クリスのパーソナルトレーニング体験記(上)

レポート/村重典昭

ハワイアン・ハリケーン


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このホームページはアイアンマン誌に連載された僕の記事を インターネットでも見られるように公開したものです。(^^)/

ただし、少し加筆訂正しています、 悪しからず。

2000年11月記(2001年2月訂正)

クリスと僕 2000年 夏 The Gymにて


自分はボディビル以外の趣味はパソコンしかない。 だから、スキーもダイビングもしないし、テニスもしない。それだけ、ボディビルにお金を かけることができるという見方もできるが、サプリメントなどの情報も今ひとつはっきりと しなくて、ミールリプレイスメント(MRP)くらいしか摂っていないのが実状だ。それなら、 いっそのこと、有名なビルダーに指導を受けようと考えた。しかし、ステロイドユーザーに 指導を受けるのも何だか気が乗らない。そうなると、スキップ・ラ・コアかクリス・フェイルドか。 カリフォルニアよりハワイのほうが近い。よし、クリス・フェイルドに決めた!ハワイに行こう!  しかし、決めたはいいが彼はパーソナルトレーナーをしているのか。アイアンマン誌の浦田編集長と 以前より親しくしていただいているので、メールで聞いてみると、彼のホームページを教えてくれた。 早速アクセスして、彼にEメールを出してみた。返事はすぐに来た。やってくれると言う。自分で、 ホテル5泊とエアーチケット代で11万5千円のコースを福岡の旅行会社で見つけた。ホテルはワイキキ。 他の選択肢もあまりなく、これに決めた。7月5日の出発となったので、予定を空けておいてほしいと クリスにEメールを出して、OKの返事をもらった。全て準備は整った。が、クリスのパーソナル トレーナー料金は3日間連続で、一回80ドルとのこと。何かの記事で読んだ記憶があるのだが、 カリフォルニアでは有名なトレーナーでも50ドル程度と書いてあったような。少し高いかなぁと思ったが、 とにかく、ホテルに着いたら電話をくれと言われた。

ハワイ到着(7月5日)

7月5日、午前9時にホノルルに到着。しかし、トラブルで、ホテルに 着いたのは午前11時をすでに回っていた。すぐにクリスに電話をしたら、『The Gym』に12時半に来てくれとのこと。(註 現在はThe GymはGold Gymになりました(^^;)...でもクリスは指導して います、御安心を(^^)/)「楽しみに待っていた」と、とても友好的な感じであった。とにかくホッとした。 やはり、英語しか話せない有名ビルダーにどんな感じで扱われるかがいちばん不安だった。ところが、ホテルの セイフティーボックスが壊れていて、その交換に30分もかかってしまい、タクシーで駆けつけたものの、10分の遅刻。 10ドルのタクシー代も空しかった。初っ端から最悪の展開になってしまい、クリスには平謝りしたが、彼は「気に するな。じっくりやりたいので、午後5時半に変更しよう」と言われて安堵した。いちなり遅刻という失態を演じて しまい最悪の気分だったが、とりあえず気を取り直し、わずかな時間だったが彼と話をした。仕事でも多少英語を 使っているので、とてもそれが役に立った。

クリスは、半分が日本人の血で、残りの4分の1がフィリピン人と中国人 だそうだ。身長は163cm、今の体重は約80kg。今年は大会には出ないで、来年、秋田で行なわれるワールドゲームス 向けて気合いを入れているとのことだった。僕が本誌のためにクリス自身の取材もさせてほしいとお願いしておいた ので、なんと3週間減量しているとのこと。生真面目な性格を伺わせた(クリスのトレーニングや食事などについて は次号に掲載予定)。こんな話の合間にも、ジムのメンバーたちが「クリス、元気かい!」と話しかけ握手してくる。 彼は笑顔を全く絶やさない。ちなみに日本ではクリス・フェイルドと呼ばれているが、彼の名刺には“ クリス・フォールドー”と書かれており、どうもそちらのほうが正しいようだ。The Gymには一日に200〜300人がトレーニングに来るが、老若男女様々である。クリスはクライアント(生徒)を40名ほど 持っているようで、一回80ドルで指導していて、頻度は週二回という人がいちばん多いとのこと。アメリカ人は 自分の健康には気をつかうほうだと言われているが、週に約1万7千円もかけるとは凄いことである。当然、 クリスに支払う以外にジムの会費もかかるだろうし。

クリスの名刺(奥さん作成) (注)名刺の電話番号、 FAX番号は、わざと隠しています。

彼の今日の午後の一人目のクライアントは55歳の男性で、ベトナム出身の 人だった。クリスの指導風景を見学させてもらったが、彼の指導は真剣そのもので、クライアントに気合いを入れさせ、 巧みに気分を乗らせていた。彼のパーソナルトレーナーとしての人気の一端を垣間見た気がした。  クリスに、日本から2ヵ月ほどカイロプラクティックの勉強に来ている大阪出身の山下健太郎君を紹介された。 彼は英語がまだ苦手で、とても日本人と話したかったそうで、ハワイのことをいろいろと僕に教えてくれたが、 中でもバスの使い方は非常に役に立った。バスならたった1ドルでオアフ中を回れる。ホテルとの往復でもたったの 2ドル。山下くんといろいろ話しながら、ジムのジュースバーで、プロテインジュース(約5ドル)を飲んだ。 ここのジュースバーではいろいろな組み合わせが楽しめる。例えば、まず基本のジュースを決める。アップル、 クランベリー、パイナップル、オレンジ、ピーチ、パパイヤ、ボーイズンベリーがある。次に凍ったものの中から 一つ選ぶ。無脂肪ヨーグルト、オレンジシャーベット、ラズベリーシャーベットがある。さらに果物を2つ選ぶ。 イチゴ、ラズベリー、ブルーベリー、バナナ、ピーチ、マンゴ。さらに、サプリメントの中から2つ。ホエイ、 ビタミンC、小麦胚芽、蜂蜜、カルシウム、ビーポーレン、クレアチン、レシチン、ピーナツバターなど。 追加も可。中には自分のプロテインやMRPを混ぜて貰っている人も居た。  午後1時から、クリスとパートナーのデビーさんの胸と上腕三頭筋のトレーニングが始まった。デビーさんは5週間後 にラスベガスで開催されるフィットネス大会(Mr.USAと同時開催)に出場を予定しているため厳しい減量の真っ最中で ある。クリスのトレーニングについては次号で詳しく記述する予定だが、とにかく、交代で休みなく連続して トレーニングしている。10レップスできる程度の重量で、4セット程度こなしていた。フォームはほぼストリクトだが 、厳格なまでのストリクトフォームという感じはしない。フォーストレップスは最後のセットで1〜2レップス入れる 程度だ。かけ声はかなりデカい。クリスがどんどんパンプして大きくなっていくのが目に見えてわかる。特に三頭筋は 凄まじい。50cm近くあるのではないだろうか。トレーニングを終えたクリスに「僕はやはりとても疲れて時差ボケも 酷いので(機内ではほとんど眠れず)、今日のトレーニングは無理のようだ」と言うと、クリスもわざわざ日本から来た 人に焦ってトレーニングさせたくないと、快く同意してくれた。そして、トレーニングはできれば、自分と同じように 4分割で指導したいと言われ、日曜日も指導してくれることになった。有り難かった。そして、土曜の夜には一緒に 夕食を食べようと言ってくれた。3時半からのクリスのパーソナル指導を少し見学したが、彼は生徒をトレーニング に集中させるために、プレートの交換はクリス自身が行なっている。さすが80ドルだけのサービスは欠かさないなぁ、 と思った。

ジムを後にして、山下くんに連れられて、ワイキキのホテル街に行く バスに乗せて貰った。乗るときに1ドル支払うシステムで、前乗りである。20分ほどでワイキキの中心街に到着した。 ホテルの近くにインターネットカフェを見つけた。日本語対応WindowsOSで、早速、本誌の編集にもメール出した。 その日は、時差ボケ直しのメラトニン(ホテル近所のスーパーで購入)を飲んで、午後7時には床についた。 なんといってもクリスの指導は明朝8時からで、トレーニング部位は胸と上腕三頭。ちなみにクリスは、 毎朝4時には起床し、5時にはすでにジムで指導を始めていることも度々らしい。夜は午後8時には寝るそうだ。 そういったクリスの生活面についても次号で書く予定である。

The Gymの外観...現在はGold Gym Honolulu

二日目(7月6日)

夜中に何度か目が覚めたが、午前6時前に起きて、MRPを50gほど摂り、 パンを食べた。山下くんの指示では、2番か13番のバスで、The Gymのあるサウスストリートに行けるとのことだったので、13番バスに20分ほど乗り、クイーンズ病院前で降りた。 500mほど歩いてジムに到着。約束の8時まであと15分ある。今日は遅刻せずにすんだ。ジムの受付でクリスの くれたパスを見せて、ロッカー室へ。こちらのロッカーでは、自分で鍵を持っていく必要がある。前日にチェック していたので購入しておいた。以下の右端の写真を参照。アメリカだけにやはりジム内は土足。 念のためトレーニングシューズを持参したが無駄だった。それでもやはりトレーニングベルト、ストラップ、タオル、 タンクトップ、スパッツなどは必携だろう。あとはシェイカーとMRPを持って行った。そういえば、クリスの話に よると、日本にゲストで招かれたときに、ジム内が土足厳禁であることを知らず注意されて驚いたそうだ。 クリスから事前にもらったパスにはジム使用料の15ドルも含まれていて、余分に支払わなくて助かった。 それならば80ドルは安いかも。クリスはきっちり時間どおりに登場。早速、トレーニングに入る。

ロッカーと鍵

まずは胸から。僕は、大胸筋が弱点であるとあらかじめEメールで伝えて おいた。最初は大胸筋全体に効かせるダンベル・ベンチプレス。フォームはオーソドックスで、ブリッジを軽くする 程度で、じっくり効かせろと言っていた。ダンベルはツイストしないで、そのまま挙げる。深く降ろして大胸筋を ストレッチしろと言われた。ウォーミングアップの重量は、僕は普段、本番セットの半分程度の重さにしているが、 クリスは2.2kgしか軽くしない(重量については10ポンドが4.5kgという感じで訳していくので悪しからず。 5ポンドは2.2kgとした)。僕はいつもは32.5kg程度で行なっているが、クリスの指導は18kgで10レップスの ウォーミングアップを1セット。20.2kgにダンベルを持ち替えて10レップスを4セット。10回できなかったら 補助された。一つ種目が終わると、水を一口飲めとしつこく教えられた。彼は「mizu、mizu」と何度も言っていた 。セット間には飲んでいない。続いて、僕の最大の弱点である大胸筋下部だ。クリスはディップスを採用した。 肘を横に張り、膝を曲げて、前に出すように指示された。脚を後ろにはしないようにと注意を受けた。しかし、 そのフォームでのディップスはかなり辛く、10レップス×4セットをこなせず、8レップス、6レップス、 5レップス、4レップス+2レップスの補助という具合だった。とにかく、横から掛け声をかけてくれる。 続いて、FLEXマシンでのインクラインプレス。大胸筋上部だ。バーの位置としてはかなり高く、 顎のラインである。47kgでウォーミングアップし、54kg、47kg、41kgとメインを3セット、それぞれ10レップス ずつ行なった。できなければ補助が入る。この種目では特に指示はなかった。次はケーブルクロス。大会前で なければダンベルフライを採用するとのこと。実は8月6日に行なわれるミスター山口に出場を予定しており、 すでに5kgほど減量して、あと2〜3kgといった状態だった。僕自身はローカル大会の決勝10名のボーダー辺りの 仕上がりが精一杯で、そんな自分を改革するためにハワイまで来てクリスの指導を請うことにしたのである。 さて、ケーブルクロスでは上体をやや前傾させて立ち、片方18kgで、8レップスを3セット。 次にバーティカルプレスマシン。いちばん手幅を狭く握って、大胸筋の中央を狙う。 とにかく素早く動かすように言われた。36kgで12レップス。

続いて上腕三頭筋。クリスの長所と言える部位である。まずは、 プレスダウン。僕は日頃、40kg弱程度でやっているが、25kgで8レップス×4セット。ウォーミングアップは 無かった。もしかしたら、この種目自体が、次の種目のためのウォーミングアップだったのかもしれない。 次はクリスのいちばんのお勧め種目であるオーバーヘッド・ダンベル・エクステンション。肘を閉じるように して行なうように指示された。しかし、僕にとってこの種目は肘が痛くなったり、ダンベルで頸椎を打つので 怖いと言ったら、頸椎をクッションで、守ってでもやるべき三頭に良い種目だと言っていた。18kgで8レップスの ウォーミングアップ。本番セットは20.2kgで8レップス×3セット行なった。次はベンチにクロスになっての リバース・プッシュアップ。負荷は自分の体重のみ。素早い動作で12レップス×3セット。肘を一瞬ロックする まで上げる。

クリスは週に4回のトレーニングを行なうが、毎回、腹筋かカーフの どちらかを交互にやるとのこと。僕も今回は腹筋。まずは、ローマンチェアでシットアップ。動作は身体を丸める ようにしてクランチ的に行なう。限界回数を3セット。続いて、レッグレイズを同様に3セット。素早く動かせ と言っていた。最後に水平で、クランチを同様に3セット。1時間で終了となった。クリスもトレーニングは パートナーと組むと1時間程度だが、一人だと45分しかかからないと言っていた。とにかく、重すぎない重量、 少し多めのレップスで多種目のHigh Intensityのトレーニングを強調していた。

明日のトレーニングは午前9時45分、部位は背中と決まった。 早い時間帯のほうが時差ボケの僕には助かる。トレーニング後にまたMRPを摂り、暇つぶしに近所の ワールドジムを訪れてみようと思っていると言うと、クリスが車でわざわざ送ってくれた。ワールドジムは、 もともとThe Gymがあったところに作られたそうで、クリスはそこでのパーソナルトレーナーも頼まれたが、The Gymがとても気に入っていて、断ったそうだ。ワールドジムもかなり広いが、The Gymより閑散としていた。The Gymでは、30名ほどがその時トレーニングしていたが、ワールドジムでは5名ほどだった。 The Gymとワールドジムの間に2軒のサプリメントショップがあり、一つはThe Gymの隣。「ボディビルディング・サプライ・カンパニー」という名前で、先週ハワイを訪れたフレックスも 来店したということだった。メインはバイオテストの商品だったが、他社製品もそれなりに揃っていた。 もう一軒は、ちょうど2つのジムの中間にある。店の名は名前は忘れてしまったが、リー・プリーストが 看板のプロ・ラボ社の製品をメインにしていた。ちなみに、The Gymでは、サプリメントはジュースバーで飲めるが、販売はしていない。The GymオリジナルのタンクトップやTシャツ、キャップ、トレーナーだけだ。“自武”というロゴでTシャツを 売っていて、笑ってしまった。多分、”ジム”のしゃれ。かっこ良いとはとても思えなかったが。

三日目(7月7日)

いつものように、バスに乗って、The Gymへ。午前9時45分、クリスの指導で背中のトレーニングを開始した。

まずはラットマシン・フロントプルから。手幅は普通のワイドグリップ。 クリス自身は使用しないが、ストラップを使用することを勧めていた。ウォーミングアップは、今回は2セット。 本番セットでは63kgの重量で8レップス×3セット。顎より下まできちんと引ききるように指導された。 次は胸の位置のパッドで身体を支えるタイプのTバーローマシン。35kg程度で3セット。特に指示はなし。 次はフロント・チンニング。ナロー&パラレルバーをつかって自分の体重のみで限界回数を2セット行ない、普通の ワイドグリップでも1セット。広背筋の種目の締めくくりは、斜め上から引くタイプのハンマーストレングスの ラットプルマシンで、10レップス×3セット。  次は下背。ハイパーバック・エクステンションとリバース・レッグレイズのスーパーセットを10レップスずつで、 3セット。リバース・レッグレイズはハイパーバックの台を逆向きに使い、骨盤をパッドに乗せて固定し、 リバースレグレイズを行なう。動作中はどちらも、下背のクリスマスツリーに気持ちを集中して、さらに大臀筋も ハムストリングスも収縮させるようにと指示された。慣れない種目のせいでやや腰痛気味。

続いて僧帽筋。クリス自身は、僧帽筋を発達させすぎるのは、なで肩に 見える原因になるため最小限のトレーニングにとどめているとのことだった。ダンベル・シュラッグを片方27kgで 10レップス×2セットと、25kgで10レップス×2セット。太ももの前から斜め上に引くやり方と、太ももの真横 から真上に上げるやり方を半々で行なった。とにかく、バリエーションもトレーニングには重要な要素だとクリスは 語っていた。

続いてカーフのトレーニングは、ドンキーカーフマシンで、八の字に 足先を狭めるやり方で、180kgで12レップス×3セット。同様に、シーティッドカーフマシンで、35kgで 12レップス×3セット。  ところで、セット間に何度もポージングをさせられた。マッスルコントロールにはぜひお勧めだそうだ。 明日のトレーニングは午前9時から。トレーニング部位は脚。

四日目(7月8日)

ついに、クリスの最大の長所とも言える脚の指導を受ける日がやってきた。 後日談だが、このトレーニングは凄まじくて、帰国後一週間経ってもまだ大腿四頭筋の筋肉痛が取れず、階段の上り 下りが上手くできないほどだった。

午前9時からスタート。まずはレッグエクステンション。ウォーミング アップ1セットの後、メインセットを2セット。クリスによると、脚はレップス数を12回以下にはしないそうだ。 太さではなく、セバレーションやカットが大事だと言っていたが、クリスの脚は太さも物凄い! なお、脚のトレーニングでは息が切れて、吐いてしまい、記録を正確に記せなかったのでご了承願いたい。 次は45度レッグプレス。膝は開かず、足先も平行で、膝が胸に当たるまでのレンジ。200kgで15レップス×3セット。 このあたりで息が切れてきた。いつもは300〜320kgで8レップスを目安にやっていたため、200kg程度の重量でも 15レップスやると息が続かない。続いて、30度(かなり寝た感じ)のハックスクワットマシン。尻が踵が付くまで 下ろす。60kgで12レップス×3セット。本当は15レップスの指示だったが、それがこなせず12レップスになった。 この段階で気分が悪くなり思わず嘔吐してしまった。彼のクライアントは、最初の脚のトレーニングではみんな 吐くそうである。少し休んで、ライイングレグカールをウオームアップ1セット、本番2セット。本来なら本番は 3セットなのだがこれもこなすことができなかった。さらに、シーティッドレッグカールを2セット。 最後にスティフレッグド・デッドリフトを3セット。ハムストリングスの3種目はすべて12レップスを 目安にした。しかし、ハムストリングスのトレーニングを開始した時点ですでにフラフラの状態で、 あまりにも気分が悪くて集中することができなかった。

最後の腹筋はクランチだけを15レップス×2セットこなし、もう他の 腹筋種目はバテてできなかった。30分ほど横になってようやく回復。多くのジムのメンバーが「Leg Day!」と笑いながら声をかけてくれた。みんなクリスの洗礼を受けたのだろう。

トレーニングを終えて、クリスは僕を、地元のボディビルダーたちが 集うレストラン、アイ・ラブ・カントリー・カフェに連れていってくれた。場所はアラモアナショッピングセンター のホノルルと反対の角で、山側に接している。レストランの壁にはビルダーの写真が数多く飾られていた。 アーノルドやマタラゾやプリーストなどの写真もあった。このレストランの広告にはクリスがモデルで出ている そうで、また、ハリケーンスペシャル(8.95ドル)というクリスの独自メニューや、ボディビルダースペシャル(8.50ドル) というのもある。カリフォルニアのファィヤーハウスをイメージしていただければわかりやすいかもしれない。 クリスはハリケーンスペシャルをご馳走してくれた。これは、ご飯が普通の茶碗大盛り程度、茹でた野菜(ブロッコリー、 ニンジン、セロリ、紫サツマイモ)、焼いた七面鳥がセットになっていてビネガーや醤油で味をつけて食べるように なっている。これにダイエットコーラ。少なくとも僕にはかなりイケてる味だった。プロテインシェイクなどの ドリンク(3.75ドル)もある。

そこでの食事には、クリスのクライアントである二人の女性も同席して いたのだが、その一人がいきなり「日本では豊胸術は一般的か」と聞いてきたので、わからないと答えた。The Gymにも何人か、痩せているのに巨乳の女性がいたが、その人達はほとんど人工だそうで、パックに食塩水などが 入っているそうだ。クリスはその手術には反対だと、こっそり言っていた。とにかく、「何でもナチュラルが いちばん!」とクリスは語っていた。彼の奥さんもナチュラルな胸だそうだ(笑)。しかし、とにかく、外見に気を つかい、お金をかけるアメリカ人の一端を垣間見た感じがした。

アイ・ラブ・カントリー・カフェのメニューと外観

その後、クリスと共に、アメリカでは有名なサプリメントチェーン店の マックス・マッスルを訪れた。ここの店員さんは、クリスのクライアントで、友人だそうだ。彼はバンタム級で ミスターハワイ州のタイトルを持っていて、今年は8月のミスターUSAに出場を予定しているそうだ。 一度ホテルに帰り、しばらくして、クリスは奥さんのトレーシーと一緒に夕食に迎えに来てくれた。トレーシーは 100%沖縄の血を引く日系2世である。クリスと結婚して8年になるそうだが、クリスが世界大会のタイトルを 獲得して引退するまで、子供は我慢してほしいとクリスに頼まれているそうだ。ちなみにクリスは今年34歳になる。 一緒に寿司のバイキング(アメリカでは、食べ放題形式をバフェという)に連れて行ってもらった。今日で撮影は 終わったので、クリスはいろいろと食べまくっていた。余談だが、彼は大会の翌日だけは何でも死ぬほど食べるが、 その次の日にはもう、いつもの食事に戻しているという。つまり、ご飯か焼いたポテトと、ターキーか鶏の胸肉か 牛の赤身か卵の白身と、茹でた野菜などだ。詳しくは次号で紹介する予定である。

クリスは、廣田選手のことをとにかく気にしていた。フィンランドで 負けたのがとても悔しかったようで、「絶対リベンジする」と言っていた。クリスは日本の大会のことも よく調べているようで、合戸選手の事も知っていた。僕は田代選手もマークしないとだめだとアドバイスして おいた。彼によればアジア人の体格では70kg級がベストだろうということだった。それより上の階級でアジア人が ミスターユニバースで優勝するのは無理ではないかというのが彼の考えのようだ。

五日目(7月9日)

日曜日は、彼は午前中しか働かないそうだ。とは言っても、裏を返せば 彼がジムに行かない日は一日もないというわけである。トレーニングはしなくてもクライアントの指導にはちゃんと いくわけだ。

午前11時から、最後になる肩と上腕二頭筋のトレーニングを開始した。 まず、スミスマシンによるフロントプレス。ほぼ垂直にしたベンチを使用。ウォーミングアップ1セットの後、 本番セット30s位を3セット。各セット10レップスずつ。特に指示はなかった。手幅も肩幅程度。しっかり降ろす が、肘は伸ばしきらないなど一般的なもの。続いてサイドレイズ。この種目をやる際、僕はいつも上体がやや前傾 になるようにして行なっていたが、クリスには垂直に立つようにと指示された。あとは肘を高く保つ感じでおこなう。 9sで、10レップス×3セット。さらに三角筋後部に、リヤ・サイドレイズマシン。日本にあるマシンとそれほど 変わりはない。かなり後ろまで引く感じ。この種目とスーパーセットで、ビハインドネックのラットプルの特殊な 種目を行なった。この種目では肘は半分しか伸ばさなようにし、肘を下に引くのではなく、斜め後ろに引いて、 三角筋後部に効かせる。下手な人がやるハーフレンジのビハインドネック・プルダウンと言えば多少は理解して もらえるだろうか。各10レップスずつをそれぞれ3セット。最後に三角筋全体を刺激するためか、カーフレイズ マシンを使っての、スタンディングショルダープレス。肩を付けるパッドを持って挙げる。10レップス×3セット。 最後のセットは5レップスずつのドロップセットを3セット。

続いて、上腕二頭筋。まずはケーブル・スタンディングカール。 片手ずつ行なった。多少、肘が前後に動くのは良いようだ。ウォーミングアップで10レップス×1セット、 本番では13s位で、10レップス×3セット。本番での重量は毎セット同じ重さで行なう。次はEZバーでの スタンディングカールを10レップス×3セット。続いて、ハンマーカール。オルターネイト・スタイル (左右交互)で行なった。左右各8レップスずつで、3セット。

更に続けて前腕のトレーニング。ベンチの端でバーベルを持ち、 普通にリストカール。サムレスグリップ。12レップス×3セット。そして、またまた腹筋のトレーニング。 ローマンチェアでのシットアップとレッグレイズのスーパーセットを10レップス×3セット。さらに、 水平な所で、クランチを素早く15レップス×3セット。

これですべてのトレーニング指導が完了した。何とも感無量であったが、 印象をまとめると、

1.基本的にはボリュームのトレーニングである

2.中等度の重さでやっている

3.インターバルはかなり短い

4.いろんな種目で多角的にやる

という感じであった。かなりオーソドックスなトレーニングである。

今日はトレーニング後、クリスの家に連れていってもらった。 ジムから30分くらいはかかる。かなり通勤は大変そうで、来年には引っ越したいと言っていた。 パーソナルトレーニングは3年前から始めたそうで、最近では安定した収入が得られているということもあり、 指導にも気合いが乗っている時期なのかもしれない。さらにビジネスを展開して、彼が家を早く買い換えられる ことを祈る。何しろ、ハワイはアラスカ州に継いで、アメリカでは2番目に税金の高いところだそうだ。 クリスの家は、いわゆるアメリカで言うタウンハウスで、2つの家が横でくっついているタイプのものだ。 普通は上下は一人のものだが、彼の所は下にも別の住民がいたので、いわゆる2階建ての大きいアパート みたいな感じだった。その区域で共有するプールや駐車場があった。とてものんびりして良いところだった。

部屋の一室がサプリメントのショップになっている。商品はきれいに 陳列されており、Parrillo社というところのサプリメントがたくさん置いてあり、ツインラブのもも多数あった。基本的には この2社のサプリメントを扱っており、サプリメントショップより安く売っていると言っていた。日本からの注文 も受けたいということで、帰国後、僕が彼のサプリメント、トレーニング本、写真、Tシャツ、タンクトップ、 ポロシャツの販売のホームページを制作したのぜひ見てほしい(サプリメントは、彼が現在使っているものだけを載せています )。

彼の自宅ではいろいろなビデオを見せてもらった。特に素晴らしかった のはミスターUSAで優勝した1993年のものと思われるが、彼の仕上がりは最高で完璧な優勝であった。 また、彼が感激のあまり優勝のトロフィーを揺すったら、バラバラに壊れたというシーンが映っていて、 とても可笑しかった。彼もこのビデオは楽しくて、初のビッグタイトルで、お気に入りのようだった。 ちなみに、ちゃんとプロモーターから代わりのトロフィーを貰ったとのこと。ポージングする彼を初めて見たが、とてもうまい。いわゆるラブラダや マッカウイの様な雄大な感じである。ゲストには打ってつけだし、ナチュラルなので何ら問題はないはずだ。 JBBF、JPC、NBBFの大会関係者の方にはぜひとも検討して いただければと思う。 また、ゲストと共にセミナーの申し込みも受け付けている。彼曰く「自分はかなり安くゲストをするので、 リーズナブルだ」ということだ。さらに彼は、希望があれば『クリス・ハワイアンハリケーン』のマッスル キャンプを企画するとも語っていた。興味のある方は別欄を参照の上、ぜひご連絡いただきたい。  最後に、彼は日本でのビジネスパートナーを探している。東京か大阪近郊の方が希望で、少し英語とEメールが できれば十分だと思われる。僕は自分の仕事があるため、ボランティアで、暫定的にマネージャーをしているに 過ぎないため、僕への手数料は当然不要。突然宣伝になってしまったが、ぜひ皆さんにはご検討いただきたい。 以上が、僕のハワイでのトレーニング体験記である。次号ではクリス・フェイルドのトレーニングや食事に ついて取材してきたことを紹介する予定。お楽しみに。


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