更新日 2012年(平成24年)7月28日〜2024年(令和年6)1月25日
※ 私なりの解釈なので、あくまでも参考までに。
※ 突然の解説変更ございます。
五臓風寒積聚病脉證併せて治・第十一
五臓の風病と寒病、積病(臓病)と聚病(腑病)の脈状と証候と、
それに対する治方を詳しく述べたもの・第十一
(1)肺の中風者は、口燥而喘し身を運而重く冒而腫脹す。
肺が風に中てられた者は、口中がカラカラに燥いて息をする度にゼイゼイと言い、
体を移動させると重く感じて頭中がボーっとして、身体が腫れ膨れて上がる。
(2)肺の寒中りたるは濁涕を吐す。
肺が寒に中てられるとドロドロとした濁った痰を吐く。
(3)肺の死藏は、之を浮にすれば虚之を按ずれば弱きこと葱葉の如きし下に根無き者は死す。
肺の気が衰弱してしまうと、脈は(肺の真臓脈は純浮)浮いているが、軽く触ると虚であり、
これに少し力を加えて押すと弱く、丁度葱の葉を押して中が空っぽの様で、
更に下部辺りまで押しても脈を感じなければ死ぬ。
(4)肝の中風者は、頭目シン(目+閏)兩脇痛み行常傴み人を令て甘きを嗜ましむ。
肝臓が風に中てられた者は、頭や目の周りにある皮膚がピクピクして、両脇が痛み、
いつも背中を丸くして屈んで歩き、肝臓が急に苦しむと甘い物が食べたくなる。(甘味は肝臓を緩める)
(5)肝の中寒者は、兩臂擧がら不舌本燥ぎ喜大息し胸中痛み轉側するを得不。食すれば則ち吐而汗出ずる也。
(脉經千金云ふ、時盗汗ガイ(亥+欠)食已其汁吐す。)
肝臓が寒に中てられた者は、肘から先の両腕が上がらなくなり、舌の付け根が燥き、時々大きなため息をし、
胸中が痛み寝返りを打つことが出来ない。食事をすれば吐き汗をかく。
(脈経千金に言う、時々寝汗をかき、咳をして、食事が終わるとその汁を吐く。)
(6)肝の死藏は、之を浮にして弱く之を按ずれば索の如く來たら不或は曲がる事蛇の行の如き者は死す。
肝臓の気が衰弱すると、その脈(肝の真臓脈は純弦)は浮で弱く、これに少し力を加えて押すと太い縄の様で
下から上へ突き上げてくる様な勢いである。或は蛇がそこに居る様にクネクネと曲がってくる者は死ぬ。
(7)肝著其の人常に其の胸上を踏まんと欲し先に未だ苦しまざる時但だ熱を飮まんと欲するは、
旋覆花湯之を主どる。
肝著(病が特に肝臓に表れている)の場合には、常に胸の上を踏みつけてもらいたいと思い、肝著の病になる前は、
但熱い飲み物を欲しがる。そういう者には旋覆花湯が中心となる。
(8)心の中風者は、翕翕として發熱起きる能は不心中飢え食すれば即ち嘔吐す。
心臓が風に中てられた者は、カーッと熱が出て起き上がる事が出来ず、食欲旺盛になり、
食事をすると直ぐに吐き気を催し全部吐いてしまう。
(9)心中寒者は、其の人病を苦しむこと心タン(口+敢)蒜状の如く、劇しき者は心痛背に徹し背痛に徹す。
心臓が寒に中てられた者は、その人が病を苦しむ様子が丁度心臓が生の大蒜でも食した様に辛く、
痺れて苦しむ。それが激しい者は心臓の痛みが背中まで通って心臓を貫く。
譬蠱注の如し。其の脉は浮なる者は自から吐して乃ち愈ゆ。
例えば、沢山の虫が心臓の中へ集まり噛み合いでもしている様である。その脈が浮の者は自から吐いて治る。
(10)心傷らるる者は、其の人勞倦すれば即ち頭面赤而下重く心中痛みて自煩發熱臍に当りて跳し其の脉弦。
心臓が傷つけられた者は、その人は疲労(肉体、精神、性行為の労)により疲れれば、頭皮が赤くなり、
下半身は重くなり、心臓の中が痛んでひとりでに不安な気持ちが起こり体が熱くなる。
臍を中心にドキドキと踊り上がる様に動悸がする。その脈は弦になる。
此れ心の藏傷れて致す所爲す也。
これは心臓が傷つけられている為に起るのである。
(11)心の死藏、浮而實なること痲豆の如く之を按ずるにu躁疾する者は死す。
心臓の気が衰弱すると、脈は(心の真臓脈は純洪)浮いて、軽く押すと実していて麻豆の様に堅く、
これを更に強く押すと余計に強く勢いよく感じる者は死ぬ。
(12)邪哭令て魂魄を安らか不らしむる者、血氣少なき也。血氣少なき者は心に屬す。
別に泣く事も無いのに大声で泣き叫び、気持ちが不安に陥ちいる者は、血を廻らす気が少ないのである。
血の気が少ない者は心に属しているのである。(血気は心臓と繋がりがある)
心氣虚する者は其の人則ち畏る目を合わせて眠らんと欲すれば夢に遠くに行きて精神離散し魂魄妄行す。
心臓の気が虚している者は、怖がりで目を開けるのも嫌だから、目を閉じて眠る様にすればウトウトとしている間に、
何処か知らない遠くの場所へ行った夢を見て、気がボーっとしてしまい精神がおかしくなって、
理由もないのに腹が立ってみたり悲しくなってきたりする。
陰氣衰ふ者は、癲を爲し陽氣衰ふ者は狂を爲す。
その時に陰気が衰えた者(栄気衰弱)は癲(引き付けを起こして意識を失う)の病を発し、
陽気が衰えた者(衛気衰弱)は気が狂う。
(13)脾の中風者は、翕翕と發熱し形醉人の如く腹中煩重し皮目シン(目+閏)シン(目+閏)而短氣す。
脾臓が風に中てられた者は、カーッと熱が出て顔が真っ赤になりそれはまるで大酒を飲んだ人の様である。
そして腹中がすごく重く感じて苦しく、皮膚や目の周りの皮膚がピクピクと動き、息が早い。
(14)脾を死藏は、浮而大堅之を按ずれば覆盃の如く潔潔と状搖ぐか如き者は死す。
脾臓の気が衰弱すると、脈は浮で大で堅い。少し押しても堅く、まるで伏せた盃の様でやはり堅く、
清らかでユラユラと揺らいでいる者は死ぬ。
(臣億等詳、五臓各有中風中寒、今脾只載中風腎中風中寒倶不載者以古文簡亂極多去古既遠無文可以補綴也)
(臣億等が詳らかにする。五臓各々中風、中寒有り、今脾但だ中風を載せ、腎の中風、中寒、共に載せないのは、
古文の簡が無くなった物が極めて多く、その古文が無くなったのが既に遠い昔であり、
補綴(補って綴り合わせる)すべき文が無いからである。)
(15)趺陽の脉浮而ショク(シ+嗇)、浮は則ち胃氣強くショク(シ+嗇)は則ち小便數し。浮ショク(シ+嗇)相搏ち大便則ち堅。
其の脾約を爲す。麻子仁丸之を主どる。
趺陽の脈が浮で渋の場合、浮は胃気が強い現われであり、渋は小便の回数が多い事を示している。
浮と渋が打ち合うと、大便が堅くなり、脾臓を締めくくられてその働きを加減してしまう。
これには麻子仁丸が中心となる。
麻子仁丸の方 麻子仁二升 芍藥半斤 枳實一斤 大黄一斤 厚朴一尺 杏仁一升
麻子仁丸の作り方 麻子仁16g 芍藥g 枳實8g 大黄16g 厚朴10g 杏仁10g
右の六味を之を末とし煉蜜にて和し梧子大に丸し飮にて十丸を服す。日に三たび知るを以って度と爲す。
右の六味を末にして煉蜜と混ぜ合わせ0.3gの丸を作り、一回十丸、一日三回服用だが、
最初は四〜五丸から試しみるが好い。効果が少なければ少しずつ数を増やしてやりなさい。
通じてくればそれが適量である。
(16)腎著の病は、其の人身體重く腰中冷え水中に坐するが如く形水の状の如きも反って渇せ不。
腎著(病が特に腎臓に着き表れている)の病は、その人体が重く腰の中が冷たく、
丁度水の中に座っているかの様で、その冷えは水に浸かっている様に冷え、
水気病にみえるが逆にいつもよりのどは渇かず、
小便自利し飮食故の如し病下焦に屬す。身勞れれば汗出で衣の一作表裏冷濕す。
小便も良く出て、食欲もいつもと変わらずある。それはこの病は下焦に属してあるからである。
腎著の病が有る者は、身体が疲れると汗が出て、衣の裏だけが冷たく湿る。
久久之を得、腰以り下冷痛し腰重きこと五千錢を帶ぶるが如し。甘薑苓朮湯之を主どる。
腎著の病は急になるわけではなく長い年月でなる。腰より下が冷えて痛み、
その腰は五千錢を腰に巻いているかの様に重みを感じる。これには甘姜苓朮湯が主となる。
甘艸乾薑茯苓白朮湯の方 甘艸 白朮各二兩 乾薑 茯苓各四兩
甘草乾姜茯苓白朮湯の作り方 甘草2g 白朮2g 乾姜4g 茯苓4g
右の四味を水五升を以て煮て三升を取り、分け温めて三服す。腰中即ち温まる。
右の四味を水200tと共に120tまで煮詰めて滓を去り、三回に分けて温服する。直ぐに臍中が温まる。
(17)腎の死藏は之を浮にして堅く之を按ずれば亂るること轉丸の如し。uす下りて尺中に入る者は死す。
腎臓の気が衰弱すると脈は浮で堅く、少し強く押すと乱れてあちこちに脈が逃げる様子が丁度転丸の様である。
それがドンドン下がって尺中に入る者は死ぬ。
(18)問ふて曰く、三焦の竭部上焦竭すれば善噫すとは何の謂ひぞ也。
お伺いします、三焦のどれかに竭きてしまう部分が有り、
上焦が竭きればよく噫(ゲップ)するというのはどうしてですか。
師の曰く、上焦中焦を受け氣未だ和せ不消穀する能は不。故に能く噫する耳。
師匠が言われるには、上焦は常に中焦と共同して事を行うが、
和せない為に胃中の穀を消化する事が出来ないので、それでゲップが出るのである。
下焦竭すれば即ち遺溺失便す。其の人氣和せ不自から禁制する能は不。治を須ひ不とも久しければ則ち愈ゆ。
下焦が竭きれば大便や小便を知らずに漏らすが、それは下焦の気が和せない為で、
自分では閉めるという事が出来ないのである。特に治療をしなくてもその内自然に治るものである。
(19)師の曰く、熱上焦に在る者因ってガイ(亥+欠)するを肺痿と爲す。
師匠が言われるには、熱が上焦に有る為に咳が出るのは、肺痿の病である。
熱中焦に在る者は則ち堅を爲す。熱下焦に在る者は則ち尿血す亦た淋秘通び不ら令む。
熱が中焦(水穀の消化を盛んにさせる所)に在る為に内が乾いて大便が堅くなる。
熱が下焦(回腸から膀胱)に在る為に小便から出血する又は小便を出す時に渋らせてしまい出なくなる。
大腸に寒有る者は多く鶩溏す。熱有る者は腸垢を便す。小腸に寒有る者其の人下重便血し熱有る者は必ず痔す。
大腸に寒が有る者は大体アヒルの糞みたいな大便を出し、大腸に熱が有る者は粘液便を出す。
小腸に寒が有る者は腰が渋って血便を出し、小腸に熱が有る者は必ず便が出そうで全くでない。
(20)問ふて曰く、病に積有り聚有り穀氣有り何の謂ひぞ也。
お伺いします、腹の腫物の病に積の病と聚の病と穀気の病が有りますが、それはどの様なものなのでしょ。
師曰はく、積する者は藏病也終に移ら不。聚なる者は府病也發作時に有り展轉と痛み移る。治す可しと爲す。
師匠が言われるには、積(陰)の病というのは臓の病であり最後まで移動しないのである。
聚(陽)の病というものは腑の病であり時々発作的にありそこからそこへと痛む所が変わっていく。
これは治す事が出来る病である。
穀氣なる者は脇下痛み之を按ずれば則ち愈ゆ。復た發するを穀氣と爲す。
穀気の病というのは脇下から痛みこれをギューっと押してやれば治るが、
時を経てまた痛みだすのを穀気の病とするのである。
諸の積の大法は、脉來たること細而骨に附く者は乃ち積也。
諸々の五臓の積の原則としては、脈の来ようが細くそして深く骨に附いているものが積なのである。
寸口は積胸中に在り、微に寸口を出づれば積喉中に在り。
脈細滑に附く所の脈が寸口に在れば、積は胸中に在り、それがもし寸口より少し上に出れば積は喉中に在り、
関上は積膀胱に在り、関上を上れば積心下に在り。微に關を下れば積少腹に在り。
脈細滑に附く所の脈が関上に在れば、積は臍の両脇に在り、もし関上から少し上に上れば積は心下に在り、
少し関上を下がれば積は少腹に在り、
尺中は積気衝(経穴)に在り、脉左に出ずれば積左に在り。脉右に出ずれば積右に在り。
脈細滑に附く所の脈が尺中に在れば、積は気衝に在り、左手の脈に出れば積は体の左半身に在り、
右手の脈に出れば積は体の右半身に在り、
脉兩出ずれば積中央に在り、各其の部を以って之を處す。
もし左右両方の手に出れば、積は体の真ん中に近い所に在り、各々その脈の出てくる部をもって
積の在る所をハッキリと定める事が出来るのである。
《五臓風寒積聚病脉證治・第十一》
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