更新日 1990年(平成2年)6月19日〜2023年(令和5年9月9日)
※ 私なりの解釈なので、あくまでも参考までに。
※ 突然の解説変更ございます。
少陰病脉證并びに治・第十一
少陰の病の脈状と証候ならびに、それに対する治方を詳しく述べたもの・第十一
(1)少陰の病爲る、脉微細、但だ寝んと欲する也。
少陰病とする所は、寸口の脈が微で細く、但だ訳も無く寝たがるものである。
(2)少陰病吐せんと欲し吐せ不、心煩但だ寝んと欲する、五六日自利して渇する者は、少陰に屬する也。
少陰病で、吐きたいと思うが吐けないで、胸中が悶えて、但だ自然に眠くなり、それが5〜6日続き、
小便は普通に出て、咽が渇く者は少陰に属したのである。
虚するが故に水を引いて自から救う。
咽が渇くのは、津液が虚してひっきりなしに水を飲みたがるのである。
これは体が自分で自分を潤そうとする為に生ずる証で、裏熱からくるものではない。
若し小便白き者は、少陰の病形悉く具はる。
もしその時に小便の色が無色の者は、少陰病から表れる形が全部揃ったと言えるべきで、
小便白き者は下焦に寒有り、水を制する能は不るを以て、故に色を令て白からしむ也。
この小便の無色と言うのは、腎に寒が有って、水を抑えることが出来ない為に色を無色にさせているのである。
(3)病人陰陽倶に緊、反って汗出づる者は陽を亡ぼす也。此れ少陰に屬す。法當に咽痛而復た吐利すべし。
病人の脈が寸口(陽気)も尺中(陰気)も緊で、それなのに反って汗が出る者は、陽気を亡ぼしたのである。
これは少陰病に属す。法として当然喉が痛む上に、吐いたり下したりするはずである。
(4)少陰病、ガイ(亥+欠)而下利譫語する者は、火氣に刧か被が故也。
少陰病で、咳が出てそして下痢をしてうわ言を言う者は、温灸などで脅かされたからである。
小便必ず難し。強ひて少陰を責め汗するを以って也。
この場合、小便は必ず出にくくなるもので、これは温灸などで無理に少陰に迫って汗を出させたからである。
(5)少陰病細沈數なるは、病裏に在りと爲す。汗を發す可から不。
少陰病で脈が細沈数なのは、病は表には無く裏に在るのだから汗を発してはいけない。
(6)少陰病、脉微なるは汗を發す可から不。陽を亡ぼすが故也。
少陰病で脈が微なのは、汗を発してはいけない。汗を発すれば陽を滅ぼすという事である。
陽已に虚し、尺脉弱ジュウ(サンズイ+嗇)なる者は復た之を下す可から不。
それを発汗させ既に虚してしまい、尺中が特に弱り渋っている者は、この上にまた下してはいけない。
(7)少陰病脉緊七八日に至り自下利し、脉暴に微、手足反って温かく、
少陰病で脈が緊であるのが、7〜8日経って自然に腹が下り、脈は下痢と同時に急に手に触れない位に微になったが
反対に手足が温かく、
脉緊反って去る者は、解せんと欲すると爲す也。煩する雖も下利は必ず自から愈ゆ。
脈が反って緊がとれた者は、病が解けようとしているのである。元より病が自然に解そうとしている位だから
病人は悶え苦しむが下痢は必ず自然に止むはずだ。
(8)少陰病、下利若し利自から止み、悪寒してケン(足+卷)臥し、手足温かなる者は治す可し。
少陰病で、下痢がもし自然に止み、それから悪寒してその為に寒がって手足を縮めて丸くなって寝ているが
手足は温かい者は治すことが出来る。
(9)少陰病、悪寒してセクグ(足+卷)まり時に自から煩し、衣被を去らんと欲する者は治す可し。
少陰病で、悪寒して手足を縮めて丸くなって寝ている者が時に熱がり、寝巻から手足を出したり
着ている物を脱ごうとする者は、治すことが出来る。
(10)少陰中風脉陽微陰浮なる者は愈えんと欲すと爲す。
少陰が風に中てられて病んだ時に、寸脈が微で尺脈が浮となった者は、病が癒えようとしているからである。
(11)少陰病、解せんと欲するの時は、子從り寅上に至る。
少陰病が自然に解けようとする時刻は、午後11時から午前5時までの間である。
(12)少陰病、吐利手足逆冷せ不、反って發熱する者は死せ不。脉至ら不る者は少陰に灸すること七壯。
少陰病で、吐き下ししているが手足は逆冷せず、そして悪寒が酷くなるべきところが反って熱を発する者は死なない。
この場合もし脈が打って来ないようなら少陰にお灸を七つすえてやりなさい。(恐らくは腎経の兪の太谿)
(13)少陰病、八九日一身手足盡く熱する者は、熱膀胱に在るを以て必ず便血する也。
少陰病を病み始めてから8〜9日目に身体から手足まで全部熱くなった者は、
熱が膀胱に在るから必ず血便が出る。
(14)少陰病但だ厥して汗無きを強ひて之を發すれば必ず其の血を動ず。
少陰病で、但だ手足が冷えて汗は無いのに無理して汗を発すると、必ずその血が乱れ出血を起こさせるのである。
未だ何れの道より出づるかを知らず、或は口鼻より、或は目より出づること是を下厥上竭と名づく。治し難しと爲す。
その血はどこから出るかは出血してみないと分からないが、時には口や鼻から出ることもあるし、目から出ることもある。
これを下厥上竭と名付け、治すのは難しいのである。
(15)少陰病、惡寒身セクグ(足+卷)而利し、手足厥冷する者は治せ不。
少陰病で、悪寒して、身体を丸く縮め、下痢し、手足が水の様に冷たい者は治せない。
(16)少陰病、吐利躁煩四逆する者は死す。
少陰病で、吐いて下痢し、躁煩(熱気が筋肉の間に滞り手足や体を動かして悶え苦しむ)し、
手足が冷えて縮まっている者は死ぬ。
(17)少陰病、下利止みて頭眩し時々自から冒する者は死す。
少陰病で、下痢しているのが止まり目眩が起こり時々ひとりでに気が遠のく者は死ぬ。
(18)少陰病、四逆惡寒而身セクグ(足+卷)まり脉至ら不、煩せ不してソウ(足+卷)する者は死す。
少陰病で、手足が厥冷(酷く冷える)し、酷く寒がって体を丸め、脈は打って来ず、
苦しがることなく、体だけ置場の無い様に動かしている者は死ぬ。
(19)少陰病、六七日息高き者は死す。
少陰病を起こして6〜7日経ち、高い息をし始めた者は死ぬ。
(20)少陰病、脉微細沈、但だ臥せんと欲し汗出で煩せ不、自から吐せんと欲し五六日に至り自利し、
少陰病で脈が微細沈で、但だ体を横にして休みたがり、汗をかき、悶えることはなく自然に吐きたがり、
脉微細沈になってから5〜6日経つと自然に大便が出て、
復た煩躁し臥寐するを得不る者は死す。
それと同時に煩躁(熱気が筋肉の間に滞り手足や体を動かし悶え苦しむ)が始まり、
その為に体を横にして眠ることが出来なくなった者は死ぬ。
(21)少陰病、始めて之を得、反って發熱脉沈なる者は、麻黄附子細辛湯之を主どる。
少陰病を初めてかかったのに反って発熱して脈が沈んでいる者は、麻黄附子細辛湯が中心となる。
麻黄附子細辛湯の方 麻黄二兩節を去る 細辛二兩 附子一枚炮じて皮を去り八片破る
麻黄附子細辛湯の作り方 麻黄2g節を去る 細辛2g 附子0.2g炮じて皮を去り八片に破る
右の三味を水一斗を以て先ず麻黄をニ(者+火)て二升を減じ、上沫を去り、藥を内れ、ニ(者+火)て三升を取り、
滓を去り、温服。一升日に三服。
先ず麻黄を水400tと共に煮て80t程減らして灰汁を取り除き、残りの二味を加えて120tになるまで煮詰め、
滓を去り、1回40tを1日3回温めて服す。
(22)少陰病、之を得て二三日は麻黄附子甘艸湯にて微しく汗を發す。
少陰病になってから2〜3日間は麻黄附子甘艸湯で軽く汗をかかせてやりなさい。
二三日は裏證無きを以ての故に微しく汗を發する也。
その理由は、2〜3日は裏証が無いから軽く汗を出させるのである。
麻黄附子甘艸湯の方 麻黄二兩節を去る 甘艸二兩炙る 附子一枚炮じて皮を去る
麻黄附子甘艸湯の作り方 麻黄2g節を去る 甘草2g炙る 附子炮じて皮を去る
右の三味を水七升を以て先ず麻黄をニ(者+火)て一兩沸させ、上沫を去り、諸藥を内れ、ニ(者+火)て三升を取り、
滓を去り、温服一升日に三服。
先ず麻黄と水280tと共に泡立つまで煮て灰汁を取り去り、残りの二味を加えて120tになるまで煮詰めて滓を去り、
1回40tを1日3回温めて服す。
(23)少陰病、之を得て二三日以上心中煩し臥するを得不るは、黄連阿膠湯之を主どる。
少陰病になってから2〜3日して心中が不安になり眠ることが出来ない者は、黄連阿膠湯が中心となる。
黄連阿膠湯の方 黄連四兩 黄ゴン(草冠+今)一兩 芍藥二兩 鶏子黄二枚 阿膠三兩
黄連阿膠湯の作り方 黄連4g 黄ゴン(草冠+今)1g 芍薬2g 鶏子黄1個 阿膠3g
右の五味を水五升を以て、先ず三物をニ(者+火)て二升を取り、滓を去り、膠を入れヨウ(火+羊)盡し、
小しく冷し鶏子黄を内れ攪して相得せ令め、温服七合日に三服。
先ず卵黄と阿膠以外の三味を水200tと共に80tまで煮詰めて滓を去り、その中に阿膠を入れて溶かし、
少し冷ましてから卵黄を加え、よくかき混ぜてならし、1回30tを1日3回に分けて温め服す。
(24)少陰病、之を得て、一二日口中和し、其の背惡寒する者當に之を灸すべし。附子湯之を主どる。
少陰病になってから1日目か2日目に口中に異常(口苦や口渇や無味など)無く、背中が悪寒する者は、
先ずお灸をすえてやり、それから附子湯でこれを治してやりなさい。
附子湯の方 附子二枚皮を去り八片破る 茯苓三兩 人參二兩 白朮四兩 芍藥三兩
附子湯の作り方 炮附子0.4g〜0.6g炮じて皮を去り八片に破る 茯苓3g 人参2g 白朮4g 芍藥3g
右の五味を水八升を以てニ(者+火)て三升を取り、滓を去り、温服一升日に三服。
右の五味を水320tと共に120tまで煮詰めて滓を去り、1回40tを1日3回温め服す。
(25)少陰病、身體痛み手足寒え骨節痛み脉沈の者は附子湯之を主どる。
少陰病で、身体が痛み、手足は寒えて冷たく、手足の関節が痛み、脈が沈んでいる者は、附子湯が中心となる。
(26)少陰病、下利膿血を便する者は桃花湯之を主どる。
少陰病で、下痢をし、その下痢の中に膿血が混ざっている者は、桃花湯が中心となる。
桃花湯の方 赤石脂一斤一半全用一半篩末 乾薑一兩 粳米一斤
桃花湯の作り方 赤石脂16g半分を煮てもう半分を粉末にする 乾姜1g 粳米14g
右の三味を水七升を以てニ(者+火)て米熟さしめ、滓を去り、七合に赤石脂末方寸匕を内れて温服す。日に三服。
右の三味を水280tと共に煮て粳米が熟したら滓を去り、
その液から30t取ってその中へ赤石脂末2g入れて1回量とし、1日3回温めて服する。
若し一服して愈ゆれば餘は服すること勿れ。
もし1回服して治った者は、後は服させてはいけない。
(27)少陰病、二三日、四五日に至り、腹滿小便不利下利止まず、膿血を便する者は、桃花湯之を主どる。
少陰病になって、2〜3日経過して4〜5日目に腹が満り小便が出なくなり下痢は止まず大便に膿血が混ざっている者は、
桃花湯が中心となる。
(28)少陰病、下痢膿血を便する者は刺す可し。
少陰病で、下痢が激しく、大便に膿血が混ざっている者は鍼で刺してやれ。
(恐らく少陰の経を考えていき、その最も実している所を刺瀉するのだろう。)
(29)少陰病、吐利手足厥冷し煩躁してシ(攴+人)せんと欲する者は、呉茱萸湯之を主どる。
少陰病で、吐き下しが有り手足冷たく温めても温まらず、煩躁(熱気が筋肉の間に滞り手足や体を動かしもだえ苦しむ)し、
今にも死にはしないかと思う様な者は、呉茱萸湯が中心となる。
(30)少陰病、下痢咽痛胸滿心煩する者は、猪膚湯之を主どる。
少陰病で、下痢して咽が痛み胸が満って胸苦しい者は、猪膚湯が中心となる。
猪膚湯の方 猪膚一斤
猪膚湯の作り方 猪膚(毛を去った猪の皮)16g
右の一味を水一斗を以てニ(者+火)て五升を取り、滓を去り、白蜜一升白粉五合を熬りて香ばしくしたるを加へ和し、
相得て温かくして分けて六服す。
右の一味を水400tと共に200tまで煮詰めて滓を去り、白蜜40tと熬って香ばしくした米の粉10gを加えてよく混ぜ合わせ、
6回に分けて温め服す。
(31)少陰病、二三日、咽痛する者は甘艸湯を與ふ可し。差え不る者は桔梗湯を與ふ。
少陰病を病んでいる間に咽の痛みが始まり、それが2〜3日も続く者は、甘草湯を与え、
それでも治らない場合は桔梗湯を与えなさい。
甘艸湯の方 甘艸二兩
甘草湯の作り方 甘草2g
右の一味を水三升を以てニ(者+火)て一升半を取り、滓を去り、温服七合日に二服。
右の一味を水120tと共に60tになるまで煮つめて滓を去り、1日2回に分けて温め服す。
桔梗湯の方 桔梗一兩 甘艸二兩
桔梗湯の作り方 桔梗1g 甘草2g
右の二味を水三升を以てニ(者+火)て一升を取り、滓を去り、分温再服す。
右の二味を水120tと共に40tまで煮詰めて滓を去り、2回に分けて温めて再び服す。
(32)少陰病、咽中傷れて瘡を生じ、言語する能は不、聲で不る者は苦酒湯之を主どる。
少陰病で咽中が傷れて傷になり、話すことも出来ず声を出そうとしても出ない者は、苦酒湯が中心となる。
苦酒湯の方 半夏洗ひ破りて棗核大の如くを十四枚 鶏子一枚黄去鶏子殻の中に内れ上苦酒を著
苦酒湯の作り方 半夏洗い砕いてナツメの種の大きさを14個
鶏卵1個卵黄を除き卵殻の中に上品酢と卵白を入れて置く
右の二味半夏を苦酒を著たる中に内れ、鶏子殻を以て刀鐶中に置き、火上に安んじ三沸せ令め滓を去り、少少含みて
之を嚥む。差え不れば更に三劑を作る。
右の鶏卵を2/3位の所から割って中身の黄みを去り、その殻の中に半夏を入れ、更に酢を加え、
この殻を三脚架の上に安定させて火上に置き、ブツブツと三沸させてガーゼで滓を取り去り、
それを少々口に含みながら徐々に飲み込んでいく。それでも治らなければ更に三回分を作り服用させなさい。
(33)少陰病咽中痛むは半夏散及び湯之を主どる。
少陰病で咽中(食道辺りで咽の奥。食すれば必ず痛む。)が痛む者は、半夏散及湯が中心となる。
半夏散及び湯の作り方 半夏洗ふ 桂枝皮を去る 甘艸炙る 以上各等分
半夏散及湯の作り方 半夏4.5g洗う 桂枝4.5皮を去る 甘草4.5炙る
已上の三味を各別に搗き篩已て合わせ、之を治め、白飮に和し方寸匕を服す。日に三服。
以上の各々別に搗いて粉末にして篩にかけ、混合してよく合わせ、1回1.5gに対して重湯0.75gを混ぜ合せ、
1日3回服用する。
若し散にて服する能は不る者は、水一升を以て煎ずること七沸、散兩方寸匕を内れ、更に煎ずること三沸、
火より下し小しく冷さ令め少少之を嚥す。
もし散が呑めない者は、水40tを七沸させ、その中に散1.5gを入れて更に三沸させ、
火から下ろして少し冷ましてから少しずつ呑ませてやりなさい。
(34)少陰病、下利するはは白通湯之を主どる。
少陰病で下痢している者には、白通湯が中心となる。
白通湯の方 葱白四莖 乾薑一兩 附子一枚生用皮を去り八片破る
白通湯の作り方 葱白付け木葉より四分の長さに切って一莖 乾姜1g
附子生乾0.2g皮を去り八片に破る
右の三味を水三升を以てニ(者+火)て一升を取り、滓を去り、分温再服。
右の三味を水120tと共に40tまで煮詰めて滓を去り、2回に分けて温め服す。
(35)少陰病、下利脉微なる者に白通湯を與へ、利止ま不厥逆脉無く乾嘔し煩する者は、白通加猪膽汁湯之を主どる。
少陰病で、下痢して脈が微かな者は白通湯を与え、白通湯を服してから下利が止まないどころか更に回数が増え、
手足が酷く冷えて微かに感じた脈が無くなり、乾嘔して苦しみ悶える者は、
白通加猪膽汁湯が中心となる。
湯を服し、脉暴に出づる者は死し、微に續く者は生く。
白通加猪膽汁湯を服したら、今まで触れなかった脈が急に現れて荒々しく打ち出した者は死に、
脈が微かに継続して触れる者は生きる。
白通加猪膽汁の方 葱白四莖 乾薑一兩 附子一枚生皮去り八片破る 人尿五合 猪膽汁一合
白通か猪膽汁の作り方 葱白葱白付け木葉より四分の長さに切って一莖 乾姜1g 附子生乾0.2g皮を去り八片に破る
人尿10t 猪膽汁2t(乾燥品0.4gを水2tに混合溶解し用いる)
已上三味を水三升を以てニ(者+火)て一升を取り、滓を去り、膽汁人尿を内れ和して相得さ令め、分温再服。
若し膽無くも亦た用ふ可し。
以上の三味を水120tと共に40tまで煮詰めて滓を去り、猪膽汁及び人尿を加えてよくかき混ぜ、
2回に分けて温め服す。もし猪の胆が無い時は、人尿だけでも用いなさい。
(36)少陰病、二三日已ま不、四五日に至り腹痛小便不利四肢沈重疼痛し自下利する者は、此れ水氣有りと爲す。
少陰病になって同じ状態が2〜3日続いて治まらず、4〜5日経った時に腹痛が始まり、小便の出が悪く、
手足がふやけた様に浮腫んで重たく感じで疼き痛み下痢する者は、原因の一つとして水気が有るからである。
其の人或はガイ(亥+欠)し、或は小便利し、或は下利し、或は嘔すること有る者も、真武湯之を主どる。
そしてこの時に、咳をしたり、或は小便の出は普通に出て、或は下痢は続いていたり、或は吐いたりする者も、
皆真武湯が中心となる。
真武湯の方 茯苓三兩 芍藥三兩 生薑三兩切る 白朮二両 附子一枚炮じて皮を去り八片破る
真武湯の作り方 茯苓3g 芍薬3g 生姜3g切る 白朮2g
附子0.2〜0.3g炮じて皮を去り八片に破る(白川附子なら1g)
右の五味を水八升を以てニ(者+火)て三升を取り、滓を去り、温服七合日に三服。後加減の方。
右の五味を水320tと共に120tまで煮詰めて滓を去り、4回に分け、1日3回温め服す。
若しガイ(亥+欠)する者には、五味半升細辛乾姜各一兩加ふ。若し小便利する者は、茯苓を去る。
もし咳が出る者には五味子3g細辛1g乾姜1gを加える。もし小便の出が普通に出る者には茯苓を去る。
若し利する者は、芍藥を去り乾薑二兩を加ふ。若し嘔する者は、附子を去り生姜を加へ前に足して半斤と成す。
もし下痢する者には芍薬を去って乾姜2gを加える。もし嘔する者には附子を去って生姜5gを加えて用いる。
(37)少陰病、下利清穀し、裏寒外熱し、手足厥冷し、脉微を絶えんと欲し、身には反って惡寒せ不、其の人の面赤色し、
少陰病で下痢が止まず便の回数多く、体の中は冷えて外だけ熱が有り、手足が酷く冷えて、脈は微で時々触れにくく、
かといって身には寒気は無く、その人の顔に赤みが有り、
或は腹痛、或は乾嘔、或は咽痛、或は利止み脉出不る者は、通脉四逆湯之を主どる。
赤顔が赤い者が、腹痛、或は乾嘔、或は咽が痛み、或は下痢が自然に止まった後に脈が出てこない者は、
通脉四逆湯が中心となる。
通脈四逆湯の方 甘艸二兩炙る 附子大者一枚生用皮去り八片破る 乾薑三兩強人四兩可
通脉四逆湯の作り方 甘草2g炙る 附子0.2g生用皮を去り八片に破る 乾姜3g丈夫な人は4gでも可
右の三味を水三升を以てニ(者+火)て一升二合を取り、滓を去り、分温再服。其の脉即ち出づる者は愈ゆ。
右の三味を水120tと共に50tまで煮詰めて滓を去り、2回に分けて温め服す。その人の脈が触れるようになれば治る。
面色赤き者は葱九莖を加ふ。腹中痛む者は葱を去り芍藥二兩を加ふ。
顔色が赤い者には葱白の白い部分を一莖を加える。顔色は赤いが腹中が痛む者には葱白を使わず芍薬2gを加える。
嘔する者は生薑二兩を加ふ。咽痛する者は芍藥を去り桔梗一兩を加ふ。利止みて脉出で不る者は桔梗を去り人參二兩を加ふ。
胃中の気が上って又は散ずることが出来ず嘔する者には生姜2gを加える。
咽痛する者には芍薬を去り桔梗1gを加える。咽痛し下痢は止んだが脈が未だ触れない者には桔梗は使わず人参2gを加える。
(38)少陰病、四逆し、其の人或はガイ(亥+欠)し、或は悸し、或は小便不利、或は腹中痛み、或は泄利下重する者は、
四逆散之を主どる。
少陰病で、手足が酷く冷えて脈も触れず、その上咳をしたり、或は動悸したり胸騒ぎしたり、或は小便が出にくく、
或は腹中が痛み、或は大便が少しずつ下って渋る者は、四逆散が中心となる。
四逆散の方 甘艸炙る 枳實破り水漬し炙りて乾かす 柴胡 芍藥
四逆散の作り方 甘草炙る 枳実破って水に漬し炙って乾かす 柴胡 芍薬 各等分
右の四味各拾分を搗き篩い白飮に和し方寸匕を服す。日に三服。
右の四味を杵いて篩にかけ末にし、末2gと重湯を混ぜ合わせ、それを1日3回服す。
ガイ(亥+欠)する者は五味子乾薑各伍分を加ふ。併せて下利を主どる。
咳が出て四逆散では止まらない者には四逆散に五味子1.25gと乾姜1.25gを加える。(原文に非ざる可能性有)
この加味方は下痢をも治す。
悸する者は桂枝伍分を加ふ。小便不利する者は茯苓伍分を加ふ。腹中痛む者は附子一枚炮じて折せ令めたるを加ふ。
動悸が止まない者には桂枝1.25g加え、小便の出が悪い者には茯苓1.25g加え、
腹中の痛みが止まらない者には炮附子末0.2g加え、
泄利下重する者は先ず水五升を以て薤白三升をニ(者+火)、ニ(者+火)て三升を取り、滓を去り、散三方寸匕を以て湯中に内れ、
ニ(者+火)て一升半を取り、分温再服。
大便が少しずつ下って渋る者は、先ず水200tと薤白10gと共に120tまで煮詰めたら滓を去り、
その中に四逆散6gを入れて更に60tになるまで煮て、2回分に分けて温め服す。
(39)少陰病、下利六七日ガイ(亥+欠)而渇し、心煩眠るを得不る者は、猪苓湯之を主どる。
少陰病で、下痢が6〜7日も続いて咳をして嘔し、その後時々咽が渇いて寝苦しくて眠れない者は、猪苓湯が中心となる。
(40)少陰病、之を得て二三日、口燥咽乾する者は、急に之を下せ。大承氣湯に宜し。
少陰病になってから2〜3日に口中がはしゃぎ、咽がカラカラに乾きだした者は、大急ぎでこれを下してやれ。
それには大承気湯がよい。
(41)少陰病、自から清水を利し、色純青心下必ず痛み、口乾燥する者は急に之を下せ。大承氣湯に宜し。
少陰病で、糞の状ちが無い水状の汁だけが自然に下り、その糞汁の色が真っ青で、心下が必ず痛み、口が乾燥する者は、
急いで之を下してやれ。それには大承気湯がよい。
(42)少陰病、六七日腹脹し大便せ不る者は、急に之を下せ。大承氣湯に宜し。
少陰病を発してから6〜7日に、腹が脹って大便が出ない者は、急いでこれを下してやれ。それには大承気湯がよい。
(43)少陰病、脉沈なる者は、急に之を温む。四逆湯に宜し。
少陰病で脈沈の者は、急いでこれを温めてやれ。それには四逆湯がよい。
(44)少陰病、飮食口に入れば則ち吐し、心中温温吐せんと欲すれども、復た吐する能は不。
少陰病で、飲食が口に入ると吐き出し、その後心中がムカムカして吐きたくなるが吐くことが出来ず、
始めて之を得、手足寒え、脉弦遲なる者は、此れ胸中實す。下す可から不る也。當に之を吐す可し。
これが初めて少陰病になった時にこの証を発して手足が冷え脈が弦遅の者は、これは胸中が実しているのであって、
下してはいけない。当然吐かせてやるべきである。
若し膈上に寒飮有りて乾嘔する者は、吐す可から不る也。急に之を温め四逆湯に宜し。
ところが、もし胸中に冷たい水が有って吐くが何も上がってこない者は、吐かせてはいけない。
急いでこれを温めてやるべきで、それには四逆湯がよい。
(45)少陰病、下利し脉微澁嘔而汗出づれば、必ず數衣を更ふ。反って少なき者は、當に其の上を之に灸して温むべし。
少陰病で、下痢して脈が微渋で、嘔が有り、汗が出れば必ず何度も大便に行くはずなのに、
それが反ってあまり行かない者は、当然膈上にある少陰の経にお灸して温めてやりなさい。
《少陰病脉證并びに治・第十一》
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