更新日 1993年(平成5年)1月18日〜2024年(令和6年)3月9日
※ 私なりの解釈なので、あくまでも参考までに。
※ 突然の解説変更ございます。
驚悸吐衄下血胸満オ(ヤマイダレ+於)血病脉證併治・第十六
驚悸病と吐衄病と下血病と血証の胸満病とオ(ヤマイダレ+於)血病の脈状と証候ならびに、
それに対する治方を詳しく述べたもの・第十六
(1)寸口の脉動而弱、動は即ち驚を爲し、弱は則ち悸を爲す。
寸口の脈が動(数脈が関上に現れ上下に頭尾無くドキドキして動揺する)であって強く押すと弱く、
その動は驚から発する脈で、弱は悸からである。
(2)師の曰はく、尺脉浮、目セイ(目+青)暈黄なれば衄未だ止ま不、暈黄去り目セイ(目+青)慧了なれば衄今止むを知る。
師匠が言われるには、尺脈が浮で目ん玉の黒目の周りが曇った様な黄色をしていれば、鼻血は未だに止まない。
その目ん玉の中のどんよりと雲った黄色が除かれ黒目がハッキリとした時に鼻血が止まるというのがわかる。
(3)又曰はく、春從り夏に至り衄する者は太陽、秋に從り冬に至り衄する者は陽明。
また師匠が言われるには、春の初めから夏の終わりにかけて鼻血が出る者は、太陽経の病とする。
秋の初めから冬の終わりにかけて鼻血が出る者は、陽明経の病とする。
(4)衄家は汗す可から不、汗すれば必ず額上陥り脈緊急直視しジュン(目+旬)する能は不眠るを得不。
度々鼻血が出る者は汗を発してはいけない。病が治りそうに見えても絶対に汗をかかせてはいけない。
それは汗を発せば必ず額上が凹み、脈は緊になり、眼球が引き攣れて動かすことが出来ず、
瞬きも出来ず眠ることが出来ないのである。
(5)病人面に血色無く寒熱無く脈沈弦の者は衄し、浮弱手にて之を按ずれば絶する者は下血し煩咳する者は必ず吐血す。
病人の顔色に赤みが無く寒気や熱も無く脈沈で弦の者は鼻血が出る。
脈沈弦ではなく浮で弱く、指に少し力を加えて押してみると脈が止まってしまう者は、
大便や小便から血が下り悶え苦しんで咳をする。そういう者は必ず口から血を吐く。
(6)夫れ吐血咳逆上氣し、其の脉數而熱有り臥するを得不る者は死す。
吐血をする者で咳が込み上げてきて、その脈は数でしかも熱が有り、その為に眠る事が出来ない者は死ぬ。
(7)夫れ酒客咳する者は必ず吐血を致す。此極飮過度に因り致す所也。
沢山の酒を飲む者が、風の気でもないのに盛んに咳が出だす者は必ず吐血がやって来る。
この吐血は大酒を飲んで深酒をした為に招き寄せたのである。
(8)寸口の脉弦而大、弦は則ち減と爲し、大は則ちコウ(草冠+孔)と爲す。
弦は則ち寒と爲し、コウ(草冠+孔)は則ち虚と爲す。
寸口の脈が弦で大(太い)、その弦は減となり、大はコウ(草冠+孔)となる。弦は寒とし、コウ(草冠+孔)は虚となる。
寒虚相搏つ、此れを名づけて革と曰ふ。婦人は則ち半産漏下し、男子は則ち亡血す。
寒と虚とが互いに打ち合うのを名づけて革と言う。相搏ちにより婦人の場合は流産や血の下る病になり、
男子は亡血を病むのである。
(9)亡血はその表を發す可から不、汗を出せば即ち寒慄而振ふ。
亡血の者は汗を発すべき証が有ったとしても汗を発して表を攻めてはいけない。
表を攻めて汗を出させれば必ず寒がって震えてしまうからである。
(10)病人胸滿唇痿舌青、口燥し但だ水を嗽がんと欲し嚥むを欲せ不、寒熱無く脉微大來たること遲く、
病人が胸満を訴え唇が薄くなり舌が青く口中が乾いて水で潤そうとするだけで飲もうとは思わず、
別に寒気や熱は無く、脈は少し大で遅く、
腹滿た不るに其の人我滿を言ふはオ(ヤマイダレ+於)血有りと爲す。
大して腹満もしていないのに病人は腹が満っていると言う。これはオ(ヤマイダレ+於)血が有るのである。
(11)病者熱状の如く煩滿口乾燥而渇し、其の脉返って熱無きは此れ陰伏すと爲す。
是れオ(ヤマイダレ+於)血也。當に之を下す可し。
病人の様子が熱からでも来ているかの様で、腹が満って苦しく、口が乾燥して渇きが有るのに、
その脈は一向に熱脈でないのは、陰が伏している為であって、
これはオ(ヤマイダレ+於)血からである。当然これを下してやりなさい。
(12)火邪の者は桂枝去芍藥加蜀漆牡蠣龍骨救逆湯之を主どる。
火を用いて逆治された者は桂枝去芍薬加蜀漆牡蠣龍骨救逆湯が主となる。
桂枝救逆湯の方 桂枝三兩去皮 甘艸二兩炙 生薑三兩 牡蠣五兩熬 龍骨四兩 大棗十二枚 蜀漆三兩洗去腥
桂枝去芍薬加蜀漆牡蠣龍骨救逆湯の作り方
桂枝3g皮を去る 甘草2g炙る 生姜3g 牡蠣5g 龍骨4g 大棗4g 蜀漆3g洗って腥を去る
右を末と爲し水一斗二升を以て、先ず蜀漆を煮て二升を減じ諸藥を内れ煮て三升を取り滓を去り温めて一升を服す。
右の七味を末にし、先ず蜀漆と水480ccと共に煮て80cc程減らし、その中に残りの薬を入れて120ccになるまで煮詰め、
滓を去り、一回に40cc温め服す。
(13)心下悸する者は半夏麻黄丸之を主どる。
心下に動悸を打つ者は半夏麻黄丸が主となる。
半夏麻黄丸の方 半夏 麻黄等分
半夏麻黄丸の作り方 半夏 麻黄各等分
右の二味を之を末とし、煉蜜に和し、小豆大に丸め飮にて三丸を服す。日に三服す。
右の二味を末にし、煉蜜にて和して0.2gの丸を作り、一回三丸を服す。一日三回服用する。
(14)吐血止ま不る者は栢葉湯之を主どる。
吐血が止まない者は栢葉湯が主となる。
栢葉湯の方 栢葉 乾薑各三兩 艾三把
栢葉湯の作り方 栢葉3g 乾姜3g 艾3g
右の三味を水五升と馬通より取りたる汁一升とを以て合せ煮て一升を取り分温再服す。
右の三味を水200ccと馬の排便直後の糞を絞って得た汁(馬通汁)40ccと共に40ccまで煮詰めて滓を去り、
二回に分けて温め服す。
(15)下血先便後血するは此れ遠血也。黄土湯之を主どる。
肛門から出血する場合、大便が先に出てその後に出血するのは遠血と言い、体の奥深い所からの出血である。
それには黄土湯が主となる。
黄土湯の方(亦主吐血衄血) 甘艸 乾地黄 白朮 附子炮 阿膠 黄ゴン(草冠+今)各三兩 竈中黄土半斤
黄土湯の作り方(吐血や鼻血もまた主となる)
甘草3g 乾地黄3g 白朮3g 炮附子0.6g 阿膠3g 黄ゴン(草冠+今)3g 竈中黄土8g
右の七味を水八升を以て煮て三升を取り分ち温めて二服す。
右の七味を水320ccと共に120ccになるまで煮詰めて滓を去り、二回に分けて温め服す。
(16)下血先血後便するは此れ近血也。赤小豆当歸散之を主どる。(方見狐惑中)
肛門から出血する場合、先に血が出てその後に大便が出るのは近血と言い、体の深くない浅い所からの出血である。
これには赤小豆当帰散が主となる。(狐惑病中第13項の方を見よ)
(17)心氣足ら不吐血衄血するは瀉心湯之を主どる。
心臓の気が足らない為に吐血や鼻血を起す者は瀉心湯が主となる。
瀉心湯の方(亦治霍亂) 大黄二兩 黄連 黄ゴン(草冠+今)各一兩
瀉心湯の作り方(また霍乱病をも治す) 大黄2g 黄連1g 黄ゴン(草冠+今)1g
右の三味を水三升を以て煮て一升を取り、頓に之を服す。
右の三味を水120ccと共に40ccまで煮詰めて滓を去り、頓服としてこれを服用する。
《驚悸吐衄下血胸満オ(ヤマイダレ+於)血病脉證併治・第十六》
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