更新日 1990年(平成2年)9月8日〜2022年(令和4年)9月12日
※ 私なりの解釈なので、あくまでも参考までに。
※ 突然の解説変更ございます。
太陽病の脉證と併せて治法を辨ず・上の第五
太陽病の脈状と証候並びにそれに対する治方を詳しく述べたもの・上の第五
(1)太陽の病爲る脉浮、頭項強痛而惡寒す。
太陽の経は表に在り、だから太陽経が病むと脈が浮く。そして経に沿って、頭が割られるように痛み、
項が押し潰される様に痛み、この経は背中を通っているので、ゾクゾクと寒気がする。
(2)太陽病、發熱、汗出で、惡風し、脉緩なる者を名づけて中風と爲す。
太陽病で発熱し、体から汗が出て、冷たい風に吹かれる様にゾーゾーと寒気がし、
脈の手触りが締まってなく緩んでいる者を中風と言う。
(3)太陽病み、或は已に發熱し或いは未だ發熱せず、必ず惡寒し、體痛み、嘔逆し、
太陽の経が病み、既に発熱している場合もあり、未だ発熱していない場合もあるが、
必ず悪寒して体が痛み、劇しく吐き気を催し、
脉陰陽倶に緊なる者を名づけて傷寒と曰ふ。
寸脈(陽)も尺脈(陰)も固く締まっているのを傷寒と言う。
(4)傷寒一日は太陽に之を受く。脉若し静かなる者は、傳へ不と爲す。
傷寒の第一日目は太陽から発病する。脈がもしも静かに打っている者は、他の経脈に伝えないとする。
頗る吐せんと欲し、若しくは燥煩し、脉數急なる者は、傳ふると爲す也。
甚だ吐きたがったり、もしくは熱がって悶え、脈が早くせかせかと忙しい者は、どれも伝えるのである。
(5)傷寒二三日に陽明少陽の證見れ不る者は、傳へ不と爲す也。
傷寒で発病して二日目か三日目に、陽明の証(身熱目疼鼻乾臥得不などの証)や少陽の証(胸脇痛耳漏などの証)が
表れない者は、太陽の経だけが病んでいて、他の経には伝えていないのである。
(6)太陽病、發熱而渇し、惡寒せ不る者を温病と爲す。
太陽病で発熱そして喉が渇き、悪寒しない者は温病(冬期に肌膚に隠れていた寒毒が、
春期に春の陽気により発した熱病)とする。
(7)若し汗を發し已り、身灼熱する者は、名づけて風温と曰ふ。
もしも汗を出させた後で身体が焼かれるように熱くなる者は、風温と言う。
風温は、病を為せば、脉は陰陽倶に浮、自から汗出で、身重く、多く睡眠し、鼻息必ず鼾し、語言出だし難し。
風温により発する証候は、脈が寸尺共に浮で、自然と汗が出て、体が重く動かしたくなく、
しきりに眠たがり居眠り中は息をする度必ず大いびきをかき、口を開こうとしても言葉が出にくい。
若しも下を被る者は、小便不利し、直視して失溲す。
もしもこの温病に下しをかけられた者は、小便が出にくくなり、目がすわり、小便を知らずに漏らす。
若しも火を被る者は、微に黄色發し、劇しければ則ち驚癇の如く、時にケイ(ヤマイダレ+契)ショウ(ヤマイダレ+從)す。
もしも温病で火(灸や焼針の類)を加えられた者は、薄い黄疸を発して激しい場合は癲癇の様に
手足をピーんと伸ばしたまま硬直状態になり一時意識を失う。
若し火にてこれを熏ずれば、一逆尚ほ日を引き、再逆すれば命期を促す。
もしも更に火(灸や焼針の類)を加えられた場合、一度の逆ですら尚治癒期を延引させられ、
再び逆を加えられると死をもたらす。
(8)病みて發熱惡寒する者有り、陽に發する也。
病気に発熱して悪寒するものが有るが、これは病が陽部(身体の表面や上部に熱が集まる所)から発したのである。
熱無く惡寒する者は、陰に發する也。
病気に熱が出ないで悪寒するものが有るが、これは病が陰部(身体の裏面や下部又は熱が集まらない所)から発したのである。
陽に發する者は七日に愈ゆ。陰に發する者は六日に愈ゆ。
陽から発した者は、発した日から七日目に治る。陰から発した者は、発した日から六日目に治る。
陽數は七、陰數は六なるを以って故也。
陽数(奇数・縁起が良い)は七で、陰数(偶数・縁起が悪い)は六だからである。(陰陽順)
(9)太陽病、頭痛七日巳上に至りて、自から愈ゆる者は、其の經を行ぐり盡せるを以ての故也。
太陽病で頭痛がしていたのが、七日目の巳の刻(午前9時から午前11時までの2時間)に至って自然に治ったのは、
その経(太陽・陽明・少陽・太陰・少陰・厥陰)を行ぐりきったからである。
若し再經を作さんと欲する者は、足の陽明に鍼して、經を使て傳へ不らしむれば則ち愈ゆ。
もし再び六経行ぐりを始めそうになったら、足の陽明の経に鍼を刺して気を充たしてやり、
太陽の経の邪気を、足の陽明の経に移さなくしてやれば治る。
(10)太陽病解せんと欲するの時は、巳從り未上に至る。
病にはそれぞれ自然と解けようとする時間があり、太陽病の場合にはそれが一昼一夜の中で
午前九時から午後三時までの間に在る。
(11)風家表解而了了足ら不る者は、十二日に愈ゆ。
風を病んでいる病人で、汗が出て一応発熱や悪寒が無くなったがどこかサッパリしない者は、
発病した日から数えて十二日目に治る。
(12)病人身大いに熱するに、反って衣を近づくるを得んと欲する者は、熱皮膚に在るも、寒骨髄に在る也。
病人の体は火の様に熱いのに、それにもかかわらず服を脱ぎたがらないのはその大熱は皮膚に在るだけで
寒が骨髄に在るからだ。
身大いに寒するに、反って衣を近づくるを欲せ不る者は、寒皮膚に在り、熱骨髄に在る也。
体に触ると氷の様に冷たいのに着たがるはずの服を近づけようともしないのは、皮膚の表面に寒在るだけで
大熱が骨髄に在るからだ。
(13)太陽の中風は、陽浮而陰弱。陽浮なる者は、熱自から發し、陰弱なる者は、汗自から出ず。
太陽が風に中てられると陽気が浮いてきて陰気が弱くなる。陽気浮く者は熱が自然に発し、
陰気が弱まる者は汗が自然に出なくなる。
嗇嗇として惡寒し、淅淅と惡風し、翕翕と發熱し、
雪の中で体が引き締められる様にゾクゾクと寒気がし、寒風に肌を撫でられる様にゾーゾーと寒気がし、
羽の下の温かさの様にポッポッと熱が出て、
鼻鳴り、乾嘔する者は桂枝湯之を主どる。
鼻が詰まってズーズーと鳴り、ゲーゲーと音ばかりの嘔を催す者は桂枝湯を使う。
桂枝湯の方 桂枝三兩皮を去る 芍藥三兩 甘艸二兩炙る 生薑三兩切る 大棗十二枚擘く
桂枝湯の作り方 桂枝3g(皮を去り内部の香気辛甘味共に濃い所) 芍薬3g 甘草2g(炙る)
生姜3g(生生姜を輪切りに刻む) 大棗4g(輪切り)
右の五味をフ(口+父)咀し、七升を以って微火にて煮て三升を取り、滓を去り、寒温を適へ一升を服す。
右の五味を刻み、水280ccと共に弱火で煮て120ccを取り、カスを去り、熱過ぎず、ぬる過ぎない程度にしたものを
40cc服す。
服し已りて須臾に熱稀粥一升餘りを啜り、以て藥力を助く。温覆すること一時許ならしむ。
服した後4〜5分してから熱い重湯(薄い粥)を200cc程すすり、それで薬の力をたすける。
風に触れない様に服や布団で体を覆い2時間ばかりおいてやれ。
遍身にチフ(執+水)チフ(執+水)として汗有るに以たる者はu佳し。水の流漓らるが如からしむ可から不。病必ず除か不。
全身にシットリと汗をかく者は最も好ましい。ポタポタと汗をかかせてはいけない、そうすると病は必ず除けない。
若し一服して汗出で病差ゆれば後服を停む。必ずしも剤を盡くさ不。
もし一回分を服し汗が出て癒えれば後は服さない。必ず全部飲みつくさなければいけないというものではない。
若し汗せ不れば更に服すること前法に依る。
もし汗が出なければ、前法のやり方に従い再服する。
又汗せ不れば、後服は小しく其の間を促エキ(人偏+殳)す。半日許に三服を盡さしむ。
それでも汗が出ない場合、今度は与える時間を詰めて半日の間(四時間毎)に三服呑ませる。
若し病重き者は、一日一夜に服し、周時に之を観る。
もし病が重い者は、昼も夜もその割合で呑ませ、二時間毎に病人を見舞ってやる。
一剤を服し盡し、病證猶ほ在る者は、更に作りて服す。
三回分を呑み終わっても病証がまだ残っている時は、更に作って服させる。
若し汗出で不る者は、則ち服すること二三剤に至る。
もし汗が出ない者には、続けて二〜三剤呑ませる。
生、冷、粘、滑、肉、麪、五羊、酒、酪、臭惡等の物を禁ず。
病中は、生物、冷物、粘りの強い物、油物、濃い物、肉類、麺類、刺激性の強い物、酒類、チーズ類、
悪臭の物などは食べさせてはいけない。
(14)太陽病、頭痛、發熱汗出でれ惡風する者は、桂枝湯之を主どる。
太陽が病んで、頭痛、発熱、汗が出て、悪風する者は桂枝湯を使う。
(15)太陽病、項背強几几反って、汗出で惡風する者は、桂枝加葛根湯之を主どる。
太陽が病んで、項や背中が強張り反り、汗が出て、悪風する者は、桂枝加葛根湯を使う。
桂枝加葛根湯の方 葛根四兩 芍藥二兩 甘艸二兩 生薑三兩切る 大棗十二枚擘く 桂枝二兩皮を去る
桂枝加葛根湯の作り方 葛根4g 芍薬2g 甘草2g 生薑3g生を切る 大棗4g 桂枝2g皮を去る
右の六味を水一斗を以って、先ず葛根を煮て二升を減じ、上沫を去り、諸藥を内れ、煮て三升を取り、滓を去り、
一升を温服す。
水400ccと共に先ず葛根を煮て80cc減じてアクを取り、いったん火から下ろし残りの諸薬を加え
再び120tまで煮てカスを去り、一回に40cc温め服す。
覆って微似汗を取る。粥を啜るを須ひ不。餘は桂枝の法の如くす。
服した後、服や布団でよく覆ってやり、小し汗をかかせてやる。後は桂枝湯の法に従い重湯をすすらせなさい。
(16)太陽病、之を下したる後、其の氣上衝する者は、桂枝湯を與ふ可し。方は前法を用ゆ。
太陽の病を患っている者に下しをかけ下痢させた後、太陽に集まっている気が下腹から喉に突き上がってくる者は、
桂枝湯を与えなさい。呑ませ方は前法に従う。
若し上衝せ不る者には、之を與ふ可から不。
もし上衝しない者は、病が表から去ろうとするものは無いから桂枝湯を与えてはいけない。
(17)太陽病三日、已に汗を發し、若しくは吐し、若しくは下し、若しくは温鍼し、
太陽病を発して三日経ち、その間に発汗させたり、吐かせたり、下したり、温鍼をしたが、
(発汗は表の平均を傷り、吐せれば中の平均を傷り、下せば下の平均を傷り、温鍼加えれば血行を傷る)
仍ほ解せ不る者は此を壊病と爲す。桂枝を能ふるは中ら不る也。
それでもなお解けない者は、これを壊病と名付ける。桂枝湯を与えるのは見当違いである。
其の脉證観て何の逆を犯したるかを知り、證に隨ひて之を治せ。
そこに表れている脈と証とをよく観察し、どういう逆を犯したのかを知り、出ている証候に合せて之を治してやれ。
(18)桂枝は本、解肌を爲す。
桂枝湯は本来、皮膚に在る不調和を解くものである。
若し其の人脉浮緊、發熱、汗出で不る者には與ふ可から不る也。
もしその人の脈が浮緊で、発熱して汗が出ない者には、桂枝湯を与えてはいけない。
常に須く之を識り誤ら令むるる勿かるべき也。
常にこれを覚えておき、間違えないようにしなさい。
(19)若しくは酒客の病には桂枝湯を與ふ可から不。
また、酒を飲み過ぎた為に酒から発した病の場合も桂枝湯を与えてはいけない。
湯を得るときは則ち嘔す。酒客は甘きを喜ばれる不るを以って故也。
桂枝湯を呑むと吐き気が起こる。(酒は陽を補い皮膚を緩める、酒客の病は陽気皮膚に満ちて生ずるものである。)
酒客の病になった者は甘い物を好まないからである。(甘い物が胃中に満ちると嘔を発する。)
(20)喘家には桂枝湯を作り、厚朴杏子を加ふるが佳し。
喘息を病んでいる者には桂枝湯に厚朴と杏仁を加えて作ってやるとよい。
(喘家は表虚し外気に感じやすく寒熱を発す。之は肌の不和と為す。
故に桂枝湯に杏仁{血を和らげる}、厚朴{気を降し喘を鎮める}を加える)
(21)凡そ桂枝湯を服して吐する者は、其の後必ず膿血を吐する也。
おおむね桂枝湯を服した為に吐を催した者は、その吐いた後に必ず膿や血を吐き出すものである。
(22)太陽病を汗を發したるに、遂に漏れて止ま不、
太陽病の者を発汗させたら一度発汗により出た汗が今度は薬が切れても止まらなくなってしまい、
其の人惡風し小便難く、四支微急し、以て屈伸し難き者は、桂枝加附子湯之を主どる。
その人悪風して小便の出が悪くなり(表の不解の上に更に陽虚が重なったから)、
手足が少し詰まる様になり屈伸することが難しい(悪風小便難四支微急等は皆陽虚から生じた証)者は、桂枝加附子湯を使う。
桂枝加附子湯の方 桂枝湯方内に於て附子壹枚炮じて皮を去り八片に破り加ふ。餘は前法に依る。
桂枝加附子湯の作り方 桂枝湯に附子一枚を炮じて皮を去り水に浸して蒸し乾燥させた物0.2g加える。
後は桂枝湯の法に従う。
(23)太陽病之を下したる後、脉促胸滿する者は、桂枝去芍藥湯之を主どる。
太陽の病を下した後で、脈が早く時に止まることが有り、胸中が一杯に詰まった者は、桂枝去芍薬湯を使う。
若し微に惡寒する者は、去芍藥方中に附子を加へたる湯之を主どる。
もし下した後で脈促胸満と同時に微しく悪寒を生じた者は、桂枝去芍薬湯の中に附子を加えた湯を使う。
(24)太陽病之を得て八九日、瘧状の如くに發熱惡寒し、熱多く寒少なく、
太陽の病になり八〜九日に、瘧病の様に一定の時間が来ると発熱して悪寒が始まり、そして熱の時間が長く
悪寒の時間が短く、
其の人嘔せ不、清便は自から可ならんと欲し、一日二三度發し、
その人嘔も無く大便も平常通りと変わらないと言い、発熱と悪寒の発作も日に2〜3回有り、
脉微緩なる者は愈えんと欲すると爲す也。
脈が微緩の者は、病がひとりでに治りかかっている。
脉微而惡寒する者は、此れ陰陽倶に虚す。更に汗を發し、更に下し、更に吐す可から不る也。
脈が微で悪寒する者は、これは陰陽が共に虚しているから、更に発汗したり、更に下したり、
更に吐かせたりしてはいけない。
面色に反って熱色有る者は、未だ解せんと欲せ不る也。
顔色に、反って熱がある様な紅い色を表している者は、未だ病が解けようとしていないのである。
其の汗出づるを得る能わ不るを以て、身必ず痒し。桂枝麻黄各半湯に宜し。
その場合、少しの汗も出ない為に、身体が必ず痒くなる。そういう時は桂枝麻黄各半湯を用いるがよい。
桂枝麻黄各半湯の方 桂枝一兩十六銖皮を去る 芍藥一兩 生薑一兩切る 甘艸一兩炙る 麻黄一兩節を去る
大棗四枚擘く 杏仁二十四箇湯に浸し皮尖及び兩仁のものを去る
桂枝麻黄各半湯の作り方 桂枝1.7g皮を去る 芍薬1g 生姜1g 甘艸1g炙る 麻黄1g 大棗1.3g
杏仁1g湯に浸し皮尖及び両仁のものを去る
右の七味を水五升を以って、先ず麻黄を煮て一二沸し上沫を去り、
諸藥を内れ、煮て一升八合を取り、滓を去り、六合を温服す。
水200tと共に先ず麻黄を煮て1〜2沸させてアクを取り、後の六味を入れて再び72tまで煮てカスを去り、
1日3回に分けて温め服す。
(25)太陽病、初め桂枝湯を服し反って煩し解せ不る者は、先ず風地風府を刺し、卻って桂枝湯を與ふれば則ち愈ゆ。
太陽病になり、初め桂枝湯を呑ませたところ病が軽くなるどころか反って病人が苦しみだし病が解けない者は、
先ず風池と風府に鍼を刺し、そして桂枝湯を与えれば治る。
(26)桂枝湯を服し大いに汗出で脉洪大の者は桂枝湯與ふること前法の如くす。
桂枝湯を服して大いに汗が出て、汗が出ると同時に脈も洪大になる者には、桂枝湯を与える前に
前法に従い先ず風池と風府に鍼を刺してやれ。
若し形瘧の如く日に再發する者は、汗出づれば必ず解す。
もし桂枝湯を服し、大いに汗が出てから病状が瘧病(悪寒と発熱が交互にくる病)の様に1日に2回ずつ発作を起こす者は、
汗が出れば必ずよくなる。
桂枝二麻黄一湯に宜し。
汗が出ればよくなるのに、その汗が出ない為に発作が続く者は、桂枝二麻黄一湯を用いるがよい。
桂枝二麻黄一湯の方 桂枝一兩十七銖皮を去る 芍藥一兩六銖 麻黄十六銖節を去る 生薑一兩六銖切る
杏仁十六箇皮尖を去る 甘艸一兩二銖炙る 大棗五枚擘く
桂枝二麻黄一湯の作り方 桂枝1.7g皮を去る 芍薬1.25g 麻黄0.67g節を去る 生姜切る 杏仁0.67g皮尖を去る
甘草1.08g炙る 大棗1.75g引き裂く
右の七味を水五升を以って、先ず麻黄を煮ること一二沸して上沫を去り、諸藥を内れ、煮て二升を取り、滓を去り、
一升を温服す。日に再服す。
水200tと共に先ず麻黄を煮て1〜2沸させてアクを取り、後の六味を入れて再び80tまで煮てカスを去り、
1日2回に分けて温め服す。
(27)桂枝湯を服し大いに汗出でたる後、大煩渇解せ不、脉洪大なる者は、白虎加人參湯之を主どる。
桂枝湯を服し沢山汗が出た後、酷く熱がり喉が渇いて一向によくならず、その上脈が洪大になる者は、
白虎加人参湯を使う。
白虎加人參湯の方 白虎湯方内に於て人參三兩を加ふ。餘は白虎湯の法に依る。
白虎加人参湯の作り方 白虎湯に人参3gを加える。後は白虎湯の作り方に従う。
(28)太陽病、發熱惡寒し熱多く寒少なきも脉微弱の者は此れ陽無き也。
太陽病で発熱悪寒し、熱の方が多く寒の方が少なくても、脈が微弱の者は陽が無いのである。
更に汗す可から不。桂枝二越婢一湯の方に宜し。
更に汗を出させてはいけない。そういう時には桂枝二越婢一湯を用いる。
桂枝二越婢一湯の方 桂枝十六銖 芍藥十六銖 甘艸十六銖 生薑一兩三銖 大棗四枚 麻黄十八銖節を去る
石膏二十四銖砕いて綿に裏む
桂枝二越婢一湯の作り方 桂枝0.75g 芍薬0.75g 甘草0.75g 生姜1.3g 大棗1.3g 麻黄0.75g節を去る
石膏1g砕いて綿に包む
右の七味をフ(口+父)咀し、五升の水を以って麻黄を煮て一二沸して、上沫を去り、諸藥を内れ、煮て二升を取り、滓を去り、
一升を温服す。
水200tと共に先ず麻黄を煮て1〜2沸させてアクを取り、後の六味を入れて再び80tまで煮てカスを去り、
1日2回に分けて温め服す。
本方は当に裁ちて越婢湯と桂枝湯を作り、合せて一升を飮むべきも、今合して一方桂枝二越婢一と爲す。
本方は当に越婢湯一剤と桂枝湯一剤の二剤を合わせて煎じて40t呑むと考えるべきだが、
越婢湯1/8量と桂枝湯1/4量とその両方入っている大棗を勘定し一剤を作り煮て、桂枝二越婢一湯とする方がよい。
(29)桂枝湯を服し、或いは之を下し、仍ほ頭項強通し、翕翕として發熱し、汗無く、心下滿して微痛し、
発熱悪寒を治そうと桂枝湯を服させたり便秘するからと下してみたが、未だ頭や項が強ばり痛み、
ポッポッと熱が出て、熱は出るが汗は出ず、胃が張って少し痛みを覚え、
小便不利する者は、桂枝湯より桂を去り、茯苓白朮を加へたる湯が之を主どる。
小便が出ない者は、桂枝湯から桂枝を取り除き茯苓と白朮を加えた煎薬(桂枝去桂加茯苓白朮湯)を使う。
(30)傷寒脉浮、自から汗出で、小便數く、心煩、微惡寒、脚攣急、反って桂枝湯を與へて、
傷寒で脈浮で、自然に汗が出て、小便の回数多く、不安感が有り、少し寒気がして、脚が引き攣り詰まる者に
反って桂枝湯を呑ませ、
其の表を攻めんと欲するは之誤り也。之を得て則ち厥し、咽中乾き、
その表を攻めようと汗をかかせるのは誤りである。汗をかかせた為に逆に手足が冷たくなり、
咽中がカラカラに乾き、
煩燥、吐逆する者には、甘艸乾薑湯を作り、之を與へて、以て其の陽を復す。
その乾きが酷くなりもだえ苦しみだし、しきりに戻しそうとする者には甘草乾姜湯を与え、
汗により失われた陽気を回復させてやれ。
若し厥愈え、足温かなる者には、更に芍藥甘艸湯を作り之を與ふれば、其の脚即ち伸ぶ。
もし甘草乾姜湯を服した効果で、手足の冷えが解け、脚が温まれば更に芍薬甘草湯を作り呑ませてやれば、
その脚は直ちに伸びる。
若し胃氣和せ不譫語する者は、少しく調胃承氣湯を與ふ。
もし胃気が調わず、うわごとを言い出せば、少しずつ調胃承気湯を与えてやれ。
若し重ねて汗を發し、復た焼鍼を加へたる者は、四逆湯之を主どる。
もし重ねて汗を出させたり、その上焼針までもした者には、四逆湯を使う。
甘艸乾薑湯の方 甘艸四兩炙る 乾薑二兩炮じる
甘草乾姜湯の作り方 甘草4g炙る 乾姜2g炮じる
右フ(口+父)咀し水三升を以って、煮て一升五合を取り、滓を去り、分温再服す。
右の二味を細かく刻み、水120tと共に煮て60tを取り、カスを去って一日2回に分けて温め服す。
芍藥甘艸湯の方 白芍藥四兩 甘艸四兩炙る
芍薬甘草湯の作り方 白芍薬4g 甘草4g炙る
右の二味をフ(口+父)咀し、水三升を以って煮て一升半を取り、滓を去り、分温、之を再服す。
右の二味を細かく刻み、水120tと共に煮て60tを取り、カスを去って1日2回に分けて再び温め服す。
調胃承氣湯の方 大黄四兩皮を去り清酒に浸す 甘艸二兩 芒硝半筋
調胃承気湯の作り方 大黄4g皮を去り清酒に浸す 甘草2g 芒硝8g
右の三味をフ(口+父)咀し、水三升を以って煮て一升を取り、滓を去り、芒硝を内れ更に火に上せ、
微に煮て沸さ令め、少少温服す。
右の三味を細かく刻み、水120tと共に煮て40tを取り、カスを去ってから芒硝を入れ、更に火にかけて
軽く煮て沸かし、溶かしながら少しずつ熱いうちに服用する。
四逆湯の方 甘艸二兩 乾薑一兩半 附子一枚生を用ひ皮を去り八片に破る
四逆湯の作り方 甘草2g 乾姜1.5g 附子0.2g生を用いて皮を去り縦に八片に刻む
右の三味をフ(口+父)咀し、水三升を以って煮て一升二合を取り、滓を去り、分温再服す。
強人は大附子一枚乾薑三兩も可し。
右の三味を細かく刻み、水120tと共に煮て48tを取り、カスを去り、1日2回に分けて再び温め服す。
丈夫な人は大附子一枚(0.2〜0.3g)乾姜3gでもよい。
(31)問ふて曰はく、證陽旦に象どりたれば、法を按じ之を治したるに増劇しく厥逆し、咽中乾き、兩經拘急而譫語す。
お伺いします。病証が桂枝湯の形作っているから法に従い桂枝湯を与えましたが、病状が悪化して手足が冷たくなり、
咽中が乾き、両脚の膝から下が曲がって伸びなくなり、うわごとを言い出しました。
師曰ひて、夜半に手足当に温まるべく。兩脚当に伸ぶべしと言われたるに、
その時師匠が言われたのは、午前零時になれば手足が当然温まり、拘急している両脚も直ぐに伸びるはずだと。
後に師の言われたるが如くになりぬ。何を以って此を知られたるや。
その後、午前零時になると、師匠が言われた通りになりました。どういう理由でそうなるのが分かるのですか。
答えて曰はく、寸口の脉浮而大、浮は則ち風と爲し、大は則ち虚と爲す。
師匠が答えられるには、それは寸口の脈が浮で大なら、その浮は風から来て、その大は虚した為に出来たのだ。
風は則ち微熱を生じ、虚は則ち両經攣る。
風は皮膚を傷つけ微熱を起こさせ、虚は両足を引き攣らせる。
病證桂枝を象りたるに因り附子を加へて其の間に參ぬ。桂を増して汗を出ださ令むれば、
病証が桂枝湯の証を表しているから桂枝湯を作り、また虚を示しているから附子を加えて汗をかかせたが、
附子は經を温むれども、亡陽するが故也。厥逆、咽中乾き、煩燥し、陽明内に結ぼれ、譫語、煩亂す。
附子は経を温めるが、陽気を失った為に手足が冷え、咽中が乾いてもだえ苦しみ、陽明の経に陽気が入り込み、
気持ちが乱れる。
更に甘艸乾薑湯を飮ましむれば、夜半に陽氣還り、両足当に熱すべし。
そういう者には、更に甘草乾姜湯を呑ませれば、夜中になって陽気が還ってくるから両脚は当然温まってくる。
脛尚ほ微しく拘急すれば重ねて芍藥甘艸湯を與ふ。
陽明の経は、尚も少し足が曲がり詰まっているから、重ねて芍薬甘草湯を与えてやれ。
爾かすれば乃ち脛伸ぶ。承気湯を以って微しく溏せしむれば、則ち其の譫語止む。
それにより脚は伸びる。承気湯を用いて少し下してやれば、そのうわごとを言うのも止む。
故に病の愈ゆ可きを知りぬ。
病の変化と治方を知っているから、病の治ることがわかっていたんだ。
《太陽病の脉證と併せて治法を辨ず・上の第五》
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