遠ざかるひかり、夜が連れて来るひと

 

 

 

鍵のかかっていない扉。

高い所にある窓からは外の明るさが消えてゆく。

そしてその室内では、力の入らない指先でカリカリと何かを引っ掻く音が延々と続く。

 

「なんだ、逃げてないんだね、ハヤト」

いつの間にか戸口に立っていた人物の姿を目で確認する。

それは、伝統と格式のあるボンゴレファミリーの頂点に君臨するひと。

「元気ないね。まだ完全に抜けてないのかな?きついクスリだったからね」

それに対しての返事は、ぽとりと一粒落下した、涙。

昨夜の行為。

思い出すだけでも身体が震える。

泣きたくないのに、涙が溢れ出し頬を伝う。

思わず下を向くと、零れた水滴がシーツに次々吸い込まれてゆく。

「泣くほどよかった?」

声に重なり鍵の閉められた音。

顔を上げると、もうすぐそこにあのひとの姿。

「一度、ほどいてあげるね」

右手首と右足首をひとつに縛っていた縄の、きつかった結び目は容易く解かれて。

「今日はオレを汚さないでね」

弾んだ声。

「ね、誘ってよ」

 

このひとの手によって、自分の人格が完全に崩壊させられた昨夜。

 

「…して、下さい…」

「よく聞こえないんだけど」

搾り出すような声が震える。

「…俺を…キモチ良くさせて下さい…」

「どうやって?」

「貴方の…を…ここに…入れて…」

自ら脚を開いてみせる。

「俺を…いかせてほしいです…」

「うん、いいよ。また一緒に楽しもうね」

 

この言葉を覚えるまでどれほどのクスリと、玩具を使われたのか。

 

今日は、昨日ほど痛くないだろうか。

昨日ほど、苦しくないだろうか。

 

目を閉じると唇に触れるあのひとの指。

「最初は舐めて。でもあんまり大きくしちゃうと君の中に入る時、辛いのは自分だからね?」

「…はい…」

そうして饗宴が始まる。

 

 

…夜が連れて来るこのひとが、今の自分の

『保護者』

らしい。

 

 

 

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※ この前後のお話があります。続くというよりそれぞれ独立したカタチで出します。(20081212

 

 



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