うそつき (6) とりあえず。 興味ないとは言ったものの、そのうそは雲雀さんにバレバレで。 「10代目!寝ないで下さい!」 録画してもらっていたDVDを観ながらウトウトしていたオレに獄寺くんは叫ぶ。 こんな時、山本ならそっとしておいてくれるんだろうなと目を擦り。 「起きてるよ。」 そう答える。 「膝、貸して。」 「はい?」 「寝ないけど横になる。ここ、来て。」 斜め後ろに座っていた獄寺をすぐ横に呼びここに、と床をばんばんと叩く。 「10代目、目が据わって…。」 「…。」 「わかりました。」 子どものように、眠たいか、お腹が空くと不機嫌になる。 お腹は満たされたんだ、さっきのヤキソバパンで。 だから、眠たくなった。 「あの、続きは今度にします?」 「いやだ、今観る、絶対観る。」 「寝そうですが…。」 「寝ないよ!ひとりでは!」 もう訳のわかんないこと言ってるなと。でも止められなくて。 「一緒に寝ようよ〜、狭いけどオレのベッドで〜。」 「じゅ…10代目ぇ〜!」 焦って真っ赤になってるとこに、でも釘をさす。 「なんにもしないから〜寝るだけだから〜。」 がばっと起き上がり、その場に獄寺くんを押し倒す。 ふざけてとはいえ、この体勢は傍から見たらかなりやばい。 でも。 「細い、薄い。」 抱きついていたときにも感じていたが、獄寺くんは痩せている。 「床じゃ、キツイよね。」 「だだだ、だから…10代目…。」 「初めてのときは、ふかふかのベッドで…。」 してあげるね。 と、最後まで聞こえたかな? 上で寝てしまったオレを払い除ける事ができない獄寺くんは、リボーンが帰ってきた時えらく焦ったらしい。どんな言い訳をしたのか教えてはくれなかったけど。 山本に対するいわゆるコイゴコロみたいなでも違うなんていうのかともかくきれいな好きという感情とは別の物(なんだこりゃ)は、大事に取っておくのではなく、すっぱりと切り捨ててその分獄寺くんに回そう。ちょっとした、これでも浮気っていうのかな? 少し、ほんの少しだけ山本としてみたいな、と思ってしまったなんて。でもその気持ちを誤魔化すために雲雀さんに到底無理なお願いをして、断られたら諦めようみたいないろんな回り道をしてやっぱり駄目だったなあっていう言い訳を作る。 なんて往生際の悪い自分。 そんな想い全てを雲雀さんは見破っていた。興味ないの一言で片付けようとした言葉の揚げ足を取って。 うそをついたんじゃなくて、あの瞬間から切り替えた。 それをちゃんと判っているんだ、あの人は。 すごい、ほんとにすごい。 でも、負けない。 これからは。 日を改め、今日は結局最後まで観られなかったDVDをもう一度最初から鑑賞会。今度は獄寺くんの部屋で。 コーラにポテチにヤキソバパンに、ご丁寧に枕まで用意されている。変なところでまめというか何というか…。 「あの、俺やっぱいちばん好きなのは10代目ですよ、食べ物って言われても動物って言われても、まず『好き=10代目』っていう公式が頭に浮かぶんで。」 「獄寺くん…成績いいのに頭悪い人みたいだから、そんなの他の人に言わないでよね。」 「あと、その、今度ベッドを買い換えますんで…。」 もしかして…?と目を真ん丸くして見せたら案の定。 「ええと、今の少しスプリングが硬めなんで…柔らかめのやつに…。」 カーッと耳まで赤くなって、もう、なんてかわいいんだろ。 オレも、獄寺くんは食べたいくらい好きだよ。 じゃなくて。 「オレ、寝相悪いよ、広い?それ?」 そう言ってにっこりと笑って見せた。 <終> ※ 私の中で最甘なお話…。(20081124) |