更新日 2002年(平成14年)月日〜2023年(令和5年)10月24日
※ 私なりの解釈なので、あくまでも参考までに。
※ 突然の解説変更ございます。
瘧病の脉證并びに治・第四
瘧病(悪寒と発熱を交互に発する病・マラリア等)の脈状と証候ならびに、
それに対する治方を詳しく述べたもの・第四
(1)師の曰く、瘧は脉自から弦。弦數なる者は熱多く、弦遲なる者は寒多し。
師匠が言う、瘧病というものは皆脈が弦を表すものであって、弦で数の者は熱が多く、弦で遅の者は寒気の方が多い。
弦小緊なる者は之を下せば差ゆ。弦遲なる者は之を温む可し。弦緊なる者は汗を發し鍼灸す可き也。
弦で小緊ある脈の者はこれを下せば癒え、弦で遅の者はこれを温めやる。
また弦で緊の者は薬を与えて発汗させたり針灸をもって温めてやり、
浮大なる者は之を吐す可し。弦數なる者は風發也。飮食以って消息して之を止む。
脈が浮大の者は吐剤類を用いて吐かせてやり、弦数の者は陽気の加減により発する一種の風邪であるから、
軽微の病なら特に薬や針灸を用いることなく但だ飲食物に気を付け病の様子を診て自然に治していきなさい。
(2)病む所の瘧、月の一日を以て發すれば、當に十五日を以て愈ゆべし。設し差へ不れば當に月を盡して解すべし。
如し其の差へ不るものは當に何と云ふ。
瘧病の発作が月に一日始まった者は十五日になれば愈ゆる。もし月中の十五日に癒え損ねた者は、
月の最終日になれば愈ゆるのが決まりなのに、最終日を過ぎても依然として癒えない者が居たら、
それはどういうことなのですか。
師の曰く、此結んでチョウ(ヤマイダレ+徴)カ(ヤマイダレ+暇-日)を爲す。名づけて瘧母と曰ふ。急に之を治せ。鼈甲煎丸に宜し。
師匠が言う、これは病気が一カ所に寄って一種の堅いしこりの病つまり瘧母という病になったのである。
前兆であるからこれは早く治さないといけない。それには鼈甲煎丸を用いるがよい。
鼈甲煎丸の方 鼈甲十二分炙 烏扇三分燒 黄ゴン(草冠+今)三分 柴胡六分 鼠婦三分 乾薑三分 大黄三分
芍藥五分 桂枝三分 テイ(草冠+亭)レキ(草冠+歴)一分熬 石韋三分毛去る 厚朴三分 牡丹五分心を去る
瞿麥二分 柴イ(草冠+威三分 半夏一分 人參一分 シャ(庶+虫)蟲)五分熬る 阿膠三分炙る 蜂窩四分炙る
赤消十二分 キョウ(虫+羌+ム)ロウ(虫+良)六分熬る 桃仁二分
鼈甲煎丸の作り方 鼈甲12g炙る 烏扇3g焼く 黄ゴン(草冠+今)3g 柴胡6g 鼠婦3g 乾薑3g 大黄3g
芍藥5g 桂枝3g テイ(草冠+亭)レキ(草冠+歴)1g熬る 石韋3g星状毛を去る 厚朴3g 牡丹5g心を去る
瞿麥2g 柴イ(草冠+威)3g 半夏1g 人參1g シャ(庶+虫)蟲)5g熬る 阿膠3g炙る 蜂窩4g炙る
赤消12g キョウ(虫+羌+ム)ロウ(虫+良)6g熬る 桃仁2g
右二十三味を末と爲し、鍛竃下の灰一斗を取り、清酒一斛五升に灰を浸し、一半盡るを候ひ鼈甲を中に著け煮て、
泛爛たる膠漆の如から令め絞りて汁を取り、諸藥を内れ煎じて丸すること梧子大の如く爲し空心に七丸を服す。日に三服す。
右の二十三味を末にし、鍛冶場(金物を鍛える場所)の熱灰を一合取りこれに清酒一升五合を徐々に加えて灰を浸し、
お酒が半ばつきるのをうかがい、灰を去り、鼈甲を中に浸し、煮て沸騰させ、膠の様になれば絞って汁を取り、
諸薬をこの汁の中に入れ丸剤出来る位に煎じ詰め、0.3g位の丸剤を作りなさい。
空き腹に一回七丸を服す。一日三回。
《千金方用》鼈甲十二片又有海藻三分大ゲキ(卓+戈)一分シャ(庶+虫)蟲五分無鼠婦赤消二味以鼈甲煎和藥爲丸
(3)師の曰く、陰氣孤絶し、陽氣獨り發すれば則ち熱而少氣煩寃し、手足熱而嘔せんと欲す。
名づけてタン(ヤマイダレ+單)瘧と曰ふ。
師匠が言う、陰気だけが絶えて陽気だけが発すれば熱が勝って身体の働きも鈍り弱って息が浅く悶え苦しみ、
手足が熱して吐き気を催す。こういうものをタン(ヤマイダレ+單)瘧と言うのである。
若し但熱して寒から不る者は邪氣内心に藏れ、外分肉之間に舎まり人を令て消鑠肉せしむ。
もしそういう者で、熱いだけで寒がる事が無いのは邪気が内の心臓に隠れ、外では肉の間に邪気が留まり、
その為に病人の筋肉が消耗して痩せてくるのである。
(4)温瘧の者は其の脉平の如く、身に寒無く但熱し骨節煩疼して時に嘔す。白虎加桂枝湯之を主どる。
温瘧の者はその脈状が平脈に似て身に少しも寒無く但だ熱し節々が疼き痛みその熱の発作時に嘔するのである。
それには白虎加桂枝湯が中心となる。
白虎加桂枝湯の方 知母六兩 甘艸二兩炙る 石膏一斤 粳米二合 桂枝三兩皮を去る
白虎加桂枝湯の作り方 知母6g 甘草2g炙る 石膏16g 粳米3g 桂枝3g皮を去る
右刻み五錢毎に水一盞半煎じて八分に至らしめ滓を去り温め服す。汗出でて愈ゆ。
右を刻み、水200t共に煮詰めて100tにし、滓を去り、1日5回に分けて温服する。汗が出て治る。
(5)瘧寒多き者は名づけて牡瘧と曰ふ。蜀漆散之を主どる。
悪寒と発熱が交互に出て、その中でも寒気が多い者を名づけて牡瘧と言う。それには蜀漆散が中心となる。
蜀漆散の方 蜀漆洗ひて腥を去る 雲母二日夜燒く 龍骨各等分
蜀漆散の作り方 蜀漆洗って腥を去る 雲母粉になりにくいので二日二夜焼く 龍骨 各等分
右三味を杵いて散と爲し、未だ發せ不るに前だち漿水を以て半錢を服す。温瘧には蜀漆半分を加へ發時に臨み一錢七を服す。
(外臺秘要方より附なり)
右の三味を杵いて散にし、寒気が発しない前に薄めた酢を用いて0.5gを服す。
温瘧には蜀漆を半分量にして発熱した時に1g服す。外台秘要方より附なり。
(6)牡蠣湯、牡瘧を治す。牡蠣四兩熬る 麻黄四兩節を去る 甘艸二兩 蜀漆三兩
牡蠣湯は牡瘧を治す。牡蠣湯の作り方 牡蠣4g 麻黄4g 甘草2g 蜀漆3g
右四味を水八升を以て先ず蜀漆麻黄を煮て上沫を去り、六升を得て諸藥を内れ煮て二升を取り一升を温服す。
先ず右の四味の中の蜀漆と麻黄と水320tと共に240tまで煮詰めて灰汁を去り、諸薬を加えて更に80tになるまで煮詰め、
滓を去り、1日2回に分けて温め服す。
若し吐すれば則ち更に服する勿れ。
もし服用後、吐くこと有れば更に服させてはいけない。
(7)柴胡去半夏加カ(木+舌)楼湯は、瘧病渇を發する者を治し、亦勞瘧を治す。
柴胡去半夏加カ(木+舌)楼湯は、瘧病を患いそして渇を発する者を治し、またこじれた瘧を治すのである。
柴胡八兩 人參一兩 黄ゴン(草冠+今)一兩 甘艸一兩 カ(木+舌)楼根四兩 生薑二兩 大棗十二枚
柴胡去半夏加カ(木+舌)楼湯の作り方 柴胡8g 人參3g 黄ゴン(草冠+今)3g 甘草3g カ(木+舌)楼根4g 生姜3g 大棗4g
右七味水一斗二升を以て煮て六升を取り滓を去り再煎して三升を取り一升を温服す。日に三服す。
右の七味を水480tと共に240tまで煮詰め滓を去り、再び120tまで煮詰め1日3回に分けて温め服す。
(8)柴胡桂薑湯は、瘧寒多く微に熱有り或は但寒して熱せ不るを治す。
柴胡桂姜湯は、瘧の発作にあたり始めの寒気多く後より発する熱が少ない者は或は但だ寒気だけがして熱が無い者を治す。
柴胡半斤 桂枝三兩皮を去る 乾薑二兩 カ(木+舌)楼根四兩 黄ゴン(草冠+今)三兩 牡蠣二兩熬る 甘艸二兩炙る
柴胡8g 桂枝3g 乾姜3g カ(木+舌)楼根4g 黄ゴン(草冠+今)3g 牡蠣3g 甘草2g
右七味を水一斗二升を以て煮て六升を取り滓を去り再煎三升を取り一升を温服す。日に三服。
右の七味を水480tと共に240tまで煮詰めて滓を去り、再び120tになるまで煮詰める。1日3回に分けて温め服す。
初服すれば微煩し、復た服すれば汗出でて便ち愈ゆ。
一服すれば始めゾクゾクして後に熱っぽくなり、また一服すれば汗が出て愈ゆる。
《瘧病の脉證并びに治・第四》
↑このページのTOPに戻る↑
←トップページに戻る