|
うそつき (2) 「珍しいね、いつも誰かと群れてる君が今日はひとりなんだ。」 窓際に立ってこちらを向いている逆光のシルエット。今まで外の、眼下の山本を見ていたんだろうなと勝手に推測する。 「今日のお願いは他の人がいるとまずいんです。」 おそるおそるというふりで歩み寄り、もう一度礼をする。 「獄寺くんとやりたいんですが、練習相手になって下さい。」 丁寧にお願いしたつもりだったのに、返事がない。 その代わりに突き刺さるような視線。こんなことは想定内。 「君の。」 口を開くのも億劫といったところだろうか。 「周りに居る誰かに頼みなよ。僕は忙しい。」 それだけ言うとくるりと背を向けられ、もうこちらの事は完全無視。 でも断り方がおとなしい。 これは山本に感謝しないと。 いつか 「ヒバリにツナには暴力振るわないでくれって頼んどいたぜ。」 と聞かされていたからできた事。 そして、今日は一人で来たのもよかったのかもしれない。 ほんと、雲雀さんってひとは群れるのが嫌いなんだから。 でもまだあの言葉は言わない。 (駄目でしたら山本に頼みます) あれは奥の手。 だけどこれ位なら言ってもいいかな。 「大丈夫ですよ、野球部の練習は始まったばっかりですから。」 「何が、言いたいの?」 すぐさま返ってくる返事。 周りからは冷静で他人に無関心と思われているこの人が、唯一反応を見せる相手。 これでも隠してるつもりなんだろうな。 こんなところはなんかカワイイかも。 「雲雀さん、いいんですか?オレの周りに居る他の人に頼んじゃっても。」 これで雰囲気が変わった…かな。 「例えば山本とか。」 こちらの気持ちは悟られないよういつもの調子で喋り続ける。 「そうですね、雲雀さんにこんな事無理ですよね…すみませんでした。」 申し訳なさそうな態度で謝り、その言葉を口に出す。 「山本に頼もう。」 「ちょっと待ちなよ。」 …早い。 |