絆(2)
口の中にあるじゅうだいめのモノ。これのせいでじぶんは今喋ることができない。
上から視線が降ってくる。
瞼を閉じてもそれは雨粒が当たるほど鮮明に感じられ。
ゆっくりと、再び始められる口への抜き差し…と思った、が。
「…っん!?」
それでも辛うじて呼吸は出来ていた。塞がれていたのは口だけだったから。
だけど。
「言っとくけどね、オレ結構短気だよ?」
じゅうだいめの身体が、じぶんの顔の上に覆いかぶさるように重なってきた。
その行為は…呼吸を妨げる…!
声なき声で悲鳴を上げ、やめてと訴えたじぶんの耳に届いたのは、
「早く飲めよ」
という非情な声。
こんな体勢なのに、その声は何故か突き刺さるようにはっきりと聞こえ…。
いつでも、どんな時でも、
声は冷たくてもこんな命令口調で言われたことなんてない。
全身が総毛立った。
苦しいより、怖い。
このひとは今、一体どんな顔をしているのか。
酸素の足りない頭がくらくらする。
目の奥で光が瞬く。
だけどだけど、これに歯を立てないように…!
でないと、じぶんは…!
「ああ、お漏らししちゃった?」
極度の緊張の後に来る弛緩。
その結果が。
「ねえ、見て」
ゆっくりとじぶんの上からじゅうだいめが退く。
そして、起こされた。
「オレも」
目の前のシーツに広がったあの染みを指して
「ハヤトの口の中に出そうかな、アレと同じのを」
座らされた体勢のじぶんの背後から、嗤いながら、でも本気の声。
震える身体をあたたかい手のひらが撫で回す。
「結局アッチは飲めなかったんだし。代わりに、ね」
「じゅうだいめ…」
あれはのみたくない。
「もう、いちど…おねがいします」
「ん、いいけど咥えてどっちが出るかは、君次第だよ」
場所を変えようねと言われてソファーに座ったこのひとのモノを、
今度こそ口だけで悦ばせる。
何も考えず、
必死で。
手も使っていいよと手足の束縛は外してもらえた。
その代わりちゃんとできなかったら今度はもっとはずかしい格好にされて、
玩具もおくすりもいっぱい使って啼かせてあげると。
想像を絶する行為を笑いながらするひと。
それに比べたらこれくらい。
舐めて吸い付いて手で扱く。
はやく出してもらって終わりたい。
「いい子だね、君のそんな姿は大好きだ」
そう言って頭を撫でられても気は抜けない。
「頑張っているハヤトに御褒美あげようかな。オレ、気持ち良くなってきたし」
はっとして閉じていた目を開ける。
聞き慣れてしまったあの音。
振動する、あれ。
大嫌いな…。
「これ挿れてあげるから一度立って」
口から出したじゅうだいめのモノの方が、今目の前に晒されている物よりも遥かにおおきい。
それは明らか。
でも…。
「じゅうだいめ…」
ゆっくりとこのひとの首に手を回して抱きつく。
「俺、このままじゅうだいめのが欲しいです…」
声が震えているのがじぶんでも判る。涙が浮かぶ。
だけど、思い切って言葉を続けた。
「じゅうだいめのを、挿れてください…!」
…返事がない…?
「じゅうだいめ…?」
抱きついていた腕をゆるめようとしたその瞬間、身体が浮いた。
声を出す間もなく、腰を下から支えるように掴まれ降ろされる先には、
じぶんが硬くおおきくしたモノの先端が待ち構えていた。
「あ、痛い…っ!」
「そうだね、やっぱりコッチにする?」
挿入を止めようとするのを察して慌ててすがりつく。
「嫌、じゅうだいめがいい…っ!」
そうしてじぶんからそこに腰を落とす。
宛がわれたモノが狭い口を抉じ開け、勢いをつけて入り込んだそれに突き上げられる衝撃。
激しい鼓動に心臓が痛む。
堪らず腰を浮かせようとすれば
「逃げるの?」
と、声が追ってくる。
「嫌ならいつでもやめていいよ。代わりに君を愉しませてあげるものはココにあるからね」
じぶんの背後で玩具の振動音が聞こえる。
だから自ら上下の律動を始め、出入りする肉棒の立てる湿った音でそれをかき消した。
※ まだちょっと続きます(20100427)