うそつき (5)

 

 

 

目の前に積まれたヤキソバパンと並盛牛乳。それを美味い美味いと食べる山本の姿を見て、雲雀も手に持っていたそれをぱくりと一口。

紅生姜がもう少し入っている方がいいかも、と思いながらゆっくりと咀嚼。

ふと見ると、あれだけあったパンはひとつ残らず目の前の人物の腹に収まったようで、それでもまだ足りないといった風に視線は手の中の食べかけへ。

「これも、食べる?」

「いいのか?ヒバリ、優しいな!」

 

『ああ、このことか。』

 

優しいにもいろんな種類があるが、山本にとって雲雀は本当に単純な、基本的な欲求を満たしてくれる相手なのかと考える。

「は〜、満腹!ところでヒバリは足りてないだろ、あれだけじゃ。」

「いいんだよ、これから君をいただいてお腹いっぱいになるから。」

「ははは、おもしれーな。」

雲雀に向かってこんな笑顔を見せる者は他にいない。

「面白いと言えば、君の友達もなかなかだよ。」

「ツナのことか?そういえば何話してたんだ?」

山本の目がまっすぐ雲雀の顔を見る。

その視線を一度しっかり受けとめ、すうと流すように窓のほうへ向く。

「楽しいうそをついてくれたよ。」

「…うん?ツナはうそなんて言わねーぞ。」

「君は本当のことしか言わないね。」

「ええと、例えば?」

「僕として、気持ちいい?」

「ああ、超きもちいい!超好き!」

照れることもなくすぱーんと返ってくる返事。

「本当に、正直だ。」

今度は雲雀が山本の瞳を射抜くような視線を送る。

「ほめられてんのか?でもまじでヒバリのこと好きだぜ。だってあんま俺のこと構わねーし。」

「…どういうこと?」

「ん〜、なんてーの?俺、自分を引っ張ってくれるのは好きだけど、押され過ぎるのはちょっと…みたいなとこあって。そういった意味じゃ、獄寺みたいなタイプは苦手かも…。ツナの奴、よくいつも一緒にいるよな。あんだけ付きまとわれてさ。」

「ふうん、放っておかれるのが好き?」

「いや、そうじゃなくて…傍にいて欲しいけど、べたべたされるのが苦手…かな。」

付かず離れずの位置にいる、理想のカタチ。それでいて優しくされる。

「すげーわがままだって思うけどさ、こんな関係、大好きだぜ。」

「それは僕も望むところだ。」

「へ?」

「相性がいい、というんだ。心も、身体も。」

真面目な顔をして淡々と喋る雲雀に、俺たち、お似合いなのなと、太陽のような笑顔。

雨の守護者とは思えないほどに。

「それにしては君、子ども好きじゃない?あれこそ押しまくりなのに。」

「野球やってるときは別だって!」

「そんなもの?…まあいいや、それよりそろそろ、しない?」

「する!」

 

 

…こんな山本は僕だけのものだよ、沢田綱吉。

そう心の中で密かに笑った。

 

 

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