更新日 2010年(平成22年)6月18日〜2024年(令和6年)2月17日
※ 私なりの解釈なので、あくまでも参考までに。
※ 突然の解説変更ございます。
水気病の脉證併せて治 第十四
水気病の脈状と証候とそれに対する治方を詳しく述べたもの・第十四
(1)師の曰はく。病に風水有り、皮水有り、正水有り、石水有り、黄汗有り。
師匠が言われるには、水気病には風水・皮水・正水・石水・
黄汗の五つに分類される。
風水は其の脉自から浮、外證は骨節疼痛し、悪風す。
風水という病の脈は浮いている。外部の証候は、関節がうずき痛み悪風する。
皮水はその脉亦た浮、外證はフ(月+付)腫し之を按ずれば指を没し惡風せ不其の腹は鼓の如く渇せ不。
当に其の汗を發すべし。
皮水という病の脈も風水と同じく浮いている。
外部の証候は、皮膚の上部が膨れた状態で浮腫みその部位を指で押すと凹みが出来てなかなか元に戻らず、
悪風は無くお腹は鼓の様にピンと張り水分を欲しがらない。皮水や風水の病は、汗を出させてやりなさい。
正水は其の脉沈遅。外證は自から喘す。
正水という病の脈は沈んでいて遅い。外部の証候は胸辺りがゼェーゼェーする。
石水は其の脉自から沈。外證は腹満し、喘せ不。
石水という病の脈は沈んでいる。外部の証候はお腹が膨れ、ゼェーゼェーしない。
黄汗は、其の脉沈遅。身發熱し、胸満し、四肢頭面腫れ、久しく癒え不れば、必ず癰膿を致す。
黄汗という病の脈は沈んでいて遅い。身が発熱して胸がいっぱいに満ち、
腕や足や頭や顔が浮腫んで長時間治らなければ必ず膿を持った腫れ物が出来る。
(2)脉浮にして洪、浮は則ち風と為し、洪は則ち気と為す。
脈が浮いて洪の場合、その浮は外邪の風から起こり、洪は栄衛の気に依って起こる。
風気相搏ち、風強ければ則ち隱疹を為し、身體痒を為す。
その浮の風と洪の気が互いにぶつかり合い、風の方が強ければ、
目には見えない隠れた皮膚の異常が有り身体が痒くなる。
痒は泄風と為す。久しくして痂癩を為す。
この痒みを生じたのを泄風と言う。
泄風が長い時間経過すれば皮膚がくずれその上にカサブタが出来る皮膚病になる。
気強ければ則ち水を為し、以て俛仰し難し。
気の方が強ければ水気病となり、それによりかがんだり見上げたり上半身を前後に動かす事が出来なくなる。
風気相撃ち身體洪腫するは汗出ずれば乃ち愈ゆ。悪寒するは則ち虚す。此を風水と為す。
風と気が互いにぶつかり合い一つになった時、身体が酷く浮腫んだら汗が出れば良くなる。
汗をかいている間に悪風するのは虚しているからである。この汗を出す力の無いのを風水という。
惡風せ不る者は、小便利し、上焦に寒有り、其の口に涎多きは、此を黄汗と為す。
悪風しない者は、小便がよく出て胸に寒が有る為に涎が多のを黄汗という。
(3)寸口の脉沈滑の者、中に水気有り、面目腫大熱有るは、名付けて風水と日う。
寸口の脈が沈で滑の者で、体の中に水気が有りその為顔や目の周りが腫れ上がり体に熱があるのを風水と言う。
人の目裏の上を視るに、微に蠶の新に臥より起きたるが如き状を擁し、其の頸の脉動じ、時々ガイ(亥+欠)し、
病人の瞼の裏側をめくって見てみると、微かではあるが脱皮したての蚕が横たわっているかの様に腫れ、
その人の首の頸動脈部分を見るとドクドクと脈打つ様子がわかり、時々咳が出て、
其の手足の上を按ずるに、陷て起き不る者は、風水。
手足が腫れている部位の表面を指で押すと凹んだままでなかなか元に戻らない者もまた風水の病である。
(4)太陽病、脉浮にして緊なれば、法當に骨節疼痛すべし。反って疼ま不身體反って重くして酸く、
太陽病で脈が浮で緊の者は、原則として関節がうずき痛むものなのにその様な痛みが無く、
反って身体が重だるく痺れる様な感覚が有り、
其の人渇せ不るは汗出ずれば即ち愈ゆ。此を風水と為す。
惡寒する者は此を極虚と為す。汗を發するに之を得たり。
のどが渇かなければ汗が出れば良くなる。これを風水の病とする。
汗が出た後悪寒する者は酷く身体が弱っている。それは汗を発し過ぎたからである。
渇して惡寒せ不る者は此を皮水と為す。身腫れて冷え、状周痺の如く、
しかしのどが渇いて悪寒しない者は皮水の病である。
身体が腫れて冷えその病状は周痺病(知覚鈍麻あるいは知覚麻痺の類)の様で、
胸中塞がりて食する能わ不。反って聚痛暮躁眠るを得不るは、此を黄汗と為す。
胸の中が塞がって食べる事が出来ない。かえって胸中に物がつかえた様に痛み、
日暮れになると苦しみのあまり騒いで眠る事が出来ないのを、黄汗の病とする。
痛み骨節に在りガイ(亥+欠)して喘し渇せ不る者は、此を脾脹と為す。其の状腫たるが如し。
汗を發すれば即ち愈ゆ。
痛みが関節にあり咳が出て胸がゼェーゼェーと音を立てのどが渇かないのが脾脹の病である。
その状態は浮腫んで腫れているようである。汗を発してやれば良くなる。
然も諸病此者、渇して下痢し、小便數なる者は皆汗を發す可から不。
もしもこれらの病状で、のどが渇いて下痢をし小便の回数が多い者は、
体液が失われているのだから汗を発してはいけない。
(5)裏水の者は、一身面目黄腫し、其の脉沈、小便不利、故に水を病ましむ。
裏水の病にかかった者は、全身、顔、まぶたが黄色っぽく浮腫み、その人の脈は沈で小便の出が悪い。
小便が出にくい者は浮腫の病になる。
假如小便自利すれば、此に津液を亡う。故に渇せしむる也。越婢加朮湯之を主どる。
もし小便の出が良すぎる者は津液を失ってしまう。津液を失った者はのどが渇いて水を欲しがる。
この様な裏水の病には、越婢加朮湯が主となる。
(6)跌陽の脉當に伏すべし、今反って緊なれば本自から寒疝カ(ヤマイダレ+暇−日)有りて腹中痛む。
水気病の場合、跌陽の脈は当然隠れてわかりにくいはずなのに、それが反って緊になっていれば、
元々の病は水気病ではなく、腹中に寒があるからお腹にガスが溜まり痛むのである。
医反って之を下す。之を下せば即ち胸満短気す。
この場合温めなければならないのに、それを医者が反対に水を下してしまえば寒がひどくなり、
胸が一杯になり息切れがしだす。
(7)跌陽の脉當に伏すべし、今反って數すれば、本自から熱有り、
水気病の場合、跌陽の脈は当然隠れてわかりにくいはずなのに、
それが反って数になっていれば胃中に熱が盛んになっているという事である。
消穀して小便數かるべきに、今反って利せ不るは、此水を作さんと欲す。
それにより穀物の消化力が強くなり小便の回数が多くなるはずなのに反対に小便が出にくいのは、
その水が膀胱に行かず経脈の中に入り込んでいくからである。このような者は水病となる。
(8)寸口の脉浮にして遅、浮脉は則ち熱、遅脉は則ち潜、熱潜相搏つ。名づけて沈と日う。
寸口の脈が浮で遅の場合、その浮脈は熱によるものであり、
この時遅脈を表しているのは熱が潜んでいるという事になる。
その熱と潜とが互いにぶつかり合うと表に水が多くなり脈は沈んでいく。これを沈脈という。
跌陽の脉浮にして數、浮脉は即ち熱數脉は即ち止、熱止相搏つ。名づけて伏と日う。
跌陽の脈が浮で数の場合、浮脈は熱によるものであり、
この時数脈を現しているのは、熱が一箇所に止どまっているという事になる。
その熱と止とが互いにぶつかり合い一つになると更に表に水が集まり沈脈よりも深く沈んだ脈となる。
これを伏脈という。
沈伏相う搏つ、名づけて水と日う。沈は則ち絡脉虚し伏は則ち小便難し。
沈と伏とが互いにぶつかり合うのを名付けて水と言う。
沈というのは絡脈が虚しているという事であり、伏というのは小便が出にくくなるという事である。
虚難相搏ち、水皮膚に走り、即ち水を為す。
絡脈の虚と小便難が互いにぶつかり合い一つになると水が皮膚に集まり水腫となる。
(9)寸口の脉弦にして緊、弦は則ち衛気行か不、即ち惡寒す。水沾流せ不、腸間に走る。
寸口の脈が弦で緊の場合、弦脈は衛気が行き巡らずにいるという事であるから悪寒がする。
そして水の巡りが悪くなり外に水が流れず腸間に流れてしまう。
(10)少陰の脉緊にして沈、緊は則ち痛みを為し、沈は則ち水を為す。小便即ち難。
少陰の脈で足少陽腎経の太谿穴の脈が緊で沈の場合、
緊というのは寒が裏にある為に血行が悪く痛みを生じているからで、
沈脈というのは水の病を生じているからである。だからそれにより小便が出にくい。
(11)脉を諸の沈に得れば、當に責め、水に有るべし。
脈を診た時に様々な病気で沈脈になっていたなら水が腹中に溜まっているという事であり、
これを追求していきなさい。
身体腫れて重く、水病脉出ずる者は死す。
身体が腫れて重く、今まで沈脈であったのに浮脈に変わった者は死ぬ。
(12)夫れ水病目下に臥蠶有り、面目鮮澤、脉伏し、其の人消渇し、病水、
現在、水気病を患っている人の下瞼にまるで蚕が横たわっているかの様に腫れ顔や目の色は鮮明で、
脈は沈脈より深い所に在り、水分を大量に飲むがいくら飲んでものどの渇きがとれず浮腫になり、
腹大、小便不利、其の脉沈絶する者は、水有り、之を下す可し。
その為にお腹が大きく膨らみ小便が出ず、その人の脈が更に深く沈んで殆ど手に触れない位になっている者は、
お腹に水が溜まっているからである。この水をとってやるには下してやりなさい。
(13)問ふて曰はく。病、下痢の後、渇して水を飮み、小便不利し、腹滿し、因って腫るる者は、何ぞ也。
お伺いいたします。下痢をすれば後にのどが渇いて水を飲みたがり小便は出にくくお腹が張り、
浮腫む人がいますがなぜですか?
答えて曰はく、此、法當に水を病むべし。若し小便自利し、及び汗出ずる者は、自ら當に愈ゆべし。
師匠が言われるには、これは当然水気病を患っているからである。
もし小便が出やすくそして汗が出る者は、自然に治るのである。
(14)心水の者は、其の身重くして少氣し、臥するを得ず、煩して躁し、其の人陰腫る。
心臓に水が有る者は、体が重く深く息を吸う事が出来ず息は絶え絶えになり、
その苦しさのあまり横になって眠る事が出来ずただ座り込んでもだえ苦しみ、
陰嚢から外陰部にかけて浮腫む。
(15)肝水の者は、其の腹大きく、自から轉側する能はず。脇下腹痛し、時々津液微に生じ、小便続通ず。
肝臓に水が有る者は、お腹が大きく自分で寝返りを打つ事が出来ず、横腹の方が痛み、
時々生唾が少し出やすく、小便にムラは無く普通に出る。
(16)肺水の者は、其の身腫れ、小便難く、時々鴨溏す。
肺に水が有る者は、身体が浮腫み、小便は出にくく、時々鴨の糞の様な軟便が出る。
(17)脾水の者は、其の腹大きく、四肢重きを苦しみ、津液生ぜず、但だ少氣を苦しみ小便難し。
脾に水が有る者は、お腹が大きく、腕や足が重怠く、生唾は多く出ることもなく普通に出て、
ただ息を深く吸う事が出来ずに苦しみ、小便が思うように出ない。
(18)腎水の者は、其の腹大臍腫れ、腰痛み、溺するを得ず、陰下濕ること牛鼻上の汗の如く、
其の足逆冷、面反って痩す。
腎臓に水が有る者は、お腹は大きく臍は腫れ、腰が痛み小便をする事が出来ず、
陰部の下の方が牛の鼻が濡れている様に湿り、足先から酷く冷えてきて、顔だけが普段よりも痩せる。
(19)師の曰はく、諸の水有る者、腰以下腫れたるは、當に小便を利すべし。腰以下腫れたるは、
當に汗を発すべし。乃ち愈ゆ。
師匠が答える。色々な水気病があるがその中で腰から下が浮腫んでいる者は小便を出してやりなさい。
腰から上が浮腫んでいる者は汗をかかせてやりなさい。そうすれば浮腫がとれて治るから。
(20)師の曰はく、寸口の脉沈にして遅、沈は則ち水と為し、遅は則ち寒と為す。
師匠が言われるには、水気病を患っている者の寸口の脈が沈んでいるのは水のせいであり、
遅いのは寒があるからである。
寒水相搏ち、趺陽の脉伏し、水穀化せず、脾氣衰ふれば、則ち鶩溏し、胃氣衰ふれば、則ち身腫る。
この寒と水とが互いに打ち合い、趺陽の脈が深い場所にある場合、飲食物が消化していないという事である。
この場合、脾の気が衰えるとアヒルの糞の様なベチャベチャな便が出て、胃の気が衰えると身体が浮腫む。
少陽の脉革、少陰の脉細なれば、男子は則ち小便不利、婦人は則ち經水通ぜず。
そして足の少陽胆経の経穴である原穴丘墟の所が革脈(軽く診ると力有って脹りも有り元気が有るが、
更に力を入れると力無い脈)で足の少陰腎経の経穴であるユ(月+兪)穴太谿の所が細脈を現す
男子は性機能が衰え、婦人は月経が来なくなる。
経を血と為す。血利せ不るは、則ち水と為す。名づけて血分と日う。
この経というものは血であり出血しないのは水があるからである。
この様に血が関係して水気病になっている病名を血分(けつぶん)と言う。
(21)問ふて曰はく、病者水を苦しみ、面目身體四肢皆腫れ、小便利せ不るを之を脉し水を言わず、
お伺いいたします。病人が水の病に苦しんでいて、顔面から手足まで全身が浮腫んで小便が出ないのを、
師匠がこの病人の脈を診て、水気病を患っていると言わず、
反って胸痛み氣上って咽を衝き状炙肉の如く當に微ガイ(亥+欠)喘すべしと言う。
審らかに師の言の如し其の脉何に類するか。
「あなたは胸中が痛み、気が上ってのどを衝き炙った肉片の様な物がのどに有り、
その為に少しゼイゼイと咳が出るだろう」と言われて病人に聞いてみると明らかに師匠の言う通りである。
ならばその脈はどういう脈だったのですか?
師の曰はく、寸口の脉沈にして緊、沈を水と為し、緊を寒と為す。
師匠が言われるには、それは寸口の脈が沈で緊である。この沈脈は水を現し緊脈は寒を現している。
沈緊相搏ち結れて關元に在り、始時當に微なれば年盛にして覺え不。
その水と寒とが互いに打ち合い、それが一つになって、任脈に属する経穴の関元の場所に有るが、
始まりは本当に微かだから年齢が若い時は気が付かない。
陽衰ふるの後、榮衛相干し、陽損陰盛結寒微動し、腎氣上衝して喉咽塞噎し、脇下急痛す。
年を取り陽の気が衰えてきて、栄と衛とが互いに背き合い離ればなれになった為に栄は外に向かい、
衛は内に向かうと陽が負けて陰が勝って盛んになる。
そうなると結ばれていた関元に隠れていた寒と水が少しずつ動きだし、
その為に腎気が上衝してのどが塞がり咽せやすく脇下が引き攣り痛む。
医以て留飲と為し、而して大いに之を下し、氣撃去ら不、其の病除かず、後重て之を吐し、
それを医者が留飲の病だと思い大いに之を下した所、下した薬の急激な反応も去らず、
そして病が癒えないからといって重ねて之を吐かせると、
胃家虚煩咽燥水を飮んと欲し、小便不利、水穀化せ不、面目手足浮腫す。
胃の働きが衰えてのどが渇いて水を飲みたがり小便が出にくくなる。更に飲食が消化せず、
顔面や手足が浮腫む。
又、テイ(草冠+亭)レキ(草冠+歴)丸を与へ水を下せば、當時小差の如きも食飮度に過れば腫復た前の如く、
胸脇苦痛象奔豚の若く
そこでテイ(草冠+亭)レキ(草冠+歴)丸を与えて水を下してやったら当分の間は少し癒えた様だが、
飲食をすると又腫れが先に戻り、胸や脇が痛んで苦しみ、その象はまるで奔豚病の様である。
其の水揚溢すれば則ち浮ガイ(亥+欠)喘逆す。當に先ず攻撃の衝気を止ましめ乃ちガイ(亥+欠)するを治すべし。
その水が溢れ上がれば肺が水を得て咳が出だす。
当然先にそこを攻めて上衝してくる気を静めてやれば咳はしなくなる。
ガイ(亥+欠)止まば、其の喘は自から差ゆ。先ず新病を治し、病は當に後に在るべし。
咳が止めばゼイゼイと呼吸が苦しいのも自然になくなるものである。
この様な病は先に新しい病を治してやり、古い病はその後に治すべきである。
(22)風水、脉浮、身重、汗出で、惡風の者は、防已黄耆湯之を主どる。腹痛する者は芍薬を加ふ。
風水を患っていて脈が浮いて身体が重く汗が出て悪風する者は、防已黄耆湯が主となる。
お腹が痛む者には芍薬を加える。
防已黄耆湯の方 (方見濕病中)
防已黄耆湯の作り方 (方中の痙濕エツ(日+曷)病の第二十二項を見よ)
(23)風水、惡風、一身悉く腫れ、脉浮渇か不、続いて自汗出で、大熱無きは、越婢湯之を主どる。
風水を患っていて、悪風し、身体全体が腫れて、脈が浮き、のどは渇かず、
発汗剤で汗をかかせ、
その後、自然に汗が出だし、体内には熱が有るが、体表には熱感が無い時は、越婢湯の証である。
越婢湯の方 麻黄六両 石膏半斤 生薑三両 甘艸二両 大棗十五枚
越婢湯の作り方 麻黄6g 石膏8g 生薑3g 甘草2g 大棗5g
上記の五味を水六升を以て、先ず麻黄を煮て、上沫を去り、諸薬を内れ、煮て三升を取り、
分かちて温めて三服す。
先ず水240ccと共に麻黄を煮て、沸騰したら一旦火から下ろし、残りの生薬を加えて煮詰め、
120ccになったら滓を去り、一日三回に分けて温めて服用する。
惡風する者は、附子一枚を炮りて加ふ。風水は、朮四両を加ふ。
この時、悪風する者には炮附子一枚を加える。風水の者には朮4gを加える。(古今録験にて)
(24)皮水の病為る四肢腫れ、水氣皮膚の中に在り、四肢聶々と動く者は、防已茯苓湯之を主どる。
皮水の病というものは、手足が特に腫れて水気が皮膚の中に在るものである。
それで手足がピクピクと木の葉の様に動く者は、防已茯苓湯が主となる。
防已茯苓湯の方 防已三両 黄耆三両 桂枝三両 茯苓六両 甘艸二両
防已茯苓湯の作り方 防已3g 黄耆3g 桂枝3g 茯苓6g 甘草2g
右の五味を水六升を以て煮て二升を取り、分かちて温めて服す。
右の五味を水240tと共に80tになるまで煮詰めて滓を去り、三回に分けて温服する。
(25)裏水、越婢加朮湯之を主どる。甘草麻黄湯も亦之を主どる。
全身や顔面や瞼が黄色っぽくなって浮腫み、その脈は沈で、小便の出が悪く、
防已茯苓湯の証に似た所が有る者は、越婢加朮湯の証である。また甘草麻黄湯の証でもある。
甘草麻黄湯の方 甘艸二両 麻黄四両
甘草麻黄湯の作り方 甘草2g 麻黄4g
右の二味を水五升を以て、先ず麻黄を煮て上沫を去り、甘艸を内れ、煮て三升を取り、温めて一升を服す。
先ず水200tと共に麻黄を煮て、沸騰したら一旦火から下ろし、浮きあがった灰汁を取り去り、
その中に甘草を入れて再び火にかけ、120tまで煮詰める。一回40tを温服する。
覆いに重ねて汗を出さ不。汗せ不れば再び服す。風寒を慎む。
服や毛布で体を覆って汗を出させてやりなさい。汗が出れば二〜三時間後に40tを再び服す。
その時なるべく風や寒さを避けなさい。
(26)水の病為る其の脉沈小なるは、少陰に属し、浮なる者は風と為し、水無く虚脹する者は、氣水と為す。
水の病で、脈が沈んで小さいのは少陰病に属し、脈が浮いているのは風水病で、水は無く腫れているが、
脹れた部位を指で押すが直ぐに戻る者は気水病である。
其の汗を發すれば即ち已ゆ。脉沈なる者は、麻黄附子湯に宜しく、浮なる者は杏子湯に宜し。
気水の病というものは、汗を発してられば良くなるが、
気水病で脈沈の者は麻黄附子湯が良く、脈浮の者には杏子湯が良い。
麻黄附子湯の方 麻黄三両 甘艸三両 附子一枚炮
麻黄附子湯(麻黄附子甘草湯)の作り方 麻黄2g 甘草2g 炮附子0.2g
右の三味を水七升を以て、先ず麻黄を煮て上沫を去り、諸薬を内れ、煮て二升半を取り、八合を温服す。
日に三服す。
先ず水280tと共に麻黄を煮て、沸騰したら灰汁を取り去り、
後の二味を入れて120tになるまで煮詰めて滓を去り、三回に分けて温服する。
杏子湯の方 未見、是は恐らく麻黄杏仁甘草石膏湯
杏子湯の作り方 (これは恐らく麻杏甘石湯の事だろう)
麻黄4g 杏仁2g 甘草2g 石膏8g
先ず水280tと共に麻黄を煮て200tになったら一旦火から下ろして後の三味を入れ、
再び火にかけて80tになるまで煮詰めて滓を去り、二回に分けて温服する。
(27)厥して皮水の者は、蒲灰散之を主どる。
皮水の病で手足が厥冷する者は、蒲灰散が主となる。
(28)問ふて曰はく、黄汗之病為る身體腫れ、發熱汗出でて渇し、状風水の如く汗衣を沾し、
お伺いします、黄汗の病は身体が腫れ、発熱し、汗をかいてのどが渇き、
その様子がまるで風水病の様で、汗が衣服を潤し、
色正黄なること蘗汁の如く、脉自ずから沈、何に從りて之を得る也。
その汗の色が真っ黄色で丁度黄柏の煎汁の様である。風水病の脈は浮なのに、
この黄汗を発する場合は脈は沈んでいると言われますが、それはどうして黄汗の病になったのでしょう。
師の曰はく、汗出ずるに水中に入りて浴し、水汗孔從り入るを以て、之を得たる。
耆芍桂酒湯宜しく之を主どる。
師匠が言われるには、それは汗が出ているのに水の中に入って体を洗い、
その為に水が汗の孔から入り黄汗病になったのである。これには当に耆芍桂酒湯が主となる。
黄耆芍薬桂枝苦酒湯の方 黄耆五両 芍薬三両 桂枝三両
黄耆芍藥桂枝苦酒湯の作り方 黄耆5g 芍薬3g 桂枝3g
右の三味を苦酒一升水七升を以て、相和して、煮て三升を取り、温めて一升を服す。
右の三味を酢40tと水280tを混ざ合わせ120tになるまで煮詰めて一回40tずつ温服する。
當に心煩すべし。服すること六七日至れば乃ち解す。若し心煩止ま不る者は、苦酒阻むを以ての故也。
当然服し終わると胸中が悶えてくる。これは瞑眩作用である。
服して六〜七日経てば、その症状も無くなるはずである。
もし心煩六〜七日経っても解れない者は、苦酒が合わないのである。
その時は直ぐに服用を止めなさい。
(29)黄汗之病は、兩經自ずから冷ゆ。假令發熱すれば此は歴節に属す。
黄汗(湿)の病は、両方のスネがひとりでに冷えるものである。もしもこういう場合に発熱すれば、
これは歴節病に属すのである。
食し已り汗出で、又は身に常に暮れに盗汗出ずる者は、此は勞氣也。
食事が終わると汗が出たり、常に日暮れになると寝汗をかく者は、
これは労気(虚労)から来ているのである。
若し汗出で己り、反って發熱する者は、久々其の身必ず甲錯す。發熱止ま不る者は、惡瘡を生ず。
もし汗の出が止むと反って発熱する者は、それが長くなると必ず身の皮膚がガサガサになる。
そして発熱が止まらない者は必ず悪瘡(悪性の皮膚病)が出来る。
若し身重く汗出で己り輙ち輕き者は、久々必ず身シン(目+閏)し、即ち胸中痛み、
又は腰從り以上に必ず汗出で、下に汗無く、
もしも身体が重かったが、汗が出た後に急に軽くなる者は、長引くと必ず身がピクピクと動くようになり、
それで胸中が痛み又はその汗の出具合が、必ず腰から上にだけ汗が出て、腰から下には汗は無く、
腰カン(骨+寛)弛痛すること物有って、皮中に在る状の如く劇しき者は、食する能はず。
腰や尻が弛んだ様な痛みを感じで丁度何かが皮の中に入っている様でそれが劇しい者は、
物が食べられない程である。
身疼重煩燥し、小便不利するは、此を黄汗と為す。桂枝加黄耆湯之を主どる。
身が疼んで重く燥煩して小便が出にくい者は、これは黄汗の病である。
これには桂枝加黄耆湯が主となる。
桂枝加黄耆湯の方 桂枝三両 芍薬三両 甘艸三両 生薑三両 大棗十二枚 黄耆二両
桂枝加黄耆湯の作り方 桂枝3g 芍薬3g 甘草2g 生姜3g 大棗4g 黄耆2g
右の六味を水八升を以て、煮て三升を取り、一升を温服す。
右の六味を水320tと共に120tまで煮詰めて滓を去り、一回40tを温服する。
須臾に熱き稀粥一升餘りを飲み以て藥力を助く。温覆して微汗を取る。汗せ不れば更に服す。
服用後四〜五分経ってから熱い薄粥200t程啜らせて薬力を助けるのである。
風や寒に触れない様に服や毛布で体を覆い少し汗をかかせる。
汗が出ない時は、一時間位して更に温服する。
(30)師の曰はく、寸口の脉遲而ショク(シ+嗇)、遲は則ち寒と為し、ショク(シ+嗇)は血不足と為す。
師匠が言われるには、寸口の脈が遅で渋の遅は寒であり渋は血の巡りが悪くなっているからである。
趺陽の脉微而遲、微は則ち氣と為し、遲は則ち寒と為す。
趺陽の脈が微で遅の微は気であり、遅は寒である。
寒氣不足すれば則ち手足逆冷す。手足逆冷すれば則ち榮衛利せ不、榮衛利せ不れば則ち腹滿胸鳴相逐い、
氣膀胱に転じ榮衛倶に勞る。
寒と微の気が不足すれば手足が逆冷する。手足逆冷すれば栄衛が巡らなくなる。
栄衛が巡らなくなれば腹満と脇鳴とが互いに追いかけ合い、気が下腹(膀胱×)に転がり込んで栄衛が共に疲れる。
陽氣通ぜ不れば即ち身冷え、陰氣通ぜ不れば即ち骨疼む。
陽気(衛気)が通じなくなると身が冷え、陰気(栄気)が通じなくなると骨が潤おわず骨が疼む。
陽前に通ずれば則ち惡寒し、陰前に通ずれば則ちヒ(ヤマイダレ+田+Π)不仁す。
陽気(衛気)が先に進み陰気(栄気)が残ると悪寒し、
陰気(栄気)が先に進み陽気(衛気)が残ると麻痺(痺れ)が出る。
陰陽相得れば其の氣乃ち行き、大氣一転すれば其の氣乃ち散す。
この時、陰気と陽気が上手く交わらなければ、その気は行き、
今まで一カ所に固まっていた三焦の気の向きが変われば、その気は散る。
実すれば則ち失氣し、虚なれば則ち遺尿す。名づけて氣分と曰う。
もしもその気が充実している場合はオナラが出て、虚になった場合は小便を垂れ流す。
これを名付けて気分と言う。
(例えば、氷(陰気)は水の固まりで、氷は太陽(陽気)に中れば溶けていく)
(31)氣分心下堅く大きさ盤の如く、邊旋杯の如きは、水飮の作す所。桂枝去芍藥加麻辛附子場、之を主どる。
気分に属する病で、心下が堅くその堅くなっている大きさは皿位有り、
その縁は盃の周りの様に固い、これは水飲により出来たものである。
これには桂枝去芍薬加麻辛附子湯が主となる。
桂枝去芍藥加麻黄細辛附子湯の方 桂枝三両 生薑三両 甘艸二両 大棗十二枚 麻黄二両 細辛二両 附子一枚炮
桂枝去芍薬加麻黄細辛附子湯の作り方 桂枝3g 生姜3g 甘草2g 大棗4g 麻黄2g 細辛2g 炮附子0.2g
右の七味を水七升を以て、麻黄を煮て上沫を去り、諸藥を内れ、煮て二升を取り、分かち温めて三服す。
當に汗出ずべし。蟲の皮中を行くが如ければ即ち愈ゆ
先ず麻黄と水280tと共に煮て、沸騰したら後の六味を入れて80tまで煮詰めて滓を去り、
三回に分けて温服する。そうすると汗が出てくる。
服用後虫が皮膚の中を歩く様にムズムズして痒くなれば、それは薬の効果であり病は治る。
(32)心下堅く、大いに盤の如く邊旋杯の如きは、水飮の作す所。枳朮湯、之を主どる。
心下が堅く、その大きさは盤位で、その周りは固く、盃の縁を触る様であるが、
これは気分の病ではなく水飲(水毒)でなったのである。
これには枳朮湯が主となる。
枳朮湯の方 枳實七枚 白朮二両
枳朮湯の作り方 枳実4.9g 白朮2g
右の二味を、水五升を以て煮て三升を取り、分温三服す。腹中ヤワラカ(而+大)なれば即ち當に散ずべし。
右の二味を水200tと共に120tまで煮詰めて滓を去り、三回に分けて温服する。
腹中が柔らかくなれば、薬の効果が出て水が散ったのである。
(33)外臺防已黄耆湯、風水脉浮は表に在りと為す。
(附方)外台秘要方の防己黄耆湯は、風水を病んで脈が浮であれば病は表に在るのである。
其の人或いは頭汗出で、表に他病無く、病者但下重し、腰從り以上は和を為し、腰以下は當に腫れて陰に及び、
以て屈伸し難かるべきを治す。
ところがその人は頭から汗が出るだけで表には別に他の病は無く、病人は但だ下重し、
腰から上は普通の様だが、腰から下に腫れが来易く、もし腫れればその腫れは陰部にまで及んで、
その為に屈んだり伸ばしたりする事が出来ないのを治すのである。
《水気病の脉證併せて治・第十四》
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