更新日 1990年(平成2年)6月19日〜2023年(令和5年8月24日)
※ 私なりの解釈なので、あくまでも参考までに。
※ 突然の解説変更ございます。
汗を發す可から不る病の脉證併せて治を辨ず・第十五
病が外の表に在り、当然汗によって治るべき状態にありながら
汗を発してはいけない所の病の脈状と証候ならびに、
それに対する治方に用いられる薬を詳しく述べたもの・第十五
(1)夫れ以爲疾病急なる至り倉卒に尋ね按ずれば要なる者を得難し。
自分が考えるのに、病気が急に酷くなった場合に、驚き慌ててあれやこれやと書物の中を引っ掻き回してみても
肝腎な所はなかなか出てくるものではない。
故に重ねて諸の可と不可との方治を集む。之を三陰三陽の篇中に此すれば此れ見易き也。
だから今一度これの可と不可との方治を集めてみた。これを前文にある三陰三陽篇の中に在るものを
拾い出すのと比べれば、この方が見易いであろう。
又時に是の三陰三陽に止まら不ること有るは出だして諸の可と不可、中に在る也。
又時には三陰三陽の中に無いことまで特に選び出し、この可と不可との中に入れてあるのである。
(2)脉濡而弱、弱が反って関に在り、濡が反って巓に在り、脉が反って上に在り、ジュウ(サンズイ+嗇)が反って下に在り。
脈に濡の所と弱の所が有り、弱の脈は関上に在り、濡は寸口に在り、
そして微が上部の寸口に在り、ジュウ(サンズイ+嗇)が下部の尺中に在る者は、
微は則ち陽気足らず、ジュウ(サンズイ+嗇)は則ち血無く、
微は陽気が不足し、ジュウ(サンズイ+嗇)は血が不足しているのである。
陽氣も反って微、中風汗出でて反って躁煩す。ジュウ(サンズイ+嗇)は則ち血無く厥して且つ寒ゆ。
陽気も少しで中風を患い、汗が出ていながら反って躁煩し手足が厥し、その上寒気が酷く、
陽微を発汗すれば躁して眠るを得不。
またこの様に陽気が微の者が汗をかくと、躁して眠りが得られなくなるのである。
(3)動氣右に在れば汗を發す可から不。汗を發すれば則ち衄而渇し心煩を苦しみ飮めば即ぐ水を吐す。
動悸が右側のどこかに在れば汗を発してはいけない。汗をかかせれば急に鼻血が出て、そして咽喉が渇き、
心臓がやり切れなくなって苦しみ、水を飲めば直ぐにその水を吐いてしまう。
(4)動氣左に在れば汗を發す可から不。汗を發すれば則ち頭眩し汗止ま不、筋タ肉シン(目+閏)す。
動悸が左側のどこかに在れば汗を発してはいけない。汗をかかせれば頭がボーっとして気が遠くなり、
汗が止まらなくなり、身体がすくんで肉がビクビク動く。
(5)動氣上に在れば汗を發す可から不。汗を發すれば則ち氣上衝し正に心端に在り。
動悸が臍より上部に在れば汗を発してはいけない。汗をかかせれば気が下から上へグッと突き上げてきて、
間違いなく心臓の下の端を突く。
(6)動氣下に在れば汗を發す可から不。汗を發すれば則ち汗無く心中大いに煩し骨節苦疼し目運し惡寒し
動悸が臍から下に在れば汗を発してはいけない。汗をかかせれば発汗した後で汗が少しも出なくなり、
その為に心臓の中がワクワクして、節々が怠くなり、目が回り、悪寒がして、
食すれば則ち反って吐し、穀を前むるを得不。
お粥など穀物を食べるとその食物が逆戻りし吐いてしまう。だからその時は穀物を勧める事は出来ないのである。
(7)咽中閉塞せるは汗を發す可から不。汗を發すれば則ち血を吐し気絶せんと欲し、
食道の入り口やその中途に塞がりの有る場合には汗を発してはいけない。
汗をかかせれば吐血し、息が詰まって呼吸困難を起こし、
手足厥冷し、ケン(足+卷)臥するを得んと欲し、自から温むる能は不。
手足が氷の様に冷えて手足を縮めて寝て、それを自分で温めようとしても温めることが出来ず、
絶えず身体を動かすという様になる。
(8)諸の脉、數動微弱を得る者は汗を發す可から不。汗を發すれば則ち大便難く、
浮沈大小等の脈の者で、数で動で微!弱!を表していれば発汗してはいけない。
汗をかかせれば、大便が出にくくなり、
腹中乾き、胃燥而煩し、其の形相象りて根本源を異にす。
腹中の水気が減り、胃の中が乾き悶え苦しみ、その生ずる証候はどれも同じ様であるが、
根本の原因は皆異なる所が有るのである。
(9)脉微而弱、弱は反って關に在り、
脈が微そして弱で、その弱があるべき所でない関上に在り、
濡は反って巓に在り、弦は反って上に在り、微は反って下に在り。
濡があるべきでない寸口に在って、その濡の中にあるべきでないはずの弦が在り、
しかも寸口が微なるにも関わらず尺中も微であるという時は、
弦を陽運と爲す。微而陰寒なれば上實下虚し意温を得んと欲す。
この弦は陽が他から移されて来ているのである。その為陽を持っていかれた陰は寒を生じ、
これに因って陽の運ばれた上部は実しているが、陽を運び出された下は虚して、
温まりたいと思うが、病人は見るからに寒そうな様子をしているものである。
微弦は虚と爲す。汗を發す可から不。汗を發すれば則ち寒慄して自から還る能は不。
この様に微弦は虚であるから、外に熱が有っても発汗してはいけない。
それをもしも発汗してしまうと寒がって震えが来て自然には治まらなくなってしまうのである。
(10)ガイ(亥+欠)する者は則ち劇し數涎沫を吐し咽中必ず乾き小便不利し心中飢煩し、
上実下虚していて咳する者は、発汗した場合咳が出ない者に比べて発汗後の容態は更に劇しく盛んに薄い痰を吐き、
咽中は乾き、小便の出が悪くなり、心中が空っぽになった様で頼りなく煩わしくなり、
サイ(日+卒)時而發し其の形瘧に似て寒有り熱無く虚して寒慄し、ガイ(亥+欠)而發汗しケン(足+卷)而苦滿し腹中復た堅し。
2時間置きにガタガタと震えが来てその様子は悪寒と発熱とが交互に発する病に似ているが熱はなく、
そして咳をすると身体がカーッと熱くなり汗が出て、足が冷たい為にかがまる様になり、
そして胸が苦しく、腹もたま堅く満って苦しいという証候が生ずる。
(11)厥して脉緊なるは汗を發す可から不。汗を發すれば則ち聲亂し咽嘶び舌萎えて聲を前むるを得不。
厥して脈が緊の者は汗を発してはいけない。
汗をかかせれば声が途切れ途切れになり咽がむせっぽくなって声がかすれ
舌が縮まり声を大きく出すことが出来なくなる。
(12)諸逆を汗を發すれば病微なる者は差え難く、劇しき者は言亂る。目眩する者は死す命將全うし難からむ。
諸々の逆(発汗・吐・下痢・火攻等)の後に手足厥冷を起こした者を更に汗をかかせると軽い病でも治りにくくなり、
重い病の者は言葉が乱れ、目眩が起きた者は死ぬとまではいかないが、目眩が激しい時は命が危ない。
(13)ガイ(亥+欠)而小便利し、若しくは小便を失する者は、汗を發す可から不。汗出づれば則ち四肢厥逆冷す。
咳をする度に小便を催す者、又は小便を漏らす者は、汗をかかせてはいけない。
汗が出ると手足の血の巡りが悪くなり、手足の先端から冷え上ってくる。
(14)傷寒頭痛翕翕と發熱し形中風に象り常に微汗出で自から嘔する者は、之を下せば
傷寒を患って頭痛し、カーッと熱が出て、中風の形に似ていて絶えず軽く汗が出て嘔する者を下してしまえば、
uす煩し心中懊ノウ(立心偏+農)すること飢えたるが如く。汗を發すれば則ちケイ(ヤマイダレ+至)を致し、
増々苦しみが酷くなり、心中が空っぽになった様に頼りなくなる。そして汗をかかせるとケイ(ヤマイダレ+至)病になり、
(ケイ(ヤマイダレ+至)病=歯をくいしばって弓なりに反りかえる病)
身強ばりて以て屈伸し難く、之を薫ずれば則ち黄を發し小便を得ず。灸すれば則ちガイ(亥+欠)唾を發す。
体が強張り屈伸が出来なくなる。これを火や熱い物で身体を炙ると、それにより黄疸を発して小便が出なくなり、
お灸をすえると咳が出て痰を垂らすようになる。
《汗を發す可から不る病の脉證併せて治を辨ず・第十五》
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