瞳を閉じて見えるもの(1)

 

 

 

本当は泣かせたいわけじゃない。

笑ってほしい。

オレに笑いかけてほしい。

君の笑顔が見たい。

そのために、

今していることはそのことのために。

 

感情も露にオレを拒むのも、

表情を失った虚ろな瞳でオレに従うのもどちらも嫌だ。

君が欲しい。

自然な君が欲しい。

 

人はある時ある場所である人に出会う。

オレは君に出会ってしまった。

そう、これは運命。

君はそれに気付いていないだけ。

だからわからせてあげるよ。

早くわかりなよ。

 

ぼろぼろに傷付いた身体。

かわいそうに、痛いだろう。

オレに身も心も委ねればもうこんなことしないよ?

優しく扱ってあげる。

大事にしてあげる。

 

 

 

「ハヤト」

「…」

「オレを好き?」

首を振る。

頬を叩く。

ああ、また泣かせてしまった。

両手をベッドに固定しているから自分では涙を拭けないね。

オレが舐め取ってあげても涙は止まらない。

歯を喰いしばって声を殺して泣き続けて。

せっかく目を覚ましても、またずっとこんな調子?

まあいいよ、今日は何を試そうかな?

 

 

体内で振動するソレは、君のいちばん敏感な処に当てたまま。

腰を振って達した証をオレは口で受けては君に飲ませてあげる。

何度でも。

「美味しい?」

溺れるように咳き込みながら嚥下して、君は救助を求める言葉をオレじゃない誰かに投げかける。

あ、また出そうだね。

萎えることを許されない性器は吐精を繰り返す。

忙しいなあ。

そして元気だね、君のココ。

咥えて吸うと飛び出す生温かい精液を湛え口を離す。

もう飲みたくないと唇を噛んで横を向く君の髪の毛を掴んでこちらを向かせ、送り込む。

口付けをしたまま泣くと息が苦しいだろう。

「続けたい?」

耳元で囁く。

「オレのを身体で飲んでよ、その方が君には…」

「いやだ!」

間髪なく返される答えはまあ予想通り。

でもこう言われるって思ってた?

「なら玩具は抜かないで、そのままオレのも挿れる」

声もなく硬直する。

そんなこと想像もしなかったんだね、かわいいなあ。

「…む…り…」

「大丈夫、気持ち良さは倍にしてあげるよ」

「…だめ…いや…」

「嫌じゃないだろ?オレのと玩具で交互に弱いトコ衝いて、休む間もなくイキ続けるんだ」

脚を広げさせて、既に下の口いっぱい頬張っている無機質な物を見ながら話しかける。

「そうそう、これでもスイッチは『弱』なんだ。オレも入ったら『強』に上げようね…その前に」

震える唇を指でなぞって

「言ってよ、オレのこと好きだって」

「いや…だ…」

「そう言うと思った。でもそのうち考えも変わるだろ。いいよ、そのままで」

「いやだ…やめて…」

「じゅうだいめ好きです、だろ?」

「いや…!…っ…ぐ…!」

首に片手を掛け絞め上げながら、もう片方の手で脚を持ち上げ秘所を晒す。

「…あ…いれ…な…!いや…あ!」

泣きながら必死で抗う君に向かって一声。

 

「オレを好きって、言う?」

「嫌だ…っ!」

 

君の絶叫は背筋がぞくぞくするほど気持ちイイ。

あそこの抵抗はオレ自身をきつく扱き、痛いほど感じさせてくれる。

でも首を絞めてると、その分締まりもよくなって入りにくいのも事実。

だったら。

「…?あ、んん…っ!」

絞めるトコロを変えてみよう。

強く握ったまま上下に激しく扱く君のモノ。

「いた…い!やめ…さわらな…奥…また…!」

体内の刺激に加え、まだ未成熟な性器を弄られながら、

「…だめ…っ…!もう…や…俺…」

それでも全身でオレを拒否している。

「違うだろ?」

「…?」

「君には、オレを好きになってもらわないと。大体、こんなに気持ちイイ事されたら、

オレから離れられなくなるはずなんだけど…」

ハヤトの悦ぶ事をしてあげる。

してあげてるつもり。

なのに。

 

「ねえ、なんで君はオレの気持ちを判ってくれないの?

素直に受け留めてくれないの?」

 

青ざめている。ハヤトの表情が固まっている。

 

「もういい加減にしなよ。これ以上、何を望むの?」

 

最高の快楽を与えてきた。

あらゆるテクニックと、クスリと、玩具を使って。

 

「まだ、何が足りないの?」

 

抑揚の無くなった声に、

表情の無くなったオレに、

君は…。

 

「じゅうだいめ…やめて…ください…全部…」

 

応えてはくれなかった。

 

 

 

 

人の気持ちを変えるのは難しいね。

頑なな君の心を被っている殻、どうすれば壊せるかな?

 

 

気を失って眠るその頬には、まだ渇ききらない涙の跡が残っていた。

 

 

 

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     20110127