絆(6)
「きみに嫌がることをすればオレを嫌いになると思った。
だけど、どんなに泣かせて辱めを受けさせても、きみはオレから離れない。
離れて行こうとしない」
当たり前かとため息をつく。
「嫌なのはオレが傍にいなくなる事だったんだ。
こんなに近くで何をしても、それはオレの無駄な努力だった訳か」
「…初めて出会ったあの日から」
道端で生きていたじぶんに手を差し伸べてくれたこのひと。
「好きです」
一緒にいたい、これからも。
「ずっと、お傍に置いて下さい…じゅうだいめ…」
あなたは大人でじぶんは子どもで。
だけど想いは通じると信じていた。
「その『好き』は、感謝の気持ちからくるものではないの?」
「じゅうだいめ!違います、俺は…!」
「まさか恋愛感情?本当にその意味を判ってる?」
「わかっています!俺はじゅうだいめのこと、本気で…!」
「本気で?」
つい今しがたまで戸口に立っていたはずの姿がすぐ目の前に迫り、
「本気で真剣にそんな気持ちを持つなんて」
伸ばされた手が軽い力でじぶんの身体を押し倒す。
「まだ早いんだよ」
それに対しての返事はできなかった。
仰向けになったじぶんの上にのしかかるじゅうだいめが口付けてきたから。
「愛だの恋だの、そんな事は軽々しく語っちゃいけない」
唇が離れても動けない。
「君はまだ知らない」
耳に声が触れる。思わず身震いすると、
「そして知らなくていい」
ゆっくりと離れゆくじゅうだいめが、静かにことばを投げかける。
「君のそれは、自分を犠牲にする」
澄んだ琥珀色の瞳が、真っ直ぐじぶんを見据える。
「以前君は言った。『まだ俺は強くない。でもこんな自分でも、せめて盾にはなれる』と」
「じゅうだいめの、お役に立ちたいんです…なにかで…俺でも出来ることで…」
「オレはそれをしてほしくない。ハヤトは何も判っていない」
「…俺は…どうしたら…」
好きなひとを護りたい。
それが、どうしていけないのだろう?
「間違った方法でオレを想ってくれるのは嬉しくない」
「俺は、他のやり方を知りません…」
「ならば教えよう」
目の前に手のひらが翳される。最近の条件反射で思わず身を固くし、目を閉じた。
だけどそれに対する考えとは裏腹に、そっと触れてくる柔らかい温もり。
額を撫でられ、前髪をかき上げられてキスをされ、
「君が、強くなればいいんだ」
そう告げられた。
「ハヤトの想いは強い、それはよく判る」
だから早く成長して、もっと強くなれと。
「じゅうだいめ…」
指の間から垣間見えるこのひとの瞳には、あの優しさが湛えられて…。
「じゅうだいめ…俺…あなたのために…」
ことばが続かない。こみ上げる感情が痛みや悲しみとは違う涙を溢れさせる。
やっぱり、じぶんはこのひとが大好きだ。それをほんの僅かなやりとりで再認識する。
「…泣かせるつもりはなかったんだけど…」
「すみま…せん…」
顔を覆うこの人の手にじぶんの手を重ね、
「ありがとうございます…」
と、それだけで精一杯。
信じていてよかった。このひとはなにも変わっていなかった。
「大好きです、じゅうだいめ」
「オレも…と言いたいところだが、大人には大人の事情があって…」
「…じゅうだいめ?」
涙を拭ってくれた指がそのまま頬に添えられる。
「君を好きでいると、君に酷いことをしたくなる。今はそれを我慢…」
「しなくていいです!」
「ハヤト?」
「じゅうだいめが俺を好きと思ってくれていれば、俺は何をされても耐えられます!」
ぱちん。
たしなめるように軽く顔を叩かれた。
「違う。そういった自己犠牲的な気持ちを捨てるんだ。オレは君を大事に思えばこそ…」
「じゅうだいめこそ、俺に変な気遣いは無用です!」
「ハヤト!」
…さっきまではこんな一言にも震え上がっていた。でも今は。
「じゅうだいめ、俺…大丈夫です」
笑って応えられる。
「…まったく…オレが大丈夫じゃないんだよ」
「でもこのままじゃ、俺…」
「ああ…そうか…そうだったね」
無理矢理煽られたまま失った熱の行き場。
「解放してあげようね」
優しく軽いキスひとつで、燻っていた体内の炎が燃え上がった。
挿れるのはよそうかと言ってくれた。
でもふと触れたじゅうだいめのあそこが大きくなっているのに気がついたから
「ふたりでいっしょにいきたいです」
とお願いしてみた。
改めて見るソレの大きさに一瞬しまったと思ったなんて、実は言えなかったけど。
ローションを垂らした指で解され、膝の裏を持って開かされた脚の間に当たる熱に、
これまでの辛い記憶が蘇る。
「嫌なら言って、やめるから」
「嫌じゃないです!」
最初が少し怖いだけ…だから大丈夫…。
先端が窄んだ口に添えられた。
「優しくできなくなっても知らないよ」
「じゅうだいめのすることなら平気です!」
「そんな負けん気が強いトコ、大好きだよ」
じゅうだいめの口から出た、好きということばに気が緩んだ。
く、ぷ。
飲み込む肉棒の太さは半端ない。ずるずると内臓を擦りながら埋め込まれるものが、
同じ人間の持つ物だとは到底理解しがたくなるほどに。
「まだ締め付けないで、オレもきつい…」
「あ、あ…」
思うように返事も出来ない。
「こんなに狭いとこに、オレは何度もこれを強引に捩じ込んで、中をかき回して突き上げて…」
すまなかったと囁きながら、
「だけど、最高に…気持ち良かった」
「…っう…あ!」
最奥に到達したそれに、おなかの中から叩かれるような衝撃。
「ま…って…じゅ…だ…!」
「ハヤトの弱いトコは熟知している。こことか…」
ある場所を突かれたと感じた途端、びくんと身体が跳ね上がった。
「ここも、ほら」
「や…!そこ…っ!」
背中が仰け反る。
「あと、こことか…」
「ひ…!」
びくびくと痙攣するように震えて、いきなり襲い来る解放感。鼻を衝く青臭いニオイ。
…達したと知るまでにかかった時間。
「あ…じゅうだいめ…?」
「ごめんね、でも好きなんだ…君の身体やその反応の仕方、そしてオレ自身にかかる負荷も…」
ちゅ、と唇が触れるだけのキスをして、
「全部ひっくるめて大好きだ」
わらってくれた。
※ 次で終わりです…(20100714)