うそつき

 

 

 

獄寺くんのことは好きだけど、山本と一緒に居ると安心できる。

何ていうか、誰に対しても分け隔てないっていうか、優しくて力強いオーラが出ているっていうか…。

だからかな。

あの雲雀さんでさえ、山本なら応接室に出入り自由にしてるって。

当の本人は気付いていないけど、それはとても特別なこと。

だって、あの雲雀さんにタメ口なのにひとつも怒られないし、それでも彼の態度は好感が持てるなんて言われてるし。

どう見てもお気に入り。

 

だからそこを少し逆手に取ってみようと思った。

 

 

放課後、グラウンドに山本の姿を確認する。野球部の練習中はよっぽどのことがない限り途中で抜けることはない。

楽しいんだろうな。

自分には判らないけど。

ひとりで黙って廊下を歩く。

獄寺くんは先に帰した。

用事があるなら手伝います、とか、終わるまで待っていますとか言ってたけど

「今日は君のための用事だから駄目。」

ってにっこり笑って

「また明日ね。ばいばい。」

と言えばそれでは失礼しますと頭を下げて踵を返す。

こういうところは素直でいい子なんだよね。

 

応接室。

普段は殆ど近寄る人もいない。

もちろん今日も。

「…誰?そこにいるのは。」

中から静かでよく通る声。

「沢田綱吉です、入ります。」

戸を開けて一礼した。

「雲雀さん、お願いがあります。」

 

 

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