更新日 1990年(平成2年)6月19日〜2023年(令和5年10月4日)
※ 私なりの解釈なので、あくまでも参考までに。
※ 突然の解説変更ございます。
霍乱病脉證并びに治・第十三
霍乱の病の脈状と証候ならびに、それに対する治方を詳しく述べたもの・第十三
(1)問ふて曰はく、病に霍乱なる者有り、何ぞ也。
お伺いします、病に霍乱病がありますが、これはどんな病気なのでしょうか
答へて曰はく、嘔して利するを名づけて霍乱と曰ふ。
師匠が答える、嘔して下痢を伴う病を霍乱というのである。
(2)問ふて曰はく、發熱頭痛身疼惡寒吐利を病む者は之何れの病に属するや。
お伺いします、最初に発熱して頭痛が起こり身体が疼んで悪寒し吐き下しをする者がいますが、
これは何病の中に属するのでしょうか。
答へて曰はく、此れを霍乱と名づく。自から吐下又は利止んで復た更に發熱する也。
師匠が答える、これを霍乱と名付くものであり、その病というものは、自然に嘔吐と下痢が始まり、
又は下痢が止んだと思えば更にまた発熱するものである。
(3)傷寒其の脉微澀なる者は、本是れ霍乱なるに
傷寒を病んで、吐き下ししているその脈が微(陽微)渋(亡血)の者は、本来霍乱の脈証である。
今是れ傷寒反って四五日陰經上に至り轉じて陰に入れば必ず利す。
それが今傷寒病でこの脈証を現わしているのは、傷寒伝経の際、寒邪が陰経(太陰・少陰・厥陰の三経)上から
陰に転入(陽経から陰経に)した為に生じたもので、それは今から四〜五日前に当たる。そうなると必ず下痢をする。
本嘔して下利する者は治す可から不る也。大便に似て而して失氣せんと欲し、
元々嘔があり、その嘔に今度の下痢が加わった者は表虚甚だしいので治してはいけない。
しかも陰経上に至った時に下痢は生じないで大便ではなく放尻ばかり出したがり
仍ほ利せ不る者は陽明に属する也。便必ずカタ(革+更)し。十三日に愈ゆ。
しかも大便は思う様に出ない者は、陽明に属したのであり大便は硬く、これは十三日目に治る。
然る所以の者は、經を盡すが故也。
その理由は、十三日目には病が経を行ぐりつくすからである。
(4)下利の後は當に便カタ(革+更)かるべし。カタ(革+更)くして則ち能く食する者は愈ゆ。今反って食する能は不。
下痢の後は当然大便は硬くなるはずであるが硬くならないでよく物が食べられる者は病は治る。
それが今大便は硬くなったが一向に物が食べられず、
後經中に到り頗る能く食し、復た一經を過て能く食するは之を過ぐる。一日に當に愈ゆべし。愈え不る者は陽明に属せ不る也。
次の六日中に至って少し食べられる様になり、復た次の六日中になってよく食べられる様になった者は、
その翌日になって当然治るべきであり、治らない者は陽明に属さないのである。
(5)惡寒し脉微而復た利し、利止むは亡血也。四逆加人參湯之を主どる。
悪寒して脈が微で二度目の下痢が自然に止んだ者は、血を亡ぼした為に下痢が止んだのである。
四逆加人参湯が中心となる。
(6)霍乱頭痛發熱身疼痛熱多く水を飮まんと欲する者は、五苓散之を主どる。
霍乱病で頭痛発熱身疼痛して熱多く、水を飲みたがる者は五苓散が中心となる。
寒多く水を用い不る者は理中丸之を主どる。
寒気多く水を必要としない者は理中丸が中心となる。
理中丸の方 人参 甘艸炙る 白朮 乾薑已上各三兩
理中丸の作り方 人参 甘草炙る 白朮 乾姜 各3g
右四味を搗き、篩いて末と爲し、蜜を和して、鶏黄大の如くに丸め、沸湯數合を以って一丸を和し、研碎し、
温かくして之を服す。日に三四、夜二服。
右の四味を杵いて篩で末として蜂蜜で和し一丸2〜3g位の大きさに丸め、沸騰したお湯数合と共に一丸を擦り潰して
混ぜ合わせ、温かくしてこれを服す。日中3〜4回、夜2回服す。
腹中未だ熱さざればuして三四丸を至る。然れども湯には及ばず。湯法は四物を以い兩數に依りて切し、
病人の腹中が未だ温まらない様なら1回量3〜4丸に増やしてやれ。増やしたとしても煎じ薬には敵わない。
湯薬を作る方法は理中丸の四物をもって前の四味を記載してある両の数だけ取って刻み
水八升を用いニ(者+火)て三升を取り、滓を去り、一升を温服す。日に三服。
水320tと共に120tになるまで煮詰めて滓を去り、40tを温め服す。1日3回服す。
加減の方 若し臍上築する者は腎氣の動也。朮を去り、桂四兩を加ふ。
加減の方法 もし臍の真上がドキンドキンと脈打つ者は、腎気が動ずる事(水虚し気満る)によってこの脈が生ずる。
朮を去り代わりに気を散らす桂枝を加える。
吐多き者は朮を去り生薑三兩を加ふ。
吐き気が多い者は陽気の力が足らず散らすのは難しく、そして朮は陰気を補い陽気の発散を防ぐから朮を取り去り、
補陽の生姜3gを加える。
下り多き者は還って朮を用い悸する者は茯苓二兩を加ふ。
下痢が多い者は始めに戻って人参湯(人参湯を丸にした物が理中丸)でもよいが、朮は陽気の散らばりを防ぎ、
反って内を温めるのでそのまま朮を用い、水が心下に留まって動悸する者は茯苓2gを加える。
渇して水を飲まんと欲する者は、朮を加へ、前に足して四兩半と成す。
のどが渇いて水を欲しがる者は、これは吐き下しにより身体に入った水(津液)を亡ぼし津液を失ったもので、
外にそれの発散を防ぎ内を潤す為に朮を増やし4.5gとする。
腹中痛む者は人參を加へ、前に足して四兩半と成す。
腹中が痛む者はこれは吐き下しにより内が乾いて痛むものである。人参は乾きを潤して
熱を鎮める(人参は甘微寒でよく乾きを潤し急を緩める)。だから人参を増やして4.5gとする。
寒がる者は乾薑を加へ前に足して四兩半と成す。
寒がる者は吐き下しにより内の陽気を損ずることが多く、だから乾姜を増やして4.5gとして内を温める。
腹滿する者は、朮を去り附子一枚を加ふ。湯を服して後、食頃の如くにして熱粥一升許を飮み、
腹満する者は理中湯から白朮を取り去り代わりに附子一枚を加え、
湯を服したら15分位して熱く薄い重湯を200t許り飲ませてやんわりと身体を温めてやる。
微に自から温め衣被を發掲すること勿れ。
この際、着物を開いたり掛けている物を捲くったりすると身体を冷やしてしまうからそういう事をさせない様にしなさい。
(7)吐利止みて身痛休ま不る者は、當に消息して其の外を和解すべし。宜しく桂枝湯にて少しく之を和すべし。
吐き下しが止んでも身痛が止まない者には、その痛みが尚も裏に在るか、或は外に在るかをよく調べ、
内に無いと決まれば外を和解してやりなさい。それには桂枝湯で少な目に発汗させて表を和ませてやれ。
(8)吐利し汗出で發熱惡寒四肢拘急手足厥冷する者は四逆湯之を主どる。
吐き下しをして汗が出ている中に発熱、悪寒、腕や足が曲がって伸びず手足が厥冷する者は、四逆湯が中心となる。
(9)既に吐し且つ利し、小便復た利して大いに汗出で下利清穀し内寒外熱し
始め吐き下しをしていた者が、その吐も下痢も既に止んでしまい、それまで小便の出が悪かった者が
再び小便が出だしてから大いに汗が出て下痢清穀が始まり、身体に熱が有るのに寒がり、
脉微絶せんと欲する者は四逆湯之を主どる。
脈は微で絶えそうになる者は、四逆湯が中心となる。
(10)吐已み下斷じ汗出でて厥し、四肢拘急解せ不脉微絶せんと欲する者は、通脉四逆加猪膽汁湯之を主どる。
吐き下しをしていた者が、吐も止み下痢も止んで汗が出て手足が冷たくなり前から在る四肢の拘急も解せ不
脈が微で絶えそうになる者は、通脈四逆加猪膽汁湯が中心となる。
通脉四逆加猪膽汁湯の方 四逆湯方内にて猪膽汁半合を加入す。餘は前法に依りて服す。
如し猪膽無ければ洋膽を以って之に代ゆ。
通脈四逆加猪膽汁湯の作り方 四逆湯の中に猪膽汁1tを加える。後は前法に従って服す。
もし猪膽汁が無ければ、羊膽をもって代用とする。
甘艸二兩炙る 附子大者一枚を生用皮を去り八片破る 乾薑三兩強人四兩可 猪膽汁半合
甘草2g炙る 附子生乾0.3g 乾姜3g丈夫な人は4g可 猪膽汁1t(乾物0.2gと水1tを加えて溶解)
右の三味を水三升を以てニ(者+火)て一升二合を取り、滓を去り、猪膽汁を内れ、和し相得さ令む。分温再服。
其の脉即ち出づる者は愈ゆ。
右の三味を水120tと共に50tになるまで煮詰めて滓を去り、その中に猪膽汁を入れてよくかきまぜて混じり合わせ、
二回に分けて温め服す。脈が微で絶えそうであった脈が打ち出した者は治る。
(11)吐利發汗し脉平にして小煩する者は新虚穀氣に勝へ不るを以っての故也。
吐き下しや発汗した後で脈が平常に復活してから軽く悶えだした者は、新規に体が衰弱した所に食物を食べて
穀物(栄血)から生じた力が加わり、その穀気の力に負かされたからである。
《霍乱病脉證并びに治・第十三》
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