更新日 1992年(平成4年)8月9日〜2023年9月4日
※あくまでも、私なりの解釈なので参考までにしましょう。
※ 突然の解説変更ございます。
痙濕エツ(日+曷)病脉證治・第四
痙病と湿病とエツ(日+曷)病との三脈の脈と証と及び治方・第四
(1)傷寒の致す所の太陽と痙湿エツ(日+曷)の三種とは宜しく別に論ずるに應ずるも、
傷寒が原因で太陽経の病でも、痙病、湿病、エツ(日+曷)病の三種類の病は、別々に論ずるのが本当である。
傷寒與相似たるを爲すを以ての故に此に之を見はす。
傷寒と類似証候を表すので、そこでこの文章をここに示す。
(2)太陽病發熱汗無く反って惡寒する者を名づけて剛痙と曰ふ。
太陽病で発熱して汗は無く、熱が有るのに熱がらないでその反対に悪寒する者を、名づけて剛痙と言う。
(3)太陽病發熱汗出で惡寒せ不る者を名づけて柔痙と曰ふ。
太陽病で発熱して汗が出て、悪寒しない者を、名づけて柔痙と言う。
(4)太陽病發熱し脉沈而細なる者を名づけて痙と曰ふ。
太陽病で発熱して脈沈で細の者を、名づけて痙と言う。
(5)太陽病汗を發すること太多ければ、因って痙を致す。
太陽病を発汗させて大量の汗を出させると痙病を起こさせる。
(6)病みて熱、足寒、頸項強急、惡寒し、時に頭熱、面赤、目脉赤く、獨り頭面揺るぎ、
病んで身体が熱っぽく、足が冷たく、首とうなじが強張って自由が利かなくなり、悪寒し、
時々頭が熱くなって顔が赤くなり、眼中の白い所の血管が充血して、独りでに頭がグラグラと揺れ、
卒に口噤し背反張する者は痙病也。
筋肉がピクピク動き、舌が詰まり歯をくいしばり口がきけなくなり、後ろの方に弓なりに反りかえる者は、
これは痙病である。
(7)太陽病關節疼痛而煩し、脉沈而細なる者は、此を濕痺と名づく。
太陽病で節々が疼き痛んでもがき苦しみ、脈沈細の者は、これを濕痺と名付ける。
濕痺之候其の人小便利せ不大便反って快き。但だ當に其の小便を利すべし。
濕痺を診た時に伺うと、小便が出にくく、大便の方が出にくくなるはずなのに楽に出ると言う者は、
他の治療法は用いず但だ小便だけを出してやればいい。
(8)濕家之病爲る一身盡く疼み發熱し身色熏黄に似たるが如し。
湿病を患っている者が発病した場合、身体全部が疼み発熱し、皮膚の色が暗い黄色に似た色になる。
(9)濕家其の人、但だ頭汗出で、背強ばり、被覆を得て火に向はんと欲するを、
湿病を患っている者で、但だ頭だけから汗が出て、背中が強張り、重ね着をして火に当たりたがっている者を、
若し之を下すこと早ければ則ちエッ(口+歳+ノ)し、胸滿小便不利す。
もし病の早期にこれを下すと、エツ(口+歳+ノ)を生じて胸が満ち、小便が出なくなる。
舌上胎の如き者は、丹田に熱有り、胸中に寒有るを以て、渇して水を飮まんと欲すれども飮む能は不。則ち口燥煩する也。
舌の表面が苔を生じた者は、丹田(任脈の穴)には熱が有るが、胸中には寒がある為に咽が渇いて水を欲しがるが、
飲んでみると不味くて飲めない。口中だけが燥いで悶えるのである。
(10)濕家之を下し額上に汗出で微喘し小便利する者は死す。若しくは下利止ま不る者も亦た死す。
もしくは腹が下って止まらなくなった者も前者と同じで死ぬ。
(11)問ふて曰く、風濕相搏てば一身盡く疼痛す。法當に汗出でて解すべし。
お伺いします。風と湿とが相搏つと全身が全身が疼き痛むもので原則として当然汗が出て解ける。
天の陰雨値ひ止ま不醫云ふ、此れ汗を發すべしと。之を汗して病愈え不る者は何ぞ也。
天気の陰雨(霖雨と同じ長雨)に遭い身体の疼痛が止まらないと病家から相談を受けた医者が言うには、
「これは汗が出ないから治らないのだから人工的に汗を出させてやればいいではないか」と言われ
汗を出させてみたが一向に病が癒えないのはどういうことでしょうか。
答へて曰く、其の汗を發し汗大いに出づる者は、但だ風氣去り濕氣在り、是の故に愈え不る也。
師が答える。発汗させても汗を沢山かかせれば、但だ風気だけが去って湿気は残ると言う訳だから病は癒えないのである。
若し風濕を治せんとする者は、其の汗を發すること但だ微、微として汗出でんと欲するに似たる者は風濕倶に去る也。
もしも風湿を治そうとするなら、その汗の発し方を但だ微し汗ばむ程度にすれば、風も湿も共に去るのである。
(12)濕家病み、身上疼痛發熱し面黄而喘し、頭痛鼻塞而煩し、其の脉大きく自から能く飮食するは腹中和して病無く、
常に湿を病んでいる者が、身体疼痛し、顔色が黄色く、ゼイゼイと言い、頭痛し、鼻が塞いで苦しみ、
その脈が大きく、平気で物が食べれれば、腹中には病は無く、
病は頭中に寒濕在り。故に鼻塞す。藥を鼻中に内るれば則ち愈ゆ。
病は頭中に寒と湿とが在るのである。それが原因で鼻が塞がれたのだから、
寒湿の除ける薬を鼻中に入れてやれば治るのである。
(13)病者一身盡く疼み、發熱し日ポ(日+甫)所に劇しき者は此を風濕と名づく。
病人が、全身疼み、発熱して、午後の四時頃になると激しくなる者は、これを風湿と名付ける。
此の病、汗出づるに風に當りて傷られ、或は久しく冷を取りて傷られて致す所也。
この風湿の病は、汗が出ているのに風に当たった為に傷られたのである。或は長時間冷を受けた為に傷られたのである。
(14)太陽の中、熱の者は、エツ(日+曷)是れ也。其の人汗出で惡寒し身熱而渇する也。
太陽の経が熱に中てられた者はエツ(日+曷)病である。その人が熱に中てられた場合には汗が出て悪寒し身体が熱くなり、
咽が干し上がる様に乾くものである。
(15)太陽の中、エツ(日+曷)の者は、身熱し疼重而脉微弱、此れも亦た夏月冷水に傷られ、水皮中を行きて致す所也。
太陽の経がエツ(日+曷)病(日射病)に中てられた者は、身体が熱く、疼んで重く、脈は微弱をして、
この病気も前候の熱に中てられ夏期により冷水を飲んだ為に、
その飲んだ冷水が皮膚から外へ出られないで皮膚の中を巡って起こさせたものである。
(16)太陽の中、エツ(日+曷)の者は、發熱惡寒し身重く而疼痛。其の脉弦細コウ(草冠+孔)遲、
太陽の経が暑さに中てられた者は、発熱して、悪寒し、身体が重く、疼き痛む。その脈は弦細コウ(草冠+孔)遅で、
小便已れば灑灑然として毛聳ち手足逆冷す。
小便をし終ると寒気がする様にブルブルと震えが来て、鳥肌が立ち、手足が冷たくなる。
小しく労する有れば身即ち熱し、口開き前版の齒燥く。
少しでも体を疲れさすと体が直ぐに熱くなり、唇がだらしなく開き、前歯がカラカラに燥く。
若し汗を發すれば則ち惡寒甚しく、温鍼を加ふれば則ち發熱甚しく數之を下せば則ち淋甚し。
もしも汗をかかせると悪寒が酷くなり、発汗ではなく温めた鍼を刺せば発熱が酷くなり、
何回もこれを下すと小便の出が悪くなりタラタラ程度しか出なくなる。
《痙濕エツ(日+曷)病脉證治・第四》
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