タチウオにリベンジできるか? O川さんの巻

平成18年9月30日のタチウオ釣り大会で坊主に終わってしまったO川さんから
こんなメールが来ました。
I色様、私は先祖代々の狩猟民族です。
先日のタチウオ釣り大会で、I色様だけがタチウオを釣り、
私たちが坊主だったのは、狩猟民族としての名が廃ります。
もう一度チャンスをください。
決行の日は10月6日とします。
私はその日、山口へ出張だったため、行くつもりはなかったのですが、
O川さんのせっかくの挑戦状を断る理由もなく、いつもお世話になっている、
O川さんに釣りの極意を教えるため、山口から直接大島へと飛びました。
関東沖に台風並みに発達した低気圧の影響で北東の風が強く、
竿がふれない可能性がありました。
そこで、風を背中から受ける南西のポイントである出井港に行くことにしました。
出井港に着いた頃、O川さんから、仕事で遅くなるとの連絡が入りました。
よし!夕まずめに1本釣っておこうと早速一投目。いきなり浮きが沈み、
一本目をつり上げそうになりました。小さなタチウオだったので、クーラーの中に
直接入れてやろうと思い、タチウオをぶら下げたまま歩いていると、突然針からはずれ、
あろう事か海中へと逃げていってしまったのです。
「まあ、いいか。今日は入れ食いだからいくらでも釣れるさ・・・」
と思っていましたが
その後いっこうに釣れなくなりました。
夕まずめも終わりになった頃、風が強くなってきました。私の浮きは軽いので
風にまけて遠投ができなくなってきました。
ちょうどその頃、O川さんが大島の釣具屋に到着したとのメールが来ました。
遠投用の浮きを買ってもらおうと、返事を書いていると、
他の釣り人達がどんどんタチウオを釣り上げるではありませんか。
私は、O川さんを焦らそうと
「大漁だ、大漁だ。いまタチウオの群れが来ているからみんな大漁だ!」
と、誇大表現のメールを送りました。
釣具屋でえさと浮きを買ったO川さんは、大急ぎで車を飛ばし、
あっという間に出井港に到着しました。
O川さんは、到着するなり、
「今日は釣れるまで帰りませんからね。
狩猟民族としてのプライドをかけて戦います。」
と宣言しました。
その宣言の直後、私の浮きが沈み、余裕で一本ゲット。
立て続けに二本目もゲット。
O川さんは焦っています。
何が原因で釣れないのだろう?たな?仕掛け?えさ?
すべてI色のものとほとんど同じです。
私は余裕で、O川さんにハンデをあげようと、
車に乗ってコーヒーとタバコを買いに行きました。
帰ってきてからO川さんに聞くと、一回だけ浮きが沈んだけど、
取り逃がしたとのことでした。
しばらく、当たりの来ない時間帯がやってきました。
私の二本のうち、一本をO川さんにあげて帰ろうかと思って提案すると、
「他人の釣ったタチウオはいりません。
今日はタチウオを持って帰るために来たのではなく、
タチウオを釣るために来たのです」
とかっこいいことを言います。さすが狩猟民族です。
そんな意気込みが太刀魚に伝わったのか、彼もようやく一本ゲットしました。
弟子の活躍に私も、自分のことのように喜びました。
そして、すぐに二本目をゲット。なんと、私の釣った数と並んでしまいました。
焦った私はやる気を出し、三本目をゲットしました。
しかし、O川さんも三本目をつり上げ、差は開きません。
静かに夜も更けてきます。
また当たりが来なくなりました。他の釣り人もどんどん帰っていきました。
そんなとき、女房からメールが来ました。
あとどれくらいで帰りますか?
私は、あと一時間ぐらい釣って帰るという返事を書きました。
すると恐ろしい返事が返ってきました。
なんのために?
たったこの一言のメールに、私は動揺しました。「お、怒っている・・・・」
何のために釣るのかと言えば、先ほどのO川さんの名言にあったように、
「タチウオを持って帰るためではなく、釣るために来た」のです。
タチウオを食べたいのなら魚屋で買った方が手軽に手に入れられます。
そんなことすら分かっていないのか・・・と悲しくなりました。
さて、こんなメールにもめげず、浮きを見ていると、
ようやくタチウオの群れがやって来ました。
浮きがぽこぽこ沈みます。しかし、なかなか食いが悪く、つり上げるまでには至りません。
つづく