更新日 1991年(平成3年)7月9日〜令和5年10月19日
※あくまでも、私なりの解釈なので参考までにしましょう。
※ 突然の解説変更ございます。
痙濕エツ(日+曷)病脉證治・第二
痙病と湿病とエツ(日+曷)病との三脈の脈と証と及び治方・第二
(1)太陽病發熱汗無く反って惡寒する者は、名づけて剛痙という。
太陽病で、發熱し、汗が出ず、熱が有るにもかかわらず熱がらず、その反対に悪寒し、
激しく痙攣する者を剛痙と言う。
(2)太陽病發熱汗出でて惡寒せ不、名づけて柔痙という。
太陽病で、発熱し、汗が出て、悪寒が無く、緩やかに痙攣する者を柔痙と言う。
(3)太陽病發熱脉沈にして細なる者名づけて痙という。治し難しと為す。
太陽病で、発熱し、脈は沈んで細く、痙攣する者を、名付けて痙と言う。
この様な虚している者は治し難い。
(4)太陽病汗を發すること太だ多ければ因って痙を致す。
太陽の病は、適度に汗を発すれば良くなる。しかし、汗を多く出し過ぎれば、
陽を滅ぼし、体液を失ってしまい、痙攣が起こる。
(5)夫れ風病之を下せば則ち痙す。復た汗を發すれば必ず拘急す。
風邪で外証が未だ有るにも拘わらず下剤で下せば痙攣する。
下しても癒えないからと汗を出させれば、必ず手足が引き攣り伸びなくなる。
(6)瘡家は身疼痛すると雖も汗を發す可から不。
麻疹や刺し傷等の外傷が有る者が、風邪の気など加わり、身体の疼痛が激しくなったとしても、
風邪を先に治そうとして、汗をかかせてはいけない。
汗出づれば則ち痙す。
この者は、外傷により出血し、或いは発疹により、陽が滅び、体液が失われているのだから、
これ以上、汗が出てしまえば痙攣を起こしてしまう。
(7)病者身熱し足寒え、頸項強ばり急り、惡寒し、時に頭熱し、面赤く、目赤く、獨り頭を揺り動かし、
病人の上半身が熱して足は冷え、首全体が強ばり詰まって自由が利かなくなり、悪寒し、時々頭が熱くなり、
顔や眼が赤くなり、ひとりでに頭が揺り動き、
卒に口噤して、背反張する者は、痙病也。
たちまち歯を食いしばり、弓なりに身体を反り返らせる者の病を痙病という。(破傷風等)
若しその汗を発する者は、寒と濕と相得て、その表uす虚し、即ち惡寒甚だしく、
もしもその様な者に、太陽病だと勘違いして表が解れないからといって汗を発したりすると、
表にある寒と湿とが相合し、その表が陽を失い益々虚し、その為に悪寒が激しくなり、
その汗を発し己れば、その脉蛇の如し。
充分その汗を発してしまった結果、この時の脈がS字に似た形をして堅く、
まるでグニュグニュとした動きをする蛇にでも触っているかの様な脈になる。
(8)暴に腹脹大なる者は、解せんと欲すると為す。
痙病を誤って発汗した後に蛇脈になった者が、
急にお腹が張り大きく膨れ上がってくるのは、
陽気が復活し病が解れる兆候である。
その脉故の如く、反って伏し弦なる者は、痙す。
ところが蛇脈を表し、その上、その脈がどんどん下の方に沈みはっきりしない様になり、
グッと押さえてみると弦の脈をしている者は、たとえお腹が張って大きく膨れ上がってきたとしても、
病は解れていかない。
内に引く陰気の力が強いからである。これもまた痙攣を引き起こす。
(9)夫れ痙の脉、之を按ずれば緊で弦の如く直上下行す。
痙攣をしている脈というのは、ピンピンと跳ね上がってきて堅く、弦脈に似て弛みが無く、
寸口から尺中まで1本の脈になっている。しかも打ち方にムラがあって上に来る時は指に強く当たり、
下に去る時は力無い脈である。
(10)痙病に灸の瘡有るは治し難し。
痙病というのは既に血気の不足なのだから、お灸をしてその跡が傷になっている者は治しにくい。
(11)太陽病其の證備り、身體強几几然として、脉反って沈遲此を痙と為す。括樓桂枝湯之を主どる。
太陽病証の頭項の強痛と悪寒を表し、更に身体が強ばり伸ばすことが出来ず胸を突き出し背中を返らせた様な姿勢になり
寒気もし、脈が反って沈んで遅い者は痙攣を起こす。それには括樓桂枝湯が中心となる。
括樓桂枝湯の方 括樓根二両 桂枝三両 芍薬三両 甘艸二両 生薑三両 大棗十二枚
括樓桂枝湯の作り方 括樓根 2g 桂枝3g 芍薬 3g 甘草 2g 生姜 3g 大棗4g
右六味水九升を以て煮て三升を取り分温三服微汗を取る。
上記の六味と水360ccを土瓶に入れて弱火で煮つめていき、120ccになったら熱い内に滓を取り去り、
1日3回に分けて温めて服用し、少し汗をかかせてやる。
汗出で不れば食頃に熱き粥を啜り發す。
もし汗が出ないようであれば、食事時の空腹時に
茶碗半分位の熱い重湯を啜らせて汗をかかせてやりなさい。
(12)太陽病汗無くして小便反って少く気上って胸を衝き口噤語るを得不。
剛痙を作さんと欲するは葛根湯之を主どる。
太陽病にかかり汗が出ず、汗をかかないのなら小便が沢山出てもよいはずなのに小便の量が少なく、
時々下から胸へ突き上げて来る様な感じがして、舌や顎が強ばり、口を開けてしゃべる事が出来ず、
今にも剛痙を病み始めそうな者には、葛根湯が中心となる。
葛根湯の方 葛根四両 麻黄三両 桂枝二両 芍薬二両 甘艸二両 生薑三両 大棗十二枚
葛根湯の作り方 葛根 4g 麻黄 3g 桂枝2g 芍薬 2g 甘草 2g 生姜 3g 大棗 4g
右七味フ(口+父)咀し水一斗を以て先づ麻黄葛根を煮て二升を減じ沫を去り諸薬を内れ煮て三升を取り滓を去り
一升を温服す。
上記の七味の内、まず麻黄と葛根を水400ccと共に土瓶に入れて弱火で煮つめ、
80cc程減らして灰汁を取り除き、
更に残りの生薬を入れて120ccになるまで煎じ、熱い内に滓を取り去り、1日3回に分けて温めて服用する。
覆って微似汗を取り、粥を啜るを須ひ不、餘は桂枝湯法の如く將息及禁忌す。
お粥を啜らせる必要はなく、厚着させたり布団を多めに掛けたりして、少し汗をかきやすくさせてやりなさい。
そして桂枝湯の条文で述べたように、ゆっくり休ませて、生物や冷たい物など飲食させてはいけない。
(13)痙の病為る、胸満、口噤し、臥して席に著か不、脚攣急し、必ずカイ(齒+介)齒す。
大承氣湯を與ふ可し。
痙病を患い、胸が一杯に詰まった感じで苦しく、口が強ばり口を開く事が出来ず、
体が反り返っているからジッと床の上に落ち着いておられず、
脚が引き攣り痛み、歯をギシギシと震えるように噛みしめる者には大承氣湯を与えなさい。
大承氣湯の方 大黄四両 厚朴半斤 枳實五枚 芒硝三合
大承氣湯の作り方 大黄4g酒で洗う 厚朴8g皮を去って炙る 枳実3.5g炙る 芒硝 4.2g
右四味水一斗を以て先づ二物を煮て五升を取り滓を去り大黄を内れて煮て二升を取り滓を去り芒硝を内れ
更に火に上せ微に一二沸し分温再服。下るを得れば服を止む。
右の四味の内、まず厚朴と枳実を水400ccと共に土瓶に入れ、弱火で200ccまで煮つめ滓を去り、
大黄を入れて再び80ccになるまで煎じた後、滓を取り去ってから芒硝を入れて火にかけて溶かす。
1日2回に分けて温めて服用する。1回服して下痢をすれば2回目は服用させない。
(14)太陽病關節疼痛而煩し、脉沈而細なる者、此を濕痺と名づく。
見た目はあたかも太陽病を患った様な病症をし、節々が痛んで悶え苦しみ、脈は沈で細の者を濕痺という。
濕痺之候は小便利せ不、大便反って快し但当に其の小便を利すべし。
濕痺に罹ると小便の出は悪いのに、大便の方は気持ちよく出る。
節々が痛んでもだえ苦んでいたとしても、ただ小便を出してやる事が肝心なのである。
(15)濕家の病為る一身盡く疼み、發熱し身の色熏黄の如く也。
湿病(水毒)というものは、体中が痛んで発熱し、皮膚の色がくすんだような黄色になる。
(16)濕家其の人但頭汗出で背強ばり被覆して火に向かうを得んと欲す。
湿病(水毒)に罹っている者の中で、ただ頭だけに汗をかき、背中が強ばり、厚着をして更に火にあたろうとする者に対して
若し之を下すこと早ければ則ちエッ(口+歳+ノ)し、或いは胸満、小便不利す。
もし黄疸熱鬱の証と誤診し、下剤で素早く下してしまえば、胃中が冷えてしゃっくりが出る。
しゃっくりが出ないとしても胸が一杯になって苦しくなり、小便が出なくなる等の病証を起こしてしまう。
舌上胎の如き者は、丹田に熱有り、胸上に寒有るを以て渇して而も飲を得んと欲し飲む能は不、則ち口燥煩する也。
その際、舌上に苔がうっすらと有り滑らかな者は、臍の下に熱が有り、胸上に寒が有る。
その熱と寒が有る為にのどが渇いて水を飲もうと口に入れるが全く受け付けず、
ただ口中だけが乾いてたまらなくなるのである。
(17)濕家之を下し額上に汗出で微喘、小便利する者は死し、若し下利止ま不る者も亦死す。
水毒の病に罹った者を誤って下剤で下してしまい、額から油汗が出て、
呼吸が乱れのどが力無くゼイゼイと言いだし、
小便が多く出る者は死ぬ。また下痢が止まらない者も死んでしまう。
(18)風濕相搏てば一身盡く疼痛す。法当に汗出でて解すべし。天陰り雨止ま不るに値ふ。
お伺いいたします。風気と湿気とが互いに打ち合えば身体中がうずき痛みだし、
そういう者は発汗してやれば治るはずなのに、発汗させると梅雨の雨のようにいつまでも汗がジトジトと出て汗が止まらず、
身体中の痛みが治らなくなってしまいました。
医は此は汗を発す可しと云う。之を汗して病愈え不る者は何ぞ也。
医者は発汗すれば治ると言ったのに、汗を発しても治らないのはどうしてですか。
蓋し其の汗を發し汗大いに出づる者は但風氣去りて濕氣在り。
是故に愈え不る也。
それは大いに汗を発し過ぎてしまい風気だけが解れ、湿気が残ったから治らないのである。
若し風濕を治せんと欲する者は其の汗を発すること但微微として汗出でんと欲するに似たる者風濕倶に去る也。
もしも風と湿、共に治したいのなら、その発汗を少し汗ばむ程度にすれば、
両方とも除かれてサッパリするはずだ。
(19)濕家病、身疼み、発熱、面黄くして、喘し、頭痛、鼻塞して煩し、
水毒に罹っている者で、身体が痛み、発熱し、黄疸が出て顔が黄色くなり、ゼイゼイと咳をし、
頭痛して鼻が詰まって苦しみ、
其の脉大、自から能く飲食し、腹中和して病無きは、病頭寒濕に中るに在り、故に鼻塞す。薬鼻中に内れば則ち愈ゆ。
その際、脈は大きく触れ、よく飲食できる者は、腹中には異常が無く、寒と湿の気が頭にある為に鼻が詰まるのだから、
薬を鼻の中に入れてやればそれで良くなる。
(20)濕家、身煩疼せば麻黄加朮湯を與ふ可し。其の汗を発するを宜しと為す。
愼んで火を以て之を攻む可から不。
水毒に罹った者で、身体が痛んでもがき苦しんでいれば、麻黄加朮湯を与えてその汗を発してやりなさい。
軽率にお灸を据えたり、温湿布したり、お風呂に入って温まったり等して之を攻めてはいけない。
麻黄加朮湯の方 麻黄三両 桂枝二両 甘艸二両 杏仁七十箇 白朮四両
麻黄加朮湯の作り方 麻黄 3g 桂枝 2g 甘草 2g 杏仁 3g 白朮4g
右五味水九升を以て先づ麻黄を煮て二升を減じ上沫を去り、諸薬を内れ煮て二升半を取り滓を去り八合を温服。
覆いて微似汗を取る。
上記の五味の内、まず麻黄を水360ccと共に土瓶に入れて弱火で煮つめ、80cc程減らして灰汁を取り除き、
更に残りの生薬を入れて100ccになるまで煎じ、熱い内に滓を取り去り、1日3回に分けて温めて服用する。
服用後は厚着させて少し汗を取ってやることが大切である。
(21)病人一身盡く疼み発熱日ポ(日+甫)所劇しき者は風濕と名づく。
病人の身体中が痛み、発熱し、夕方の4時頃近くになると発熱が激しくなる者は、風と湿が原因で起こっている。
これを風湿という。
此の病汗出ずるに風に当りて傷られ或いは久しく冷を取り傷られて致す所也。麻黄杏仁ヨク(草冠+意)苡甘艸湯を與ふ可し。
そして、この風湿の病は、汗が出ているのに風に中てられ、或いは長時間冷える場所にいたり、
或いは冷える仕事をした為に起こる病気である。そういう者には麻杏ヨク(草冠+意)甘湯を与えてやりなさい。
麻黄杏仁ヨク(草冠+意)苡甘艸湯の方 麻黄半両 甘艸一両 ヨク(草冠+意)苡仁半両 杏仁十箇
麻黄杏仁ヨク(草冠+意)苡甘艸湯の作り方 麻黄 5g 甘草 1g ヨク(草冠+意)苡仁 5g 杏仁 5g
右麻豆大に刻み毎服四銭匕水一盞半にて八分に煮て滓を去り温服す。微汗有れば風を避けよ
上記の四味を細かく刻んでよく混ぜ合わせ、1回4gと水60ccを土瓶に入れ、40ccになるまで煮つめ、
滓を取り去り温めて服用する。本方を服せば必ず汗が出るから衣服などで覆ってやり、風に中ててはいけない。
(22)風濕、脉浮、身重く、汗出で、惡風する者は、防已黄耆湯之を主どる。
風濕を病み、脈が浮き、身重く、汗が出て、風に中るとゾクゾクーッとする者は、
防已黄耆湯が中心となる。
防已黄耆湯の方 防已一両 甘艸半両 白朮七銭 黄耆一両一分 大棗一枚 生薑四片
防已黄耆湯の作り方 防已 4g 甘草 2g 白朮 3g 黄耆5g 大棗 4g 生姜 3g
右麻豆大に刻み毎抄五銭匕生姜四片大棗一枚を水盞半にして八分に煎じ滓を去り温服す。良久に再服す。
上記の六味を細かく刻み、水240ccと共に80ccまで煎じて滓を去り、1日4回に分けて温めて服用する。
少しの間長く服用する。
喘する者は麻黄半両を加ふ。胃中和せ不る者には芍薬三分を加ふ。気上衝する者には桂枝三分を加ふ。
下に陳く寒有る者は細辛三分を加ふ。
もしゼイゼイと咳をする者は麻黄 0.5gを加える。腹痛や便秘が起こる者は芍薬 3gを加える。
のぼせて頭痛や動悸がある者には桂枝 3gを加える。腰より下が平素から冷える者には細辛 3gを加える。
服後当に蟲の皮中を行くが如かるべし。腰從り下氷の如ければ、後被上に坐し叉一被を以て腰下を繞ひ温めて、
微しく汗を令むれば差ゆ。
服用後、当に虫が皮膚の中をはう様な感じがするはずだ。腰より下が冷えて氷の様な者は、
座布団などの上に座らせ、或いは服や毛布などを腰より下をまとい温めて、少し汗をかかせてやれば治る。
(23)傷寒八九日、風濕相搏ち、身體疼み煩し、自から轉側する能はず、嘔せ不、渇せ不、脉浮虚にしてシブ(シ+嗇)る者は、
桂枝附子湯之を主どる。
傷寒の病を病み始めて8〜9日経った時、風濕の病が互いに打ち合い、身体が痛んでもがき苦しみ、
自ら寝返りをうつ事が出来ず、吐くこともなく、のども渇かず、
脈が浮いて虚して渋っている者は桂枝附子湯が中心となる。
若し大便堅く小便自利する者は去桂加白朮湯之を主どる。
もし大便が堅く、小便がよく出る者には桂枝附子去桂加白朮湯が中心となる。
桂枝附子湯の方 桂枝四両 生薑三両 附子三枚 甘草 大棗十二枚
桂枝附子湯の作り方 桂枝 4g 生姜 3g 附子 0.6g 甘草 2g 大棗 4g
右の五味水六升を以て煮て二升を取り滓を去り分温三服す。
上記の五味を水240ccと共に 80ccになるまで煎じて滓を取り去り、1日3回に分けて温め服す。
白朮附子湯の方 白朮二両 附子一枚半 甘艸一両 生薑一両 大棗六枚
白朮附子湯(桂枝附子去桂加白朮湯)の作り方 白朮 2g 附子 0.3g〜0.4g 甘草 1g 生姜 1.5g 大棗 2g
右の五味水三升を以て煮て一升を取り滓を去り分温三服す。
上記の五味と水 120ccを土瓶に入れて40ccになるまで煎じ、熱い内に滓を去り、3回に分けて温め服す。
一服すれば身痺るる覺ゆ半日許りに再服す。三服都て盡すときは其の人冒状の如し。怪む勿れ。
1回分を服したら附子の作用で身体に痺れを感じるが、半日の内にもう1回服用し、3回分服し終わった時、
その人は頭が塞がった様にボーッとしてくるだろう。不安を感じるかもしれないが、疑わず信じなさい。
即ち是朮附竝に皮中を走り水気を逐い未だ除くを得ざるが故耳と。
これは、朮と附子が皮中を走り、水気を逐い、未だに除かれないからこの様な症状が出てくのである。
(24)風濕相搏ち骨節疼煩し、掣痛して屈伸するを得ず、之に近づけば則ち痛み劇しく、汗出で短氣し、小便利せ不、
惡風して衣を去るを欲せ不、或は身微に腫るる者は、甘艸附子湯を主どる。
風と濕とが互いに打ち合い、節々が痛んでもがき、引っ張られる様な痛みで屈伸する事も出来ず、
物音の響きにも激しく痛み、汗が出て、息切れがしたり、小便の出が悪くなったり、
少しでも外気に皮膚をさらすとゾーッゾーッと寒気がして服を脱ぎたがらず、
しかも時には骨節に腫れを生じたりする者は、甘草附子湯が中心となる。
甘艸附子湯の方 甘艸二両 附子二枚 白朮二両 桂枝四両
甘草附子湯の作り方 甘草 2g 附子 0.4g 白朮 2g 桂枝 4g
右の四味を水六升を以て煮て三升を取り滓を去り温服。一升日に三服す。
上記の四味と水240ccを土瓶に入れて120ccになるまで煎じ、滓を去り、温めて服用する。
1回量 40ccとし、1日3回服用する。
初め服して微に汗を得れば則ち解す。能く食し、汗出で復煩する者は五合を服す。
一升の多きを恐るる者は六七合を服するを妙と為す。
1回分服して少し汗が出れば病は治る。沢山食物を食べ、汗が出てきた後に再びもがき苦しみだした者は20ccを服しなさい。
1回40ccでは多過ぎではないかと恐れる者は、24〜28ccを服すのが適当だろう。
(25)太陽の中エツ(日+曷)は發熱惡寒し身重くして疼痛す。
太陽の経が暑病に中てられると、発熱して悪寒し、身体中が重怠く置き場のないくらい痛み、
其の脉は弦細コウ(草冠+孔)遲小便し己れば酒酒然として毛聳え手足逆冷す、
その時の脈は弦細コウ(草冠+孔)遅で、小便をした後、寒気がする様にゾーッとして鳥肌が立ち、手足の先から冷たくなり、
小なる勞有るも身即ち熱し、口前に開に板齒燥く。
ほんの少し労働をするだけで忽ち身体が熱くなり、その熱の為に口が開いて前歯がカラカラに乾燥する。
若し其の汗を發すれば則ち其の惡寒甚しく、温針を加ふれば則ち發熱甚しく、數ば之を下せば則ち淋甚し。
もし、発熱と悪寒が有るからといって、汗を発してしまえば、更に悪寒が激しくなり、
熱湯に浸けておいた温針を加えれば、発熱が酷くなり、度々下剤で下してやれば、小便がほんの少ししか出ず、
下腹が吊って痛み、臍の中へまで響く程酷くなる。
(26)太陽の中熱者はエツ(日+曷)是也。汗出で惡寒身熱して渇す。白虎加人参湯之を主どる。
太陽の経が熱に中てられた病を、エツ(日+曷)病という。その症状は、身体から汗が出て、
身体が湿るとゾーッゾーッと寒気がし、身体が熱してくると余計のどが渇く。
これには白虎加人参湯が中心となる。
白虎加人参湯の方 知母六両 石膏一斤 甘艸二両 粳米六合 人参三両
白虎加人参湯の作り方 知母 6g 石膏 16g 甘草 2g 粳米 9g 人参3g
右の五味を水一斗を以て煮て米熟すれば湯成る。滓を去り温服。一升日三服す。
上記の五味と水400ccを土瓶に入れてとろ火で半量になるまで煮つめ、
粳米がジュクジュクになれば出来上がりである。
すぐに滓を取り去って、1日3回に分けて1回量40ccずつ温めて服用する。
(27)太陽の中エツ(日+曷)身熱疼重して脉微弱なるは此夏の月冷水に傷られ水皮中に行を以て致す所也。
一物瓜蔕湯之を主どる。
太陽の経を暑病に中てられて、身体が熱し、身の置き場もないくらいに痛んでだるく、脈が微かで弱い者は、
これは、夏の時期に冷たい水を多飲した為に害され、飲んだ冷水が皮膚の外に出られなくなり、
その水が皮膚の中を巡ってしまったからである。それには一物瓜帯湯が中心となる。
一物瓜蔕湯の方 瓜蔕二七箇
一物瓜蔕湯の作り方 瓜蔕 0.6g
右刻みて水一升を以て煮て五合を取り滓を去り頓服す。
上記の一味を刻み、水 40ccと共に煮て 20ccになるまで煎じ、滓を去って頓服しなさい。
《痙濕エツ(日+曷)病脉證治・第二》
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