更新日 1990年(平成2年)6月19日〜2023年(令和5年10月3日)
※ 私なりの解釈なので、あくまでも参考までに。
※ 突然の解説変更ございます。
発汗吐下後の脉證併せて治を辨ず・第二十二
発汗した上に吐や下した後、発汗後、吐かせた後、下した後の脈状と証候ならびに、
それに対する治方を詳しく述べたもの・第二十二
太陽病上(16)太陽病、之を下したる後、其の氣上衝する者は、桂枝湯を與ふ可し。方は前法を用ゆ。
若し上衝せ不る者には、之を與ふ可から不。
太陽の病を患っている者に下しをかけ下痢させた後、太陽に集まっている気が下腹から喉に突き上がってくる者は、
桂枝湯を与えなさい。呑ませ方は前法に従う。
もし上衝しない者は病が表から去ろうとするものは無いから桂枝湯を与えてはいけない。
太陽病上(22)太陽病を汗を發したるに、遂に漏れて止ま不、其の人惡風し小便難く、四支微急し、以て屈伸し難き者は、
桂枝加附子湯之を主どる。
太陽病の者を発汗させたら一度発汗により出た汗が今度は薬が切れても止まらなくなってしまい、
その人悪風して小便の出が悪くなり(表の不解の上に更に陽虚が重なったから)、
手足が少し詰まる様になり屈伸することが難しい(悪風小便難四支微急等は皆陽虚から生じた証)者は、桂枝加附子湯を使う。
太陽病上(23)太陽病之を下したる後、脉促胸滿する者は、桂枝去芍藥湯之を主どる。
若し微に惡寒する者は、去芍藥方中に附子を加へたる湯之を主どる。
太陽の病を下した後で、脈が早く時に止まることが有り、胸中が一杯に詰まった者は、桂枝去芍薬湯を使う。
もし下した後で脈促胸満と同時に微しく悪寒を生じた者は、桂枝去芍薬湯の中に附子を加えた湯を使う。
太陽病上(26)桂枝湯を服し大いに汗出で脉洪大の者は桂枝湯與ふること前法の如くす。
若し形瘧の如く日に再發する者は汗出づれば必ず解す。桂枝二麻黄一湯に宜し。
桂枝湯を服して大いに汗が出て、汗が出ると同時に脈も洪大になる者には、桂枝湯を与える前に前法に従い、
先ず風池と風府に鍼を刺してやれ。もし桂枝湯を服し、大いに汗が出てから病状が
瘧病(悪寒と発熱が交互にくる病)の様に1日に2回ずつ発作を起こす者は、汗が出れば必ずよくなる。
汗が出ればよくなるのに、その汗が出ない為に発作が続く者は、桂枝二麻黄一湯を用いるがよい。
太陽病上(27)桂枝湯を服し大いに汗出でたる後、大煩渇解せ不、脉洪大なる者は、白虎加人參湯之を主どる。
桂枝湯を服し沢山汗が出た後、酷く熱がり喉が渇いて一向によくならず、その上脈が洪大になる者は白虎加人参湯を使う。
太陽病上(29)桂枝湯を服し、或いは之を下し、仍ほ頭項強通し、翕翕として發熱し、汗無く、心下滿して微痛し、
小便不利する者は、桂枝湯より桂を去り、茯苓白朮を加へたる湯が之を主どる。
発熱悪寒を治そうと桂枝湯を服させたり便秘するからと下してみたが、未だ頭や項が強ばり痛み、
ポッポッと熱が出て、熱は出るが汗は出ず、胃が張って少し痛みを覚え、小便が出ない者は、
桂枝湯から桂枝を取り除き茯苓と白朮を加えた煎薬(桂枝湯去桂加茯苓白朮湯)を使う。
太陽病中(4)太陽病、桂枝の證を醫反って之を下し、利遂に止まず、脉促なる者は、表未だ解せ不る也。
喘而汗出づる者は、葛根黄連黄ゴン(草冠+今)湯之を主どる。
太陽病で桂枝湯の証候(発熱悪寒汗出て脈弱い者)が有るのに、医者が発汗すべきなのに反対に下痢を起こさせ、
ついに下痢が止まらなくなり、脈が前より早くなる者は、表に在る病が未だとれていないのである。
未だ表解せず、胸がゼイゼイと言い汗が出る者は、葛根黄連黄ゴン(草冠+今)湯を使う。
太陽病中(13)太陽病之を下し微喘する者は、表未だ解せざるが故也。桂枝加厚朴杏仁湯之を主どる。
太陽病を下剤で下しをかけ、少しゼィゼィと咳をする者は、体の表面がまだ解けないからである。
それには桂枝加厚朴杏仁湯を使う。
太陽病中(15)太陽病先ず汗を發して解せ不れば、復た之を下したるも、脉浮なる者は癒えず。浮は外に在りと爲す。
而に反って之を下す故に愈え不ら令む。今脉浮故に外に在るを知る。当に外を解するを須ゆべし。
則ち愈ゆ。宜しく桂枝湯之を主どるべし。
太陽病になった初期に汗を発してみたが病が解けず、二度目には下してみたがそれでも解けず脈が浮いている者は治らない。
脈の浮は、病が外に在るとするのに、あべこべここれを下したからそれで病を治らなくさせているのである。
今脈が浮いているので、それで病が外に在ることがわかるから、当然外が解ける方を用いるべきでそうすれば治る。
それには桂枝湯を使う。
太陽病中(27)傷寒汗を發し解し半日許にして、復た煩し脉浮數なる者は、更に汗を發す可し。 桂枝湯之を主どる。
傷寒が発汗により解け、半日ばかりしてから再び熱が出て病人が熱がり脈が浮いて早い者は、改めてまた発汗してやれ。
これには桂枝湯を使いなさい。
太陽病中(31)之を下したる後、復た汗を發し、晝日煩躁して眠るを得不、夜而安静嘔せ不渇せ不表證無く、脉沈微、
身に大熱無き者は、乾薑附子湯之を主どる。
下した後で汗を発したところ、病人は昼間(10時頃から15時頃まで)は悶え苦しみ休むことが出来ないが、
夜間はその煩躁も静まり休める様になり、吐き気も無く、のども渇かず、熱くなったり寒くなったりもせず、
脈は沈んで皮膚を触っても熱くない者は、乾姜附子湯を使う。
太陽病中(32)發汗後身疼痛脉沈遲の者は、桂枝加芍藥生薑各一兩人參三兩新加湯之を主どる。
汗を出させた後で、身体が疼き痛み(衛気通わなければ疼き、栄気通わなければ痛む)、
脈が沈んで(表の陽虚の為に陽気が出れなくなり脈沈む)遅く(栄気疲れれば脈遅くなる)、
表塞がり栄気通ぜず裏に熱を持っている者には、桂枝湯で表の不和を解し、
桂枝湯に芍薬生姜(陰陽の気を補う)を各1gずつと人参(裏の熱を消す)3gを新たに加えた湯を使う。
太陽病中(33)發汗後更へて桂枝湯を行ふ可から不。汗出でて喘し大熱無き者は、
麻黄杏仁甘艸石膏湯を與へ之を主どる可し。
汗を発した後で栄の不和は除いたが、血の不和は除かれない者には、もう桂枝湯を用いてはいけない。
汗が出てゼェゼェいい大熱のない者は、麻杏甘石湯を与えてこれを治してやりなさい。
太陽病中(34)汗を發したること多きに過ぎ、其の人手を叉み自から心を冒へば心下悸し、
按を得んと欲する者は桂枝甘艸湯之を主どる。
発汗させたが汗の出が多過ぎて、自分の両手の指を組んで心臓の上へあてがい動悸を鎮めようとしたが、
今度は心臓の下の方も動悸がしだしたのでそこを誰かに押されてもらいたいと思う者は、桂枝甘草湯が中心となる。
(桂枝は陽気をたすけ表を開き、甘草は急迫症状を緩め肌肉を通ぜさす)
太陽病中(35)發汗後、其の人臍下悸する者は、奔豚を作さんと欲す。茯苓桂枝甘艸大棗湯之を主どる。
発汗した後、その病人が臍の下辺りに動悸がする者は、奔豚病を起こそうとしかかっているからである。
これには茯苓桂枝甘草大棗湯を使う。
太陽病中(36)發汗後に腹脹滿する者は、厚朴生薑甘艸半夏人參湯之を主どる。
汗を出させた後、お腹が急にパンパンに膨れて張り腹中が詰まって苦しむ者は、厚朴生姜甘草半夏人参湯を用いる。
太陽病中(37)傷寒若しくは吐し、若しくは下して後、心下逆滿氣上って胸を衝き、起きれば則ち頭眩し、
脉沈緊、汗を發すれば則ち經を動じ身振振と搖を爲す者は、茯苓桂枝白朮甘艸湯之を主どる。
傷寒病(外に熱が有る)を吐かせた後、または下した後、逆に(通常陽の気は上から下へいく)心下から上に満ちて
気が上って胸を衝き、起き上がろうとすると頭がグラグラして物が見えなくなり、
今まで脈浮であったのに沈緊に変った者や、傷寒病の者に発汗させて
その為に太陽の経脈を動じて身体がユラユラと震え動く者は、茯苓桂枝白朮甘草湯を用いる。
太陽病中(38)汗を發して病解せ不、反って惡寒する者は虚するが故也。芍藥甘艸附子湯之を主どる。
汗をかかせたが病は解けないばかりでなく悪寒が始まった者は、発汗に因って虚し悪化したからである。
こういう場合は芍薬甘草附子湯を用いる。
太陽病中(39)汗を發し若しくは之を下し、病仍ほ解せ不煩躁する者は、茯苓四逆湯之を主どる。
発汗させたり又は下したりしてみたが、病は相変わらず同じ様で、熱がって悶えだした者は、茯苓四逆湯を用いる。
太陽病中(40)汗を發したる後惡寒する者は虚するが故也。惡寒せ不、但だ熱する者は實也。当に胃氣を和すべし。
調胃承氣湯を與ふ。
発汗した後で悪寒が始まった者は虚した為である。発汗した後で悪寒せずただ熱がる様になった者は実したのである。
当然胃中の熱を取り去り胃気を調えてやれ。これには調胃承気湯を与えよ。
太陽病中(41)太陽病、發汗後大いに汗出で胃中乾き煩躁眠るを得不、水を飮むを得んと欲する者は、
少少與へ之を飮ませ胃氣をして和せ令むれば則ち愈ゆ。若し脉浮小便不利微熱消渇する者は、五苓散を與へて之を主どる。
太陽病を発汗した後で大いに汗が出て胃中が乾いて熱がり、眠る事が出来ず、
水が欲しいが誰か持ってきてくれないかと言う者には、少しずつ水を与えて飲ませ、胃の乾きを潤してやれば治る。
もし脈が浮いて小便が出ないで少し熱がり、いくら飲んでも渇きが止まない者は、五苓散を用いる。
太陽病中(42)汗を發し已りて脉浮數煩渇する者は五苓散之を主どる。
汗を発し終えて脈の浮数が解れないで、水を飲まずにはいられない者は、五苓散を用いる。
太陽病中(43)傷寒、汗出でて渇する者は、五苓散之を主どる。渇せ不る者は茯苓甘艸湯之を主どる。
傷寒を病んでいる時に自然に汗が出てきて喉が渇く者は、五苓散を用いる。汗をかきだしたが喉が渇かない者は、
茯苓甘草湯が中心となる
太陽病中(48)發汗吐下したる後、虚煩眠るを得不、若し劇しき者は必ず反覆顛倒し、心中懊ノウ(立心偏+農)す。
梔子シ(豆+支)湯之を主どる。
発汗させたり吐かせたり下したりした後、眠ることが出来ず、もし虚煩(頼り無い気持ちに苦しむ)が劇しい者は、
必ず落ち着いていられなくてゴロゴロ身体を動かし、心中が悩ましく何とも言えず心細くなる。
そういう者には梔子シ(豆+支)湯が中心となる。
太陽病中(49)若し少氣の者は梔子甘艸シ(豆+支)湯を主どる。若し嘔する者は梔子生薑シ(豆+支)湯之を主どる。
もし呼吸する力が少ない為に深く息を吸いこむことが出来ない者は、梔子甘草シ(豆+支)湯を用いる。
もしゲェーゲェーと飲食物を吐く者は、梔子生姜シ(豆+支)湯を用いる。
太陽病中(50)汗を發し若しくは之を下し、而して煩熱胸中塞がる者は梔子シ(豆+支)湯之を主どる。
汗を発し又はこれを下し、これより病人が熱がり悶えだし、胸の中が塞がる者は、梔子シ(豆+支)湯を用いる。
太陽病中(51)傷寒五六日、大いに之を下したる後、身熱去ら不、心中結痛する者は、未だ解せんと欲せ不る也。
梔子シ(豆+支)湯之を主どる。
傷寒を病み始めてから5日目か6日目に、大いに下したら高い熱はとれたが身の熱(体を触ると熱い)は去らないで
心中がキューっと縛られるように痛む者は、未だ解そうとしていないのである。それには梔子シ(豆+支)湯を用いる。
太陽病中(52)傷寒下した後、心煩腹滿臥起安から不る者は、梔子厚朴湯之を主どる。
傷寒を下した後、陽気が裏に入り胸中が悶え腹が満ち横になっても起きてもジッとしていられない者は梔子厚朴湯を用いる。
もしゲェーゲェーと飲食物を吐く者は、梔子生姜シ(豆+支)湯を用いる。
太陽病中(53)傷寒醫丸藥を以って大いに之を下し、身熱去ら不、微煩する者は、梔子乾薑湯之を主どる。
傷寒を病んでいる者に、医者が丸薬の下剤を用いて、大いに下して身体の熱が取り切れないで、
少し苦しみ悶えだした者は梔子乾姜湯を用いる。
太陽病中(55)太陽病、汗を發し汗出でて解せ不、其の人仍ほ發熱心下悸、頭眩身シン(目+門+王)動し、
振振として地をナ(テヘン+辟)でんと欲する者は真武湯を主どる。
太陽を病んでいる者に発汗させたところ、汗は出たがその発汗の為に虚した表に陽気が集まり発熱が解けず、
外に出ようとする陽気と外から入ってくる陽気とがぶつかり合い心下が動悸し、
頭中の陽気が虚して頭がクラクラし、血虚と気の大過により身体がブルブルと震え、
起き上がるとフラフラして前にのめりそうになる者は、真武湯を用いる。
太陽病中(61)汗家重ねて汗を發すれば、必ず恍惚として心乱れ小便已んで陰疼む。禹餘糧丸を與ふ。闕く。
汗をかいている者に更に汗をかかせると、陽気が失われ意識が鈍りボーっとし、津液不足して小便が出なくなり、
尿道乾けば痛を生ずる。そういう者には禹餘糧丸を与えるが宜しい。但しその方が記載されていない。
太陽病中(64)傷寒醫之を下し、続いて下痢を得、清穀止ま不身疼痛する者は急に当に裏を救ふべし。
後身疼痛清便自ら調ふ者は急に当に表を救ふべし。裏を救ふは四逆湯に宜しく、表を救ふは桂枝湯に宜し。
傷寒を病んで日数が経ち、病がそろそろ裏に入りかけた時に医者がこれを下してからずっと下利が止まらず、
腸の内容物が出て止まらなくなり、身体に痛みを生じる者は、急いで裏を救うべきである。
四逆湯を服した後、身の疼痛だけが残り、清便の方は自然に調ってきた者は、急いで表を救ってやるべきである。
裏を救うのは四逆湯が良い。表を救うのは桂枝湯が良い。
太陽病中(78)太陽病過經十餘日反って二三之を下し後、四五日柴胡の證仍ほ在る者には先ず小柴胡湯を與ふ。
嘔止まず心下急鬱鬱微煩する者は未だ解せ不と爲す也。大柴胡湯を與へ之を下せば則ち愈ゆ。
太陽病になり13〜18日目の間に、2〜3回下し、その後4〜5日してもまだ柴胡の証がなお有る者は、小柴胡湯を与えなさい。
服用しても嘔が止まず、みぞおちの下辺りがキューっと詰まり、窮屈で自由が利かない様な苦しみが有る者は、
まだ病気が解けないのである。大柴胡湯を与えてこれを下してやれば治る。
太陽病中(79)傷寒十三日解せ不、胸脇滿して嘔し、日ポ(日+甫)所に潮熱を發し已って而して微利するは
此本柴胡の證之を下して利することを得不るに、今反って利する者は知る。醫丸藥を以って之を下せるを其の治に非ざる也。
潮熱する者は實也。先ず宜しく小柴胡湯にて以って外を解し、後に柴胡加芒硝湯を以って之を主どるべし。
傷寒を患って13日間もそれが治らず、胸や脇が満ちて吐き、日暮れ間近になると潮熱を発し、
その後少ししてお腹が下るのは元来柴胡の証であるからこれを下しても腹が下る事にはならないのだが、
それが今くだらない者は、下るというのは医者が丸薬で下しをかけたからである。
丸薬でこれを下すというのは治る事にはならない。潮熱を発する者は実しているのである。
先ず小柴胡湯で外を解いてやり、次に柴胡加芒硝湯を用いてこれを主治してやるべきだ。
太陽病中(80)傷寒十三日解せ不、過經譫語する者は熱有るを以って也。当に湯を以って之を下すべし。
若し小便利する者は、大便当にかた(革+更)かるべし。而るに反って下利し脉調和する者は知る。
醫丸藥を以って之を下すを其の治に非ざる也。若し自下利する者は、脉当に微厥すべし。
今反って和する者、此を内實と爲す也。調胃承氣湯之を主どる。
傷寒が13日取れないで13日目になってうわごとを言い始めた者は、熱が内に実した為の表れだから、
当に湯薬でこれを下してやれ。もし小便が普通に出る者は大便が硬いはずである。
それがアベコベに腹が下り脈が乱れていない者は医者が丸薬で下したという事が分かる。
医者が丸薬を用いて下すことは、やり方が間違っている。もし自然に下痢しだした者は、
脈が微かに厥(脈の打ち方が始め大きく段々と小さくなり段々と大きくなっていく)になる。
今その理に背いて調っている者は、これを内実とする。調胃承気湯が中心となる。
太陽病中(82)傷寒八九日、之を下し胸滿煩驚小便不利譫語一身盡く重く轉側す可から不る者は 柴胡加龍骨牡蠣湯之を主どる。
傷寒になって8日目か9日目頃にこれを下したところ、胸が満つり、ビクビクと驚きやすくなり、小便が出にくく、
うわごとを言い、身体を動かすが重くて身動きも出来なくなった者は、柴胡加竜骨牡蛎湯が中心となる。
太陽病中(95)火逆之を下し焼鍼に因って煩躁する者は桂枝甘艸龍骨牡蠣湯之を主どる。
火を用いた為に変証したものを下し、焼鍼に因ってもだえ苦しむ者は、桂枝甘草龍骨牡蠣湯が中心となる。
太陽病下(7)太陽病脉浮にして動數、浮は則ち風と爲し、數は則ち熱と爲し、動は則ち痛みと爲し、數は則ち虚と爲す。
頭痛發熱微に盗汗出でて而も反って悪寒する者は、表未だ解せざる也。醫反って之を下し、
動數遅に變じ膈内拒痛胃中空虚客気膈を動じ、短氣躁煩心中懊ノウ(立心偏+農)、陽氣内に陥り、
心下因ってカタ(革+更)きは、則ち結胸と爲す。大陷胸湯之を主どる。若し結胸せず、但頭汗出で、餘に汗無く、
頸で劑りて還り、小便不利すれば身必ず黄を發す也。
太陽病で脈浮で指触りの動きが荒々しく早い者は、その脈浮は風から来て、数脈は熱から来ているのだ。
脈の動きが荒々しいのは痛みがある印であり、数脈は虚から来ているのである。
頭痛、発熱、少し寝汗をかき、しかも反って悪寒する者は、表が未だ解けてないのである。
医者がアベコベに下しをかけ、早かった脈が遅くなり、胸中の下部で腹に接した所が拒むように痛み、
胃中は空っぽだが、外から来た膈(胸中の下部で腹の接した所)を動かし、息が早くて苦しく
ジッとしていられなくなり心中がやるせない気持ちになり、外に在った陽気が内部に落ち込み、
その為に自分でも心下が硬いのが分かり、外から触っても硬いのは、これを結胸とする。そういう時は大陷胸湯を用いる。
もし下した後で結胸にならないで、但だ頭からだけ汗が出てて他には汗が無く、
首を境にして汗の出る所と汗が出ない所がハッキリと仕切られ、
小便が出ないのは、身体に必ず黄疸を発するものである。
太陽病下(10)太陽病重ねて汗を發し、而して復た之を下し、大便せ不ること五六日、舌上燥して渇し、
日ポ(日+甫)所小し潮熱有り、心下從り少腹に至ってコウ(革+更)滿して痛み、近ずく可から不る者は、大陷胸湯之を主どる。
太陽病で一度汗を発したが治らないので何回も汗を発して更に下しをかけたら大便が出なくなり、
大便が出なくなって5〜6日も経つと、舌の表面がカラカラに乾いてはしゃぎ、
夕方近くになると少し潮熱が出て来るようになり、心下から下腹にかけて硬く張って痛み、
その痛みは少しの音でも激しく痛ませるから近寄れない。そういう者には大陷胸湯が中心となる。
太陽病下(20)傷寒五六日已に汗を發し、而して復た之を下し、胸脅滿微結小便不利渇して嘔せず、
但だ頭汗出で、往来寒熱心煩する者、此れ未だ解せずと爲す也。柴胡桂枝乾薑湯之を主どる。
傷寒にかかって5日目か6日目に、既に汗を発した上に下しまでして胸や両脇が張って少し堅くなり、
これを触ると痛み、小便の出が悪く、喉が渇いて嘔はせず、但だ頭だけから汗が出て、
寒と熱とが行ったり来たりし、胸苦しい者は、これは未だ解けないという事だ。
そういう者には柴胡桂枝乾姜湯が中心となる。
太陽病下(22)傷寒五六日、嘔して發熱する者は、柴胡湯の證具る。而に他藥を以って之を下し、柴胡の證仍お在る者は、
復た柴胡湯を與う。此れ已に之を下すと雖えども、逆を爲さ不、必ず蒸蒸として振ひ却って發熱汗出でて解す。
若し心下滿してコウ(革+更)痛する者は、此れを結胸と爲す也。大陷胸湯之を主どる。
但だ滿して痛ま不る者は、此を痞と爲す。柴胡之を與うるに中ら不。半夏瀉心湯に宜し。
傷寒にかかって5〜6日経った時に、ゲェゲェと吐き、発熱した者は、小柴胡湯の証が調っている。
それを他薬で下しをかけても柴胡の証が残っている者には、重ねて小柴胡湯を与えてやりなさい。
そうすると、これは下した後だが病証は変わっていないから必ず蒸し蒸しと熱くなり震えてきて下す前の様に
熱が出てそれから汗が出て解ける。もし下した後で心下が満って堅くなり、そこを触ると痛む者は、
これは柴胡の証が変じて結胸となったのである。そういう者には大陷胸湯が中心となる。ただ心下は満るが堅くはなく、
そこを触っても痛まない者は、これは変じて痞となったのであるから大陷胸湯はもちろんのこと、
柴胡剤を与えても駄目なので、これには半夏瀉心湯がよい。
太陽病下(29)本之を下すを以って、故に心下痞し、瀉心湯を與へて痞解せず。其の人渇して口燥煩小便不利する者は、
五苓散之を主どる。
下した為に心下が痞え、瀉心湯を服しても痞えが解けず、その人は喉が渇いて口中がはしゃいでたまらなくなり、
小便の出が悪い者は、五苓散が中心となる。
太陽病下(30)傷寒汗出で解するの後、胃中和せ不、心下痞コウ(革+更)、乾噫食臭脅下水氣有り、
腹中雷鳴下利する者は、生薑瀉心湯之を主どる。
傷寒を病んでいる者が自然に汗が出て病が解けた後、胃中が調わず心下が痞えて堅くなり、
ゲップをしたら食物の匂いがし、脇下に水が有る為に腹中がゴロゴロと鳴り下痢をする者は、生姜瀉心湯が中心となる。
太陽病下(31)傷寒中風、醫反って之を下し、其の人下利日に数十行穀化せ不、腹中雷鳴心下痞コウ(革+更)して滿、
乾嘔心煩安きを得不、醫心下痞するを見て、病盡き不と謂い、復た之を下し、其の痞uす甚し。此れ結熱に非らず。
但だ胃中虚し、客氣上逆するを、以ての故にコウ(革+更)から使むる也。甘艸瀉心湯之を主どる。
傷寒病や中風病で、表が未だ解けていない者を医者が下した為にその人は下痢が始まり一日数十回も下痢し、
穀物が消化しない為に腹中がゴロゴロと鳴り、心下が痞えて堅く張り、乾嘔と心煩とがあるから病人が心落ち着かないのを、
医者は心下が痞えて堅いのを診て、これは病が未だ取り切れていないのだと言い、またこれを下したところ、
その痞えて堅いのが前よりずっと酷くなった。これは結熱に因るものではなく、
胃中が虚している所へ外から入ってきた気が上逆してきて、それで堅くさせただけなのである。
これには甘草瀉心湯が中心となる。
太陽病下(32)傷寒投藥を服して、下利止ま不、心下痞コウ(革+更)す。瀉心湯を服し已り、復た他藥を以って之を下し、
利止まず、醫理中を以って之を與へしに、利uす甚だし。理中は中焦を理す。此の利は下焦に在り、
赤石脂禹餘粮湯之を主どる。復た利止ま不る者は、当に其の小便を利すべし。
傷寒病の時に下剤の湯薬を用いて下したところ、それから下痢が始まって止まず、心下が痞えて堅くなったので
瀉心湯類を呑ませたが効果が無い。そこで更に他薬で下してみたが、やはり下痢も止まず心下痞コウ(革+更)も解けないので、
医者が理中丸を与えてみたところ下痢は増々酷くなった。元来、理中丸というものは、中焦を調えるものであるから、
調わないものが中焦に在れば下痢は治るわけだがこの理中丸を用いて下痢が酷くなった者は、この下痢は中焦に在るのではなく
下焦に在るのである。これには赤石脂禹餘粮湯が中心となる。ところで赤石脂禹餘粮湯を呑んで一旦止まった下痢が
再び始まって止まない者は、これは病が膀胱の方にあるわけだから、当然その小便を出してやれば治るはずだ。
太陽病下(33)傷寒吐下して後、汗を發し、虚煩脉甚だ微、八九日、心下痞コウ(革+更)脅下痛み、氣上って咽喉を衝き、
眩冒經脉動タする者は、久しくして痿と成る。
傷寒病を自ら吐いたり下したりした後で汗を発し、別に痛いところも苦しい所も無いのに、気が落ち着かず、
脈が甚だ微となり、それが8〜9日も続いて心下が痞えて堅く、横腹が痛み、気が上昇して咽喉を衝き、
目が眩み、経脈が通っている道がドックンドックンと縮まる様に動く者は、時間が経つと足が利かなくなってしまう。
太陽病下(34)傷寒、汗を發し、若しくは吐し、若しくは下し後、心下痞コウ(革+更)、噫氣除け不る者は、
旋復代赭石湯之を主どる。
傷寒の病を、発汗か吐剤か下剤で攻めた為に熱は解けたが、その後心下が痞えて堅くなり、ゲップの気が除けない者は、
旋復代赭石湯が中心となる。
太陽病下(35)下後、更に桂枝湯を行ふ可から不。若し汗出でて喘し大熱無き者は、麻黄杏子甘艸石膏湯を與う。
下した後で続けて桂枝湯を用いて発汗させてはいけないが、もしも下した後で汗が出て胸がゼィゼィといい、
高い熱が無い者は、麻黄杏子甘草石膏湯なら与えてもいい。
太陽病下(36)太陽病、外證未だ除かざるに數ば之を下し、遂に協熱して利し、利下止ま不、
心下痞コウ(革+更)表裏解せ不る者は、桂枝人參湯之を主どる。
太陽病で、悪寒、発熱、汗出て喘する等の外証が在り、未だにそれらが除かれていないのを何度も下した為に、
遂に裏寒が表熱に逆らえなくなって下痢がチビチビ出て止まらなくなり、心下が痞えて堅く、
表も裏も解けないでいる者は、桂枝人参湯が中心となる。
太陽病下(37)傷寒大いに下して後、復た汗を發し、心下痞惡寒する者は、表未だ解せ不る也。
痞を攻む可から不。当に先ず表を解すべし。表解せば、乃ち痞を攻む可し。表を解するには、桂枝湯が宜しく、
痞を攻むるには大黄黄連瀉心湯が宜し。
傷寒を大いに下し、また汗を発し、その為に心下が痞えて悪寒する者は、表が未だ解けていないのである。
心下が痞えて苦しんでいても痞えを攻めてはいけない。こういう場合は先ず第一に表を解くべきである。
そして表が解けたら次に痞えを攻めてやるべきである。その表を解くには何が良いかと言えば桂枝湯が良い。
痞えを解くには大黄黄連瀉心湯が良いのである。
太陽病下(38)傷寒、發熱汗出でて解せ不、心中痞コウ(革+更)嘔吐して下利する者は、大柴胡湯之を主どる。
傷寒病で発熱している者が汗をかき出だしたが病は解けず、心中が痞えて堅くなり、嘔吐して下痢する者は、
大柴胡湯が中心となる。
太陽病下(41)傷寒病、若しくは吐し、若しくは下して後、七八日解せ不、熱結裏に在り、表裏倶に熱し、
時時惡風大いに渇し、舌上乾燥して煩し、水數升飮まんと欲する者は、白虎加人參湯之を主どる。
傷寒の病を患っている者を吐かせたり又は下したにもかかわらず、病は7〜8日も解けず、熱の寄りが皮膚の裏側に在り、
表も裏も熱く、時々悪風し、大いに喉が渇き、舌の上がカラカラに乾いて我慢できず、水を何合も飲もうとする者は、
白虎加人参湯が中心となる。
陽明病(36)傷寒若しくは吐し若しくは下し、後解す不。大便せ不ること五六日より上りて十餘日に至り
日ポ(日+甫)所潮熱を發し悪寒せ不獨語鬼を見る状の如し。若し劇き者は發すれば則ち人を識ら不、
循衣模牀タして安から不微喘直視す。脉弦なる者は生き、ジュウ(サンズイ+嗇)なる者は死す。
微なる者は但だ發熱譫語する者は大承氣湯之を主どる。若し一服して利すれば後服を止む。
傷寒を、吐かされたり下されたりしたが解けないで、その後に大便をしなくなり、
それが5〜6日から多い時には10日以上も経ち、午後3時から午後5時の間に潮熱を発し、悪寒はしないが、
ひとり言でいかにも死者の霊とでも話している様に見え、その病証が酷い者は、潮熱が始まると、
気が遠くなり無意識に来ている服を撫でまわしたり敷いている布団を何か物でも探す様な仕草をしたり、
絶えず体をビクビク震わせ軽い喘鳴(ヒューヒューゼイゼイ)を発して目玉が動かず、脈弦の者は生き、
脈渋の者は死んでしまう。もし証候がそんなに劇しくない者で、但だ発熱してうわ言を言うだけの者は、
大承気湯が中心となる。もし一服して大便が出れば、後は服用させない。
陽明病(41)汗出で譫語する者は燥屎有り胃中に在るを以って此を風と爲す也。須く之を下すべし。
過經は則ち之を下す可し。若し早ければ語言必ず亂る。表虚裏實を以ての故也。之を下せば則ち愈ゆ。大承氣湯に宜し。
汗が出始めるとうわ言を言い出した者は、燥いた糞が腸の中に在る為で、これは陽明の中風とみなすのである。
この風から来ている者は、下して治してやるべきである。
また病が六経(太陽経・陽明経・少陽経・太陰経・少陰経・厥陰経)を行ぐり盡してなお癒えずうわ言を言う者も下してやれ。
もし下すのが早ければ言語が必ず乱れる。これは下しにより外が空(表虚)になり裏が詰まった(裏実)為である。
だからこれを下してやれば癒える。それには大承気湯がよい。
陽明病(43)三陽合病、腹滿身重以って轉側し難く口不仁而面垢譫語遺尿し汗を發すれば則ち譫語し、
之を下せば則ち額上汗を生じ手足逆冷す。若し自汗出づる者は、白虎湯之を主どる。
太陽(発汗)陽明(下す)少陽(どちらともいえない)の合病で、腹が満り身体が重く、その為に寝返りも出来ず、
口が緩み閉じる事が出来ず(唇を脾の属と爲す陽明の熱陰を蒸せば唇締まりを怠り口不仁を為す)、
顔に垢でもついている様に汚れた感じで艶が無く、うわ言を言い、小便を知らずに漏らし、
汗を発してやると余計にうわ言が激しくなり、下してやると額の上から生汗を出し、手足が逆冷する。
もし自ら汗が出る者は、白虎湯が中心となる。(下した後も、発汗させた後も、発汗や下しをしていなくても、どれも皆同じ)
陽明病(45)陽明病、脉浮而緊、咽燥、口苦、腹滿、而喘、發熱、汗出で、悪寒せ不、反って惡熱身重す。
若し汗を發すれば則ち燥し、心カイ(リッシンベン+貴)カイ(リッシンベン+貴)として、反って譫語し、
若し焼鍼を加ふれば、必ずジュッ(りっしんべん+朮)タ煩躁眠るを得不。
若し之を下せば則ち胃中空虚客氣膈を動じ心中懊ノウ(立心偏+農)す。舌上胎の者は梔子シ(豆+支)湯之を主どる。
若し渇し水を飮まんと欲し、口乾舌燥する者は、白虎加人參湯之を主どる。
若し脉浮、發熱渇し水を飮まんと欲し小便不利する者は、猪苓湯之を主どる。
陽明病で、脈浮緊で咽が燥き、口が苦く、腹が満って、ゼイゼイと言い、発熱して汗が出るが、悪寒はせず、反対に熱がり、
体が重くなる。若し焼鍼を加ふれば、必ずジュッ(りっしんべん+朮)タ煩躁眠るを得不。
もし汗を発すると余計に熱がり、心がフワフワして気持ちが乱れ逆にうわ言を言い出し、
もし焼鍼を刺すと、必ず怯えた様に体を縮めてビクビクさせ、酷く熱がって眠ることが出来なくなる。
もしこれを下せば胃中が空っぽになり、外から来た気が腹部と胸部の間を動かし心中が淋しく悩ましく
何とも言えないやるせない気持ちになり、舌上に苔を生じた者は、梔子シ(豆+支)湯が中心となる。
もし咽が渇して水を飲みたがり、口が乾いて舌が燥いている者は、これは白虎加人参湯が中心となる。
もし脈浮で発熱し、咽が渇いて水を飲みたがり、小便が出にくい者は、猪苓湯が中心となる。
陽明病(50)陽明病、之を下し、其の外に熱有り手足温かく、結胸せ不、心中懊ノウ(立心偏+農)、飢えて食する能は不。
但だ頭汗出づる者は、梔子シ(豆+支)湯之を主どる。
陽明病を下し、外に熱が有り手足が既に温かく、心下満痛せず、心中が何とも言えないやるせない気持ちが有り、
空腹感が有って食べたくなるが、いざ食べようとすると急に食べたくなくなって食べられず、
但だ頭だけに汗が出る者は、梔子シ(豆+支)湯が中心となる。
陽明病(54)陽明病、自汗出で、若しくは汗を發し小便自利する者は、此れ津液内に竭すると爲す。
硬しと雖も之を攻む可から不。當に須く自から大便せんと欲するをまつべし。宜しく蜜煎導にて(而)之を通ずべし。
若しくは土瓜根及び大猪膽汁も與に皆導を為す可し。
陽明病で、自然に汗が出て、若しくは発汗した為に汗が多く出て、小便が自然に出る者は、
これは身体に巡っている水分が尽きているのだ。だから糞は硬くなり便通が無くても、下しをかけて出してはいけない。
出来る限り自然に大便を催してくるのを待つべきであり、こういう場合には蜜煎導で便通をつけてやれ。
若しくは蜜煎導だけではなく、土瓜根や大猪膽汁などの導法を用いて、
病苦を緩め、なおかつ熱の結するのを防いでやりなさい。
陽明病(59)陽明病、之を下し心中懊ノウ(立心偏+農)而煩し胃中に燥屎有る者は攻む可し。
腹微しく滿する者は初頭カタ(革+更)く後必ず溏す。之を攻む可から不。若し燥屎有る者は大承氣湯に宜し。
陽明病で、これを下し、心中が悩ましく悶え、腹中に燥いた糞が有る者は、これを下してやりなさい。
腹が少し満っている者は、糞が初めの方は硬く固まっているが後の方が必ず泥状の様に緩んでいるから、
これを下してはいけない。もし燥いた糞が有る者は、下そうとするなら大承気湯がよい。
陽明病(62)大いに下して後六七日大便せ不、煩解せ不腹滿痛の者は、此れ燥屎有る也。
然る所以の者は本宿食有るが故也。大承氣湯に宜し。
大いに下した後、6〜7日も大便が出ず以前からある煩熱も解れず腹が満って痛む者はこれは燥いた糞があるのであって、
その燥いた糞が出来た訳は、この病気を発する前から宿食が有ったのである。そしてこの燥いた糞を除くには大承気湯がよい。
陽明病(71)傷寒、吐後腹脹滿する者は調胃承氣湯與ふ。
傷寒を吐薬を用いて吐かせたら、腹が膨れ上がって満る者は、調胃承気湯を与える。
陽明病(72)太陽病、若しくは吐し若しくは下し若しくは汗を發し微しく煩し小便數、大便因ってカタ(革+更)き者は、
小承氣湯を與へ之を和すれば愈ゆ。
太陽病を吐かせたり下したり汗を発したりして、軽い熱証や小便の回数が多くなり、
その為に大便が硬くなって出なくなる者は、小承気湯を与えてその熱を和らげてやれば癒える。
陽明病(73)病を得てから二三日脉弱し、太陽柴胡の證無く、煩躁し心下カタ(革+更)く四五日に至れば、食し能ふと雖も
小承氣湯を以て少少與へて微に之を和し小しく安から令む。六日に至り承氣湯一升を與ふ。
若し大便せ不六七日小便少なき者は、食する能は不と雖も但だ初頭カタ(革+更)く後は必ず溏す。
未だ定まりてカタ(革+更)きを爲さず、之を攻むれば必ず溏す。
須く小便利し屎の定コウ(革+更)するをまちて乃ち之を攻む可し。大承氣湯に宜し。
病を得てから二日か三日目に脈が弱く、太陽病や柴胡の証が無く、煩躁(熱がりもがき苦しむ)し、みぞおちの下が硬い者は、
四〜五日したら物が食べれるようになっても小承気湯を少し与え、腹の熱を抑えて少し落ち着かせてやり、
六日目になってから大承気湯を40t与える。もし大便が六〜七日も出ず小便の出が少ない者は、
物が食べられなくてもこれは但だ大便の初めが硬いだけで、後の方は必ずドロドロした便が出る。
未だ大便が硬くないのに、之を下せば必ず下痢になる。
当然、小便の出が良くなり大便がすっかり硬くなるのを待ってから之を下してやるべきである。
それには大承気湯を用いるがよい。
陽明病(79)病人表裏の證無く發熱七八日なれば脉浮數の者と雖も之を下す可し。假令已に下して脉數解せ不、
合熱すれば則ち消穀善飢す。六七日に至るも大便せ不る者はオ(ヤマイダレ+於)血有り。抵當湯に宜し。
病人に表裏の証が無いのに七〜八日も発熱が続いている場合は、脈が浮数であっても胃熱と診て之を下してやりなさい。
ところが、もしこれを下した後で脈の浮は解れたが数脈だけは解れないで、下しにより外から入ってきた熱と
最初から内に有った熱とが合熱すると、消化が良すぎて無性に腹が減ってくる。
六〜七日も大便が出ない者はオ(ヤマイダレ+於)血が有るのであって、その治す方法は抵当湯を用いるがよい。
太陰病(7)本太陽病醫反って之を下し、因って腹滿、時に痛む者は、太陰に屬する也。桂枝加芍藥湯之を主どる。
始め太陽病だった時に、医者が見分ける間もなく反ってこれを下し、その為に腹が満って時々痛む者は、
太陰に属したのである。これには桂枝加芍薬湯が中心となる。
陽明病(34)傷寒本自から寒下するを、醫復た之を吐下し、寒格更に逆吐下し、乾薑黄連黄ゴン(草冠+今)人參湯之を主どる。
若し食口に入れば即ち吐するは、乾薑黄連黄ゴン(草冠+今)人參湯之を主どる。
傷寒を病み、前から冷えて下痢している者を医者が吐かせたり下したりした為に前から有る寒が新規に入ってきた邪を阻んで、
それにより更に吐き下しを発し、もし食べ物を口に入れれば途端に吐き出す者は、乾姜黄連黄ゴン(草冠+今)人参湯が中心となる。
陽明病(51)下利の後、更に煩し、之を按ずれば心下濡なる者は虚煩と爲す也。梔子シ(豆+支)湯に宜し。
下痢をした後で更に心下部に煩する所が有り、そこの所を押えて軟らかい者はその煩を虚煩(実する所が無くて生じたもの)
とするのである。そういう者には梔子シ(豆+支)湯がよい。
以上、六十六証
《発汗吐下後の脉證併せて治を辨ず・第二十二》
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