行く道 2








 

いきなり激しい痛みに襲われグンマは目を覚ました。しかし口に押し込まれたハンカチのせいで悲鳴にならない。

両腕はベッドの頭上の柵に手錠で繋がれている。仰向けにされた格好で大きく脚を開き、本来は排泄器官である部分に入り込んだキンタローの長い指に中を掻き回されていた。

「う!…ううっ!」

頭を振ってやめてと訴える。そんな様子を気にも留めず、さらにもう一本の指が入り込む。

「オマエはここが気持ち良かったな。」

キンタローが中を刺激するとその身体が跳ね上がった。指の腹で擦るだけで簡単にイってしまう急所。そこを挟むように触られ続けて耐えられる訳が無い。

グンマの事は全て知っている。どこにどう触れれば悦ぶか、幾度も身体を重ねて覚えた。

「んんっ!」

グンマが暴れる度にカチャカチャという金属音が部屋に響く。自由にならない手が空を掴んでいた。

「本当に俺が判らないのか?」

こくこくと頷き、救いを求める目が自分を見上げている。何故これほど怯えているのだろう。

『キンちゃん、大好き』と、しがみついていたグンマは、もういないのか。

 

『どんなことがあっても、ずっと一緒にいようね。』

笑顔でそう言って抱きついてきたグンマ。本当にそれが出来ると信じていた。

 

「ぐ…う!」

グンマの身体が強張る。無理矢理快感を与えられて、身体と心のバランスが取れない。

「我慢しなくていい、苦しいのだろう?」

耳元で囁く言葉は優しく。だがまるで他人のような反応に、心は次第に冷めていった。一度指を抜くと、これで終わりと思ったのかグンマはほっとした表情になった。目には涙が浮かんでいる。一刻も早い解放を望んでいたであろう様子。

 

これで確認は終わった。もう容赦はしない。

 

「今のオマエにはきついかもしれないが、少し我慢してくれ。すぐに終わる。」

「…!」

嫌だと首を振る。何をされるのか判っていないグンマの身体が震えていた。

キンタローにとってはいつもの愛撫。

耳たぶに軽く歯を立て、痕を付けないように首筋を吸いながら降りてくる。そのまま鎖骨に沿って優しく舌を這わすと、胸の突起を口に含み、舌で転がしながら弄ぶ。

気持ちはともかく、知り尽くされた性感帯を確実に攻められグンマのモノが形を変えてゆく。時々身体が大きくしなるのは、そこがいつもの感じる場所だからだろう。懸命に抵抗を試みるが、それは虚しくキンタローに抑え込まれる。

声を聞きたい。だが今は大声を上げられては困る。

「好きだ、グンマ。」

己の欲望を優先させつつ、出来るだけグンマを苦しめないように扱う。グンマ自身を口に含むと身体が反り返り、小さな悲鳴が上がった。

「ん!んっ!」

涙声に気付かない振りをして、口腔内でも暴れるそれを吸い、舌を絡めて舐め上げる。くちゅくちゅと口から出し入れし、わざと音をグンマに聞かせると、恥ずかしさに顔を真っ赤にし、泣きながら行為の終わりを求めてきた。

ゆっくりとそれを口から出すと、唾液に濡れて勃ったままのグンマのモノがひくひくと震えている。

しかしここではいかさない。

無言で体勢を変えるキンタローに、グンマはこれから自分が何をされるのか気がついた。先程キンタローの指が出入りした場所。そこに今度はもっと熱く、硬い大きなものが触れた。背筋を冷や汗が流れる。

「う!ううー!」

最後の力でそれを拒む。恐怖に目を見開き、力の限り暴れ、手首には血が滲む。

くぐもった声で泣き叫ぶグンマの膝の裏を持って両足を胸に付くほど折り曲げ腰を浮かせ、そこに体重を掛けて押し入る。一瞬息が止まり、身体が硬直した。その泣きはらした目を見ないようにして、さらに腰を進める。

「…っ!んっ!」

グンマもこの苦しみから逃れようと必死で声にならない悲鳴を上げる。

あまりに激しく拒まれ、仕方なくグンマの勃ったまま放って置かれたモノを優しく握り込み、手の中で扱いて気持ちを他に向けさせる。あくまでも一時的な快楽。

キンタローの手の動きにグンマが無意識に腰を振る。きつく締め付け、進入を拒んでいた口が緩んだ。

そうなれば、キンタローのモノが全て収まるまでに時間はかからなかった。

 

グンマの中は溶けてしまいそうに気持ちがいい。ゆっくりとグンマのモノを包んでいた手を離した。呆然として、ただ涙を流すだけのグンマに声をかける。

「力を抜け、動くぞ。」

その声にはっと我に返った。嫌々と首を振り、痛みに顔をしかめる。

これが本音か。これまでのグンマはどれ程この痛みに耐えてきたのだろう。どうして笑顔が出ていたのだろう。血の気の引いたその顔を見て思う。

しかし自分も途中では終われない。グンマの中をゆっくり刺激しながら、口からハンカチを出してやる。息苦しさから解放されたように大きく息を吸い込んでいた。

キスをしたい。

腰は動かしながらその唇を舐めると、反射的に閉じた口を指でこじ開け、舌をねじ込んだ。

「んんっ!」

髪の毛を掴んで動けないようにして、逃げるグンマの舌を存分に味わう。その間も下半身は律動を続け、グンマを攻め立てていた。

ようやく呼吸を許されると、流し込まれ強引に飲まされた唾液にグンマはむせ返り咳き込む。

「今度は本当に気持ちよくしてやるからな。」

突き上げ、奥を攻めながらグンマの中を己の肉棒で擦り上げ、掻き回す。激しく出入りを繰り返し、同調しないグンマの腰を掴み打ち付ける。まるで獣の交わり。

「や、あっ…!」

逃れようとする身体を引き寄せ、さらに奥深くに押し入る。今のグンマにとっては苦痛でしかない。身体を反り返らせて狂ったように泣き叫んだ。

「助けて!やめて!」

「大声を出すな。このような状態で人を呼べばどうなる。」

「う…。」

今の自分の格好を人に見られたくはない。その為キンタローに対してひたすらに泣き、やめてと訴える。聞き入れてもらえるはずがないと判っていても。

グンマの秘所は擦られ続け、傷付き、血が流れはじめた。

「い…、痛いよ…、やめて、助けて…。」

次第に勢いを増す腰の動きにグンマの泣き声が重なる。闇雲に攻めるかと思えば中の性感帯だけに標準を定め、意識を飛ばしてしまいそうなグンマにそれを許さない。執拗に一箇所だけを攻撃されて子供のように泣きじゃくる。

「やめて…放して、…許して。」

揺さぶられ、グンマの金髪がベッドで波打つ。

キンタローはそろそろ我慢の限界に来ていた。早くなる呼吸。今はもう本能だけで動き、己の快感を求め、暴走する。このままではグンマが壊れてしまうかもしれないという思いが頭をかすめた

そして。

先に達したのはグンマだった。自分自身を包み込む粘膜の蠕動。それによって自分もグンマの中に白濁した熱い液体を放出する。

それは、最後の一滴までグンマの身体に飲み込ませた。

 

 

汗が流れる。グンマに覆いかぶさり荒い息を落ち着かせる。

「な…。」

小さな声でグンマが言った。

「何で、泣いてる…の?泣かないで…。」

泣いている?誰が?目を擦ると水滴が付いた。

「ごめん…やっぱりキンちゃんのこと、判らない…。でも、キンちゃんは…ぼくの事…。」

グンマも泣きながら、途切れ途切れに声を絞り出す。

「…ごめん…ぼく…でも…。」

何故グンマが謝る?グンマは悪くない。

かちゃりという金属音。手錠をはめたままだった事に気付き、サイドテーブルに手を伸ばす。見える所に置いていた。しかしグンマにはどうすることもできなかった、鍵。

「すまなかったな、痛かっただろう。」

外したあとに残る傷を見て胸が痛くなった。可哀想に…。

「どうして俺は、こんな事…。」

大切にしたい想いがどう間違ってしまったのか。こんなに泣かせて傷付けて。それでも自分を責めないグンマをどう扱っていいのか判らなくなった。

「キンちゃん…?」

ゆっくりとグンマの首に手をかけた。

「き…!」

この位の首の骨など、折るのは簡単だ。すると、抵抗を見せると思っていたグンマの身体からふっと力が抜けた。優しい大きな目が悲しそうに自分を見つめ、その瞳から大粒の涙が溢れる。助けを求めるでもなく、ただじっと苦しさに耐えていた。

今度こそ、頭に血が上った。

「俺は、オマエを…。」

好きで好きで。ただそこに居てくれるだけでよかった。その存在こそが全てだった。なのにどうして自分の手で自らその道を閉ざそうとしていたのか。手に掛ければ自分の中に取り込めるとでも思ったのか。

どんな形であれ、グンマはグンマのはずなのに。傍に居て欲しいのに。

「グンマ!どうして、俺は!」

すまない、どうしたらいい?頭がパニックを起こした。

 

キンタローの声にシンタローが部屋に飛び込んできた。そして目にしたのはグンマに跨り、泣きながら、大声で叫び首を絞めているキンタローの姿。

 

「おい、グンマに何を!」

すでに意識が朦朧となっているグンマ。あと少しこの手に力を込めれば、本当にグンマは手の届かない処に行ってしまうはずだった。

「どけ!キンタロー!」

シンタローの声が遠くに聞こえた。

 



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