瞳を閉じて見えるもの(2)
オレの前でハヤトは笑ったことがない。
いつも緊張して、怯えて、そして泣いている。
どうしたら笑ってくれるのだろう?
オレに笑顔を見せてくれるのだろう?
こんなに好きなのに。
大好きなのに。
手を伸ばして俯いていた君の頬に触れた。
びくっと身体が強張る。
目を閉じて震えている。
頭を撫でる。
耳元で、
「好き」
と、囁く。
だけどその表情には変化はなく。
むしろ青ざめて涙が一粒ぽとりと落ちて。
君の周りには目に見えない壁あるようだ。
こんなに近くにいても、オレを見てくれるどころか声も届かない。
オレの想いは、はじき返されて空中に拡散してしまう。
そうしてこの空間には君を好きだという気持ちが形を成さぬまま漂っている。
そのうち気持ちの成分が、この部屋の空気よりも多くなって、
君は息も出来なくなるんだよ。
「オレを見て」
オレは君を、いつでもいつまでも見ていたいよ。
「顔を上げて」
目を開けて、綺麗なグリーンの瞳にオレを映して。
沈黙の時間。
今日のオレは少しいつもとやり方を少し変えてみるよ。
待ってみる。
君の心をこじ開けて壊すより、自分から開いてくれるのを待ってみよう。