うそつき (3) 「なんであの子にそんなの言うわけ?」 おおっ、食い付いてきた。 でも表面上は平静さを保ったまま受け答える。 「オレの周りの誰か…っていったら後は山本でしょう。」 「他にいるでしょ、イタリアから来たあの大人とか…。」 「ディーノさん?ああ、確かに手取り足取り教えてくれそうですね。」 だけどあの人はリボーンのなんだって…と思わず口から出そうになった。 いやいや、こんな事今ここでばらさなくても。 あいつに手を出したら殺すぞと、リボーンにマジな顔で銃を向けられたのはあの人が来た日の夜。だからこれは本気だと悟って絶対にしませんと誓った。 「それで?」 少しイラついてきた口調。 「君、僕と喧嘩したくてここに来たの?そんな話なら乗ってあげてもいいよ。あの子に当分会えなくなる位の怪我、してみる?」 「反対ですよ、オレが大怪我したって聞いたら飛んで来てくれますよ。」 にっこりと、負けてなるものかと笑顔で返す。 「ホントに山本って優しいから。それにかわいいですよね。」 これに反論はしないだろう。更に、自分の身を守る手段。 「この前、山本と何か約束をしませんでした?」 「したけどそれは時と場合によるよ。」 「山本はそんなこと知らないから『ヒバリ、ひでーのな。俺ちゃんと約束したのにな』とかなんとか言いそうですね。あ、雲雀さん、約束を守らない人と思って見られちゃったりして…。」 「そのお喋りな口、目障りだね。」 こちらへ一歩踏み出された足。 手にはいつの間にか見慣れたトンファーが握られていた。 「山本は雲雀さんのこと優しい人だって言っていましたよ。」 「あの子にそんなに優しくした覚えはないけど。」 「雲雀さんのすることは何でも良く見えるんじゃないですか?恋は盲目って言いますし…。」 「それ、なんか使い方間違ってない?」
「そういやヒバリ、今日のな…!」 ばあん!とノックもなく勢い良くドアが開く。 「…っと、あれ?ツナじゃん。珍しいな。」 いきなり現れたユニフォーム姿の山本は、雲雀恭弥と沢田綱吉の姿を交互に見ながら、それでもこの場の雰囲気に似合わない笑顔で言う。 「今日の約束の時間には間に合うように練習終わらせて来るからな。ヒバリもあれ、忘れんなよ。」 「もう用意してあるよ、ご心配なく。」 「うわ、まじで?サンキュー、愛してるぜヒバリ!また後でな!」 来た時同様の勢いで山本が去ると、外では再び野球部員達の声が聞こえ始めた。 どうやら短い休憩中に走って来たのだろう。 「あいしてる…って、山本、いつの間にあんなこと言うようになって…。」 「素直だからね、あの子は。思っていることは全部口に出すんだろうね。」 雲雀さんとは正反対ですね、という言葉をごくんと飲み込んだ。 「そういえば山本の言ってた、あれ…って何ですか?」 |