闇への扉

 

 

 

 

 

服を剥ぎ取られ、全てが露になった身体中を這い回る生暖かい触手。その先からは粘り気のある液体が分泌され、触れた場所をべとべとに濡らしてゆく。

必死で逃れようともがいていると、触手の一部が口を抉じ開け強引に侵入してきた。首を振り、引き剥がそうとするハーレムの手は2本の触手によって背中に回されて自由を奪われ、口腔内にはとろりとした液体が注ぎ込まれた。それは芳香を放ち、嚥下されやすい程よい甘さを感じさせている。

ごくりと喉を鳴らす。

途端に全身がかあっと火照り、痛みにも似た快感が身体を駆け巡った。

これ以上飲んではいけないと頭では判っていても、そんな気持ちを上回る美味に抗えない。

飲み下す量よりも多い液体が口の端から零れる。苦しくて、でも飲まずにはいられない。

幾度かそれを繰り返すと、触手はぬるりと口から出て行った。

はあ、はあと荒い呼吸をする。無意識に涙を流していた。

触手は緩やかに両腕、両足を捕らえ身動きの取れぬハーレムのまだ幼いモノに狙いを定めた。強弱を付けて握り、扱かれる感覚に耐えられず頂点に達してしまう。

余韻を感じる間もなく今度は後ろの穴に何かが触れた。触手にしては妙に硬い。そう思った次の瞬間。

「…っ!」

声も出ない。硬直する身体。秘所にはとろとろした液体を垂れ流しながら動く触手。

「いた…い…。」

搾り出す声。

穴を無理矢理押し広げているが、まだ入っては来ない。細かく振動しながら太さを増す触手が、これ以上は無理だと思われるほどの入り口を作る。そして、その太さのまま一気に中に押し入った。

ハーレムは悲鳴を上げた。

触手は硬くなり、通る場所を傷付けながら進む。

気を失う直前、触手は中で弾けるようにいくつもの細い紐状に枝分かれした。

その一本一本が内側から激しく粘膜を刺激し、意識を飛ばさないように動き回る。

中の急所、触手はそこに張り付きハーレムの状態などお構い無しにただひたすらに刺激を与え続ける。その度に腰がビクン、ビクンと跳ね上がった。

同時に髪の毛ほどの細さの触手が一本、尿道に入り込む。それはするすると奥に進み、前立腺に到達すると、その場所でいきなり太さを増し尿道を取り囲む形のそれに向けて強い振動を行い始めた。

骨が軋むほど強く触手に巻き付かれ、その固定された体内で蠢く無数の悪魔の手。前立腺刺激により感じる絶頂で身体は仰け反り、口から泡を噴く。

目の前には幾度もフラッシュを焚くような光が見える。

頭の芯まで痺れる。

このままでは数分もしないうちに狂ってしまうだろうとハーレムは思った。

 

 

 

 

「効き目が強かったかな?」

モニターを見つめていたルーザーが言った。

別室に取り付けられたカメラが、ベッドに身体を固定され苦しむハーレムを映し出す。その周りは静かな闇。

「この新薬では快感は得られないようだね。どちらかと言えばバッドトリップかな?後で何が見えたのか聞いてみよう。」

「その前に血液と体液を採取してデータを取るんですね?」

「ああ、そうだね。それにしてもハーレムはいい研究材料になってくれているよ。そう思わないか、高松?」

 

 

 

 

苦しい、息が出来ない。

触手がじわじわとハーレムの首に巻きつき食い込んでくる。

体内では細かい触手が再びひとつになり、腸壁を圧迫しながら出入りを繰り返す。くちゃくちゃと水音が聞こえるのは、触手から体内に放出され続ける粘液が溢れているのか、それとも傷口からの出血によるものなのか。粘膜から吸収される液体のせいで、身体中が燃えるように熱くなっていた。

両足をM字に開かされ、内股を舐めるように動く触手。突き上げる塊。勃ち上がったモノには触手が纏わり吸い付くように絡まり扱き続けていた。

僅かに残ったまともな意識が最後の力を振り絞る。

 

助けてと、脳裏に浮かぶ兄の名を呼ぶ。

 

 

僅かな口の動きにルーザーは気付いた。

 

 

 

 

「今日はこの位にしておこうか。ハーレムにはまだまだ新しい薬の開発の為に頑張ってもらわないといけないしね。さすがにガンマ団員をこの実験台にはできないから。」

急にそう言うとルーザーはモニターのスイッチを切り、ハーレムのいる部屋へと向かった。慌てて後を追う高松が目にしたのは、口移しに解毒剤を飲まされているハーレムの姿。

「手足の拘束を解いて。」

高松の顔も見ずにそれだけ言い、再びルーザーは唇を重ねる。

虚ろだったハーレムの瞳に光が戻ってきた。

そうして自由になった腕で目の前の兄にしがみ付く。

「どうしたんだい?怖い夢でも見ていたの?」

優しく声を掛けながら震える身体をルーザーは抱きしめる。

すぐに言葉が出ないほど怯えて泣くハーレムには今まで何が見えていたのだろうと、高松はその様子を凝視する。

「もう大丈夫、忘れなさい。屋敷に帰ってゆっくり休みなさい。」

自分が与えた恐怖感など微塵も感じさせない物言い。

「だけど、また今度も手伝ってくれるね?僕の研究にはお前が必要なんだ。」

今日とて薬をひとつ飲むだけで、その効き目を調べるからといってこの研究室に連れてきた。いつもの部屋の奥にある、本来はルーザーしか入れない場所。自分以外の人間が入るのは初めてとの事に、高松はルーザーに少し近づけたかもと内心喜んだのだ。

だが、ハーレムには敵わないと思い知らされる。

 

自らの手で傷付けておいて、優しく手当てを施す。突き放しながら、見守る。

 

何故、ハーレムに対してだけこのような構い方をするのか。

他にもルーザーを慕うものは多いのに、あからさまにこの兄を嫌っているハーレムにだけ、執拗なまでに固執する。

 

「戦場に出たらこれより怖い目に沢山遭うんだよ。サービスと一緒に士官学校に入りなさい。」

返事は無い。

安堵感から既に気を失っているハーレムをルーザーは抱き上げた。

「今日はおしまいにしよう。高松、先に出なさい。」

「はい、…あ、採血…。」

「今日は終わりだ。」

ルーザーの言葉は絶対だった。

 

まだ自分は名前を呼んでもらえる。彼に必要とされなくなる方が怖い。

他人ではなく、ハーレムは実の弟だ。嫉妬の対象ではないと思いながら先に立って暗い部屋を出た。いくつかの扉を抜け、あとひとつドアを開ければいつもの研究室の中にあるルーザーの私室に出るという時、高松の足が止まった。

…背後から視線を感じない。今、彼は腕の中で眠るハーレムだけを見つめているのだろう。

何をしていてもルーザーの視線は冷たく突き刺さるように感じるのに。その目をこちらに向けようと躍起になる自分に比べ、ハーレムはルーザーの目の届かない所に逃げようとしている。

一瞬だが、悔しいと、ハーレムなどいなくなればいいという思いが心の片隅に浮かび、拳を握り締めた。

「高松?」

「はい!」

思わず大声を上げルーザーの顔を見る。

「やっぱり君の言うとおり、採血等は必要だ。どうせまだ目を覚まさないだろうから、もう少しここに残って出来ることをしていくよ。」

「では、お手伝いします!」

「君は向こうに戻りなさい。僕だけでしたい。」

完全な拒絶。その言葉で頭を殴られたようなショックを受け、静かに背を向け開閉のボタンに手を掛けた。

「そうだな、あと一時間もすれば僕も出よう。それまでは何があっても呼ばないように。」

「…はい…。」

一歩踏み出し振り返ると、その部屋の中で2人の姿は闇に包まれているように見えた。

 

 

 

 

 

閉ざされた扉の向こう。

「次は、物足りない位のじれったさが長時間続く薬を試してみようね。泣いて欲しがれば終わりにするが、お前は強情だから自分から来てと言ってくれるかな?」

ルーザーは手の中の小瓶の蓋を開けた。

 

 

 

 

 

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     『閉鎖空間』のラインで(ルーザーと高松が同い年という設定です)。ここはまた独立した世界で、この高松はハーレムが嫌いですよ〜。絶対敵わないライバル?みたいに。

 

 

 



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