く握られているままではソコが痛い、弛めてと声に出しそうになる。

剥き出しの弱点を集中的に攻められる。執拗に、徹底的に弱いところを攻撃する。

獄寺くんにこんな面があったなんてと思いながら、でも不思議と怖くはない。

それよりも気持ち良過ぎてこのまま流されてしまいそうになる。

…いやいや、だめだろ!そこは!

もっとと言いそうになる自分を抑えてそっと獄寺くんの頭に手を乗せた。

「ね、もうやめてよ…」

今度はその一言が効いた。

…と思ったのは大いなる間違いで。

身体を起こした獄寺くんのモノはさっきよりも更に育っていて、よく考えたらまだ君はイッていなくて、これからそれをどうする気?なんて間の抜けた質問なんか出来るわけもなく…。

「ああもう脱いじまえ…」

小声で独り言のように呟きながら、獄寺くんはするりとGパンと下着を脚から抜いた。

「ご、獄寺くん!」

やばい、やられる!挿れられる!

もう本気で諦めて、慌てて両腕で自分の顔を覆った。

 

 

痛みに襲われると覚悟したのに。

 

「んん…っ!」

「あ…れ…?」

 

オレの上で、オレのモノを飲み込んでいるのは獄寺くんの身体。いつもより強い締め付けを感じながら、あたたかい湿った道を進んでゆく。

「あ、獄寺くん慣らしてない…!」

窮屈に感じたのは入り口を解してないから…これでは辛いのは獄寺くんの方だ。

「ね、もういいよ!キツイんでしょ!?」

少し苦しそうな顔をしながら首を横に振って、更に腰を落としてくる。

汗が落ちてきて…違う、これ…涙だ。

「う…」

喘ぎ声じゃない、オレまで胸が締め付けられるような押し殺した声。

「獄寺くん、やめてよ!」

そんなにキツイくせに、今度は自分から動き始めて抜き差しを…。せめてイイ所に当たってくれたら…でもその為にはやっぱり痛みは付きまとう。

いつまでもこんなことしてたら可哀想すぎる…!もうだめだ…!

「ごめん!言う、話すから待って!」

 

ようやく動きを止めて息を乱しながら顔を上げた獄寺くんは

「はい」

と、嬉しそうに笑顔を見せてくれた。

 

 

ああ、やっちゃったのはオレだけど、獄寺くんにはやられたな。

負けを認めたオレに、今度はさっきよりも深いキスを落としてきたきみ。

だからオレからも手を伸ばしてお返しとばかりにその身体をつよく抱きしめた。

 

 

ふたりでシャワーを浴びてから、獄寺くんは冷蔵庫からよく冷えたコーラのペットボトルを出して手渡してくれる。この頃はいろんな種類や味の変わったコーラがあって、この前これ飲んでみたいなと言っていたやつをちゃんと覚えていてくれたんだね。

「ありがとう。いただきます」

一口飲んだところで本題に。

「さっき、あのまま10代目をヤってしまっても、多分耐え続けていたでしょう?」

う。図星。

「それに繋がっていれば10代目も帰れませんからね」

「…」

「だから…」

「わかったもういいよ!そうだよ!オレの痛みより我慢できないのは、獄寺くんが苦しそうな顔してるのを放っておくことだよ!」

「俺も10代目が悩んでいる姿をただ見ているだけってのは嫌っスよ」

「へ?」

「俺に相談して下さい、10代目の悩みや迷いを取り除きたいんです。10代目のお役に立ちたいんです」

なんというか、手段や方法はまあアレだけど、結局はオレの為だって言いたいのかな。

とりあえず約束は約束。

「あのね、怒らないでよ…」

そうして昼間山本に話したことを言った途端…

 

笑われた。

 

「この俺が10代目から離れるなんてありえません!ははは、何だそんな事だったんですか!もう俺すげえ心配で心配でたまらなかったんスよ!」

盛大に笑い飛ばした後で、キッ、と真面目な顔に戻り

「俺は一生10代目について行きます」なんて言うもんだから思わず言い返した。

「違うよ、ついて来ないの、一緒に行くの」

「は、はい!喜んでお供させて頂きます」

「だから違うってば!」

 

 

 

実は、山本達はオレ達よりも不安定な関係だと、ほんの少し思ってしまっていた。彼らに比べれば自分達の方が信頼関係を築けていると。

でも実際のところ、ものすごく固い繋がりを持っていることを思い知らされて圧倒されちゃったなんて、恥ずかしくて言えないよ。

ごめん、獄寺くん。君を信じていなかったわけじゃない。

 

 

「10代目、俺は貴方について行くと誓った日の事は昨日の事のように覚えていますよ。それは明日も明後日もずっと同じです。ずっと鮮明に、心の中で変わることなく、そしてこの気持ちが俺に力と勇気をくれるんです」

 

あ、こんな時に不謹慎だけど今の表情好きだな。

 

「こんな俺を認めて下さった方を、俺は全力で…」

「愛してくれる?」

「あ…?」

目が点になっても可愛いね。…って、あれ?オレ今なんて言った?

「あの、10代目…」

どっかの保健医ならいつも平気で言ってることだけど、オレまだそんなスレてないし…(自分で言うなと一人ツッコミしてみる)。

「も…もちろんです!喜んで…で、その、だったらあの続きは…俺が上でもよろしいんでしょうか…?」

「やだ、却下」

ええ〜と心底残念そうな顔をされる。もしかして、あの時嫌がらなかったらそのままオレの想像してた方向へ進んでしまったのかもしれない。でか、絶対駄目だけど。

「結局お風呂で抜いちゃった訳だし、今度はちゃんとベッドでする?『オレが上』で」

「あ、はいっ!」

そこんとこはきっちりと押さえとかないとね。

「ところで10代目、最初に仰った面白い話を聞かせて下さるってのは…?」

「よくそんなの覚えてたね。ああ、でもその話もしたかったんだよ!雲雀さんがね…」

「…まじっすか!?アイツも人間だったんっすね!」

予想通りの反応を返してくれた獄寺くんに少しほっとした反面、微かに背筋を走る嫌な予感。超直感ってやつがオレに何かを知らせてくれている。

だけど今はそんなのどうでもいい。目の前の大好きな人の方が大事だ。

大事なんだってば…!

 

 

 

 

「まったく、僕としたことがあの子に口止めするのを忘れるなんてね。…沢田綱吉、もしもそれを他人に公言していたらどうなるか…咬み殺されるだけじゃ済まないよ?」

翌日、登校してくるオレを雲雀さんが待ち構えていたなんて、その時は知る由もなかった…。

 

 

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     5927を期待された方、います?(20100910



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